定食の漬け物


とんかつ屋でトンカツ定食を食った。脂身が程よく乗っていて、うまかっ
た。付け合わせのキャベツはシャクッとしてみずみずしい。トンカツを
かじり、ご飯をほおばり、キャベツで口直しをして。時々シジミ汁をす
する。


ちょっと行儀悪いけど、がっつがつ食ったわけです。ご飯もおかわりし
ちゃったし、あ〜腹一杯、幸せじゃのうと、そっくり返ってお茶飲んで
ると、漬けもんが目に入ったんだよね。野沢菜のような深みのある緑色
のお漬け物。


「ん、こんなのあったんだ」と、一口ほおばってびっくり。野沢菜系な
らちょっと味が濃いんじゃないか、それって、このこってりトンカツの
口直しにはどうよ…、なんていっぱしの通ぶった上で食べてみて、見事
に裏切られたわけです。味付けあっさり、でも、うま味しっかり。さら
りと程よい水加減が、豚肉の脂分を流してくれるような(ここまで言う
と、誉め過ぎかもしんないけど)。


やるなぁと感心しました。


単純に漬け物がうまかったことにじゃないですよ。漬け物にまで手を抜
かない姿勢にです。とんかつ屋の主役といえば、もちろんトンカツです。
これはうまくて当たり前。逆にいえば、お客さんの方からすれば、評価
は当然シビアになる。もっともとんかつ屋を名乗る限り、ここで勝負を
避けてちゃ、はなから勝ち目はないわけです。


でも、とんかつ定食の漬けものに期待する人は、まずいない。よほどの
グルメとか料理評論家は別ですけど。期待してないところに百点満点に
近いものが出てくるとどうなるか。


初めから期待値60ぐらいのところで100点とったとしても、期待値
と実際の『うれしさギャップ(これ、私の造語です)』は40です。こ
このトンカツはうまかったけど、どうだろ、点数なら87点ぐらいかな。
一方、期待値はというと、そこそこ名前の知れたとんかつ屋さんですか
ら、私の期待値は70ぐらいはありました。ということは、うまいんだ
けど『うれしさギャップ』は17しかない。


これが漬け物になると、すごいですよ。なんせ期待値、ほぼゼロなんだ
もん。もう少しで箸を付けないままで店を出るところだったんだもん。
この低期待値に対して、実際は70ぐらいかなぁ、もしかして、この漬
け物だけを冷静に判断したら65ぐらいかもしんない。なんだけどね、
『うれしさギャップ』は実に65もあるわけです。びっくりするわけで
す。感動するといっても過言ではないでしょうね。


や、お見事。考えてるなぁと感心しました。メイン料理でお客様の期待
を超えるよう努力するのは当然なんだけど、細部の仕上げにも二工夫ぐ
らいしこってみることで、お客様をぐっと掴むことができる。


これ、自分の仕事に応用したら、どうなんだろう。漬け物にあたるのっ
て何だろう。とか、自分が関わっているあそこや、あそこの企業に応用
したら、どうなるんだ、なんて発想を広げてくれる昼飯になりました。





本日の稽古

  またまた膝蓋腱を痛めたようで、歩くのが苦痛状態です。
  ちょっと膝に負荷をかけるような鍛錬をすると、すぐに痛めるって
  のは、やっぱり年のせい?