痛くない虫歯の治療法は?


恐いのである。どうしようもなく。


治療イスに座った瞬間から、緊張し始める。「リラックス、リラックス。
別に命まで取られるわけじゃないから」なんて自分に言い聞かせるんだ
けど、効果なし。まだ、何も始まっていないのに、体はどんどんこわばっ
ていく。


そして先生登場。


かと思えば、やってきたのはスタッフの女の子で、とりあえず口をすす
いで待っているようにといわれる。イスの左手にあるコップを手に取る。
このコップが金属製で、すでに冷たい感満杯である。そんな些細なこと
が気になること自体が、ビビっている証拠だ。


いよいよ先生登場。口を大きく開けて、と指示されるが、これがなかな
かどうして。先生が思うほどには開かない。自分の意識の中でのせめぎ
合いがあるからだ。


すなわち、痛む歯を早く治してもらうためには、削ってもらわなければ
ならない。アグリーである。が、しかし。削られると、とりあえず、い
まこの瞬間、痛い。これも素直な気持ちだ。治して欲しい。でも、痛い
のはイヤだ。治すためには削る。削られるのは恐い。治す、削る、痛い、
恐いが頭の中でぐるぐるまわっている。


このジレンマが、口のまわりの筋肉を不随意筋に変えてしまうのだ。


何とか、このステップを乗りきり、口を開ける。もちろん、先生だって
すぐに削ったりはしない。鏡みたいなのでいろいろ調べて、先っちょが
ハリのようになっているのでちょっちょっと突っついたりする。突くと
きの先生の表情が、ニヤッとしているように見えるのは、たぶん気のせ
いなんだろう。でも、突かれるたびに、ビクンと反応してしまう。太も
もの表側の筋肉に力が入る。足、つりそうになる。


もう全身硬直。握りしめた拳の爪が、手のひらに食い込んでいる。「ば
れてるやろなあ、めっちゃ怖がってんの。ええ年こいたオッサンが、た
かが虫歯治療の、それもまだ削ってへんのに、ガチガチに体緊張させと
るわって、笑とるんやろなあ。くっそー、むかつく」と勝手に、こちら
の被害妄想、増幅しまくりである。


「すこし虫歯になってますね。削りましょうか」と先生。うなずくしか
ない私。「麻酔かけますか」と尋ねられ、思いっきり首を縦に振る。麻
酔が体に良くないことは重々承知の上。目先の痛さを消してくれるなら、
この際、全身麻酔でもかまわんぐらいだ。


不思議なことに麻酔注射は恐くない。そして、いざ注射されてしまうと、
なんてことはない。無事、治療終了、チャンチャンてなもんである。


ちょっと歯が痛み始めていて、また、この恐怖の儀式に耐えなければと
思うと、すごく憂鬱だ。痛くない虫歯治療があるらしいが、仙台まで行
かないとダメらしいし。困ったもんである。仙台出張できるような仕事、
入ってこないかしらん。





本日の稽古:

 40分ジョグ