シェービングは男を磨くか


ひげ剃り1回8400円。


カットや散髪のついでに、ではない。シェービングサロン『シガークラ
ブ グルーミング』での話。ここにいるのは理容師ではなく、マスター
シェーバー、つまりひげ剃り師だ(日経流通新聞8月7日)。


ひげ剃りだけにたっぷり1時間をかける。その工程は、微に入り細を穿
つ。一人につき蒸しタオルを8枚以上使い、赤外線消毒までしてくれる
そうだ。まさに至れり尽くせりのひげ剃りである。


顧客は40代、50代の経営者。半分以上が週に1、2回やってくるリ
ピーターだという。40代から50代といえば、まさにオヤジ世代であ
る。だが、この記事からは『LEON』的オヤジズム(造語ですね)がまっ
たく感じられない。


利用者のコメントとして「日常から離れ、ゆったりと時間を楽しめるの
が魅力」とある。これである。これが『LEON』なら、「もてるオヤジ
はシェービングが決めて」とでもなるのだろう。両者の決定的な違いが
おわかりになるだろうか。


私は、ここにダンディズムとオヤジズムの違いを感じる。ダンディズム
とは、あくまでも自己で完結している美学である。その姿を見て結果的
に他人が「あの人、カッコいいわね」となることはあるかもしれない。
しかし、その行動の動機は、すべて自分に向かう。基本的に群れない。


一方『LEON』流オヤジズムは、そのすべてが、人(というより女性、
それもどちらかといえば若い女性かな)を意識した行動である。単純に
いえば、何をやるにしてもそれはすべて「もてたい」がための行動であ
る。しかも同じようにもてたいと思っている他人がやっているのと同じ
ことを平気でやる。


どちらが良い・悪いは、人それぞれ。お好きなように。


ただ、ダンディズムとオヤジズムをこのように考えるなら、日本人がオ
ヤジズムに流れがちなのは仕方がないことなのかもしれない。ことの根
底にあるのは結果的に国民性、文化性にまで行き着く問題だろう。みん
なと同じことをしてれば安心みたいなね。


であれば『LEON』を考えたプランナーは、かなり日本文化の本質に詳し
い人なのかもしれない。また優れた企画のヒントは、トレンド分析系の
資料にではなく、案外加藤周一『日本文学史序説』なんかのほうにある
のかも。なんてことを思った。








昨日の稽古:富雄中学校体育館19:00〜20:30

 少年部:基本稽古、後ろ回し蹴りのミット稽古、移動稽古
 一般部:組み手稽古(1分×10セット)

  

日本文学史序説 上

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日本文学史序説 下

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