ムーアの法則が支配する世界


マニュアルなんか、ぜ〜んぜん読まない。


なのに、こちらが知らない機能を使いこなしている。これは携帯電話の
話。そんな便利なことができるんかって使い方を懇切ていねいに教えて
もくれる。恐れ入るばかりである。小学校3年生のうちの子どもなんだ
が、見ていてものすごく不思議だ。


そもそもゲームキューブなるマシンを買ってやったときもそうだった。
配線こそこちらでしてやったものの、後は「あっち行ってて」状態。一
体、どうやって使うものかと見ていれば、とにかくいじり倒すのである。
あの複雑怪奇なコントローラーを、両手の指を駆使して。


そんなん、無茶したら壊れるんとちゃうか。なんて心配は、まったく無
用。今どきのマシンはうんとタフにできているのだろう。思い返せば今
から15年ぐらい前のことだろうか、初めてMacに触らせてもらった時
には、デザイナーさんが横に付きっきりで、そのキーを押しちゃダメと
か、マウスをそんな乱暴に動かしてはいけないとか。とにかく腫れ物に
触るようなあんばいだったのに。


実際に昔のマシンはよくフリズッた。クォークでページ物の原稿を書い
ていて、あとちょっとというところで爆弾マァーク! 保存するの忘れ
てて、それまでの10ページ分がすっ飛んだぁ〜。なんて、ことがよく
あった。


そこまでひどくないにせよ、少なくとも半日に一度は落ちた。そんな時
代を思えば隔世の感がある。と書いてみて「隔世」なんてたいそうな言
葉を、たかだか10年ぐらいの期間に使っていいものかと思ったとき、
実はこれこそが現代のスピード感なのかと気が付いた。


ムーアの法則をものすごく乱暴に読み解けば、パソコンは2年で倍の能
力を持つようになる。ということは10年も経っていれば、パソコンの
性能は少なくとも32倍になっている。この進化の早さになじめるかど
うかが、これからの世代論の切り口になるのかもしれない。


齢45の人間にとってみれば、パソコンに接したのがそもそも30歳ぐ
らいの頃だ。つまり30年間はノン・パソコンで生きてきている。その
蓄積の上にパソコン(当時はごく普通に100万とかする高額マシンで
ある)と接しているものだから、およそビビる。


ところがうちの子なんかは、生まれたときからパソコンがまわりにあっ
た世代である。もちろん赤ちゃんに大切なマシンを触らせはしなかった
が、オモチャとしてまずキーボードだけを買ってやり、次はオモチャの
パソコン(文字ぐらいは立派に打てるし、いろんなゲームがついている)
を与え、その次はモバイルギア、そして今は旧型ではあるがリブレット
を使っている。


さすがにWindows Meとかはバカだから、使いにくそうだし、たまにフ
リズッたりもしてるけど、そんなのぜんぜんへっちゃらって感じだ。う
ちの子は生まれたときからだけど、今の10代なんかももの心ついた頃
からコンピュータなんて自然に使いこなしている世代なんだろう。


こうした世代の適応力と、30代後半以上の世代のそれとは、もしかし
たらネアンデルタール人クロマニョン人の違いぐらいのギャップがあ
るのかもしれない。これは昔流行った新人類と旧人類の違いなんて比じゃ
ないのではないか。そんなことをふと思った。






本日の稽古: