クールビズは晴天の霹靂か


自分が10年後、何歳になっているかを言えない人はいない。では、質
問。10年後に満20歳を迎える人の数は予測できるでしょうか?


できますね。だって、今の10歳の人口がわかっているのだから、10
年後に成人を迎える人の数はほぼ100%読める。10年後に30歳に
なる人、50歳になる人ぐらいまでは、ほぼ確実に予想できる。


では10年後の円ードルレートはどうか。これはそう簡単に答えは出な
いだろう。ただ今のレートより円高に振れているか、それとも円安になっ
ていそうか。確率的には、読めないことはない。もちろん10年ぐらい
のタームで考えると突発的な事件が起こる可能性があるから、先の人口
問題よりは精度は落ちるけれど。


そこで本題。


ネクタイ市場が縮小してきているそうだ。これは何も今に始まったこと
ではなくて、ここ数年のトレンドらしい。2001年には中堅の製造卸
が破綻してもいる。その理由は週休二日制やカジュアルフライデーの普
及があると、今朝の日経MJに書かれていた。


さらに追い討ちをかけそうなのが「クールビズ」。何しろ政府が音頭を
取って、夏の間は「ノーネクタイ・ノー上着」でいこうってんだから、
こりゃ大変だ。ネクタイ業界にとっては、死活問題になる危険性だって
ある。


でもね、これって、まったく予想外のことだったのだろうか。もう26
年も前のことになるけど、第二次石油ショックを受けて「省エネルック
なるものが流行りかけたことがあった。夏は軽装で行こう、それで冷房
の温度を下げすぎないようにして、省エネしようって。


幸か不幸か、この省エネルックはめっちゃださかった。だからというわ
けでもないのだろうが、定着しなかった。今回の「クールビズ」も、こ
省エネルックと基本的な発想は同じだ。ただし、今回の背景にあるの
京都議定書の発効である。要するに1990年を基準として日本は二
酸化炭素の排出量を6%減らさないとならない。とはいいつつ、03年
度の排出量は90年度ベースで7%増ぐらいになっているから、あと7
年ぐらいの間で13%も減らさないとならない。ものすごい目標だ、こ
れは。生半可な対策をとっていたんじゃ絶対に達成できない。そして日
本としては「ごめんなさい、がんばったけど、やっぱりできませんでし
た」じゃ、たぶんすまされない。


そう考えてくると、今回の「クールビズ」、政府主導で乗り出したこと
も、マーケティング的には読めないことはなかったはずなのだ。教科書
的にいえば、いわゆるマクロ分析ってやつですね。もう少しだけ突っ込
んでおくなら、もともと温帯(もしくは亜熱帯に近い)日本の夏にネク
タイ、上着というスタイルそのものが理不尽だとの指摘は、本多勝一
持ち出すまでもなく、ずっと昔からあった。


だからネクタイ業界の賢明な企業なら、市場規模が縮むリスクは読めて
当然じゃないのかな。マーケットが縮小するサインは、探せばもっとあ
るよ。まず大前提となるネクタイを締める人口そのものが減ってきてる
(どうすんのかなぁ、団塊世代が引退した後は)、フリーターやニート
が増えてる、ベンチャー系の企業が増えていて、そこじゃ誰もネクタイ
なんかしてない(ってホリエモンなんかが、その典型かもね)。


こうした底流があって、いちばん鈍い官も動いたってことに過ぎない。
ネクタイ業界のことなんて調べたこともないからしらないけど、トップ
メーカーは当然、次の流れを読んで動いていたんじゃないのかな。もし
何も考えてなくて、今ごろになって「えらいこっちゃ、困ったな」とか
あわててるとしたら、ネクタイ業界、終わってますぜ。


と、言うぐあいに、一寸先は闇なんかじゃなくて実は結構読めたりする。
さらに言うなら、ほぼ確定した未来さえある。たとえば環境問題への対
応を前提とした規制強化があり得るだろう。ペットボトルのリサイクル
法、自動車のリサイクル法からエアコンに科せらたトップランナー方式
などですね、これは。あるいは少子高齢化が進むことによる影響だって
みえる。少し考えれば、どんなマーケットが縮んで、どこにシフトする
のかぐらいはわかるだろう。円安に振れた場合の影響がどう出るかも、
読めないことはない…。これはあんまり読みたくないけど。


と考えていけば、未来は決して読めないことはないのだ、と思う。もし
子どもを持っておられるなら、これからの子育て(ということは、子ど
もにどんな能力を身につけさせてあげるかを考えることだと私は思うの
だが)に、その読みを活かすべきだ。それが親のつとめじゃないか、な
んて偉そうにも思ったりするのでした。




本日の稽古:

  ひたすら膝のアイシング。とテーピングで固定して負担を減らす。