物事を考えるスパンの長さは


2007年、紳士服業界はどうなるか?


単純計算で考えれば、売上が2%ほど落ちるはずだ。とこれだけしか書
かなかったら「風が吹けば、桶屋が儲かる」的な説明でしかない。が、
ちょっと勘のいい人なら「あぁ、あの問題ね」とわかるはず。


以前にも書いたけど(http://d.hatena.ne.jp/atutake/20050630
2007年=団塊大量リタイヤのスタートである。
全人口の約7%が定年にさしかかっていく。いわゆる団塊のコアとなる
のは1947〜49の3年間に生まれた人たちだから、毎年その3分の
1がやめていく。スーツのボリュームユーザーが、普段着の暮らしには
いっていくのだから、当然スーツの売れ行きは落ちるだろう。


ただし、こんなのはほぼ確定した未来であり考えるまでもない。人口は
もっとも先の読めるテーマである。たとえば10年後の18歳人口(=
学校経営者にとっては重要)、10年後の20歳人口(=振り袖業者に
とって)、10年後の30歳人口(=住宅業界にとって)と、対象があ
る程度はっきりしている業界なら、10年後のターゲット人口を読むこ
とは簡単なことだ。


要するにマクロ環境分析は10年先ぐらいまでは、やろうと思えばでき
るだろうってこと。じゃ科学技術はどうなのか?


ここは難しいね。ネット関連の技術は3年先を読んでも仕方がないとい
う話がある。これについては、過去からのトレンドで、今後の変化状況
を読むしかない。ただし、その場合のポイントは、単に技術の進化だけ
に目を向けていてはダメだってこと。その技術を、ユーザーが使いこな
せるようになるまでに、どれぐらいの時間がかかるかを読む必要がある。


いわゆるユーザーリテラシーの問題だが、これについては大まかにイノ
ベーター・アーリーアダプター・フォロワーの3段階理論に従っておけ
ばいいだろう。


たとえばインターネットについてみれば、2000年前後にIT革命だ
と騒がれていたけど、結果的には大した変化は起こらなかった。旅行代
理店に象徴されるように中抜きが起こるって話ですね。ところが今、実
は深刻な中抜きが起こり始めている。ネット予約の問題だ。


もし読者の中に時々出張するビジネスマンがおられるなら、自分がホテ
ルや列車、飛行機をどうやって予約しているか考えてみてください。今
どき代理店に頼む人なんていないだろう。みんな、ネットで予約してい
るはずだ。旅行代理店関連では、飛行機のチケット予約について代理店
通しでの予約がこの2年で半分になっているらしい。


これはフォロワーがネット予約を使い出した証だ。もちろんイノベーター
は90年代後半から使っている。でも、フォロワーにとっては回線速度
の遅さ(=通信料が気になる)、検索サイトのユーザビリティの低さ
(=使い方が難しい)に加えて、自らのパソコン習熟度の低さ(=よく
キーボード押し間違えたりして)などが相まって「ネット予約より代理
店に頼んだ方が楽〜」状態だったわけ。


ところがブロードバンドが普及したおかげで、常時接続が当たり前にな
る→通信料、気にならない→サイト側での表示速度アップ&ユーザビリ
ティアップ→使ってみて楽しい&3年も使ってりゃいい加減パソコンの
使い方ぐらい慣れる…。こうした状況があってネット予約が爆発してい
る。


詳しく調べたことないけど、『楽天市場』や『ヤフオク』の売上カーブ
にも同じような兆候が出ているんじゃないだろうか。


ネット、通信関係では、次の波はテレビ電話機能だろう。もうすでに携
帯電話では始まっているが、これが2年後ぐらいには団塊の大量リタイ
ヤとリンクする。ネットで通信料を気にせず、クイックな表示が可能、
しかも「俺たち、ヒマ、持て余してんだよ。パソコン使うのだって慣れ
てんだぜ」とあいまったときに、どんな状況になるんだろう。


もう少し突っ込んでおけば、たぶん、その頃には小学生ならネットを使
いこなす状況になっているだろうなぁ。要するに団塊のお孫さん世代の
ことですね。そこにどんなビジネスチャンスがあるか。NTTがやりそ
うなことは見えるんじゃないかなぁ。


なんて近未来を考えるだけでも、いろんなことが見えてくる。こうした
ことをベースにビジネスモデルを考えないとダメですよね。


じゃ5年後=2010年、10年後=2015年ぐらいにはどうなって
いるのか。このテーマについては、また稿を改めて考えてみたい。










本日の稽古:

    

第三の波〈3〉 (中公コミックス)

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