新規ターゲットの捉え方


イカーはタクシーの競合。


これまでの常識というか、これを疑ってみるタクシー会社なんてなかっ
たのではないだろうか。確かにマイカーに乗っている人が、同時にタク
シーに乗ることなんてあり得ない。というか、一人の人が同時に違う乗
り物に乗るのは物理的に不可能である。


でも、本当にそうか。たとえば電車とマイカーなら、パーク&ライド
んてやり方がある。駅まで車できて、そっから先は電車。であるならパ
ーク&タクシーもいけるんじゃないかと考えたのが京都相互タクシー。
日経MJ8月29日号)


同社は考えた。観光シーズンの京都にマイカーで来ている人は、不満、
不平、不安でいっぱいなんじゃないかと。観光客がどっと押し寄せる人
気スポットへ行く道は、たいてい絶望的に混んでいる。しかもようやく
たどり着いたはいいが、駐車場はどこも満杯。車を止めるのにも一苦労
だ。さらに、京都の街中なんて道が狭い上に一方通行だらけで運転しに
くいことこの上ない。


『不』のつくところに、新しいビジネスのチャンスあり、これはマーケ
ティングの鉄則である。しかもマイカーに乗っている人なんて、従来の
タクシー会社にとっては、完全に想定外のターゲット層だ。ということ
は、まったく手つかずのマーケットになる可能性がある。


京都まではマイカーで来てもらい、タクシー会社の駐車場に車をいれて
もらう。そこから先、観光地巡りは貸し切りタクシーでどうぞと。プロ
のドライバーなら、観光客の知らない裏道を熟知しているし、万一渋滞
にぶつかっても自分が運転しているんじゃないから、うんと楽。駐車場
が空いてなくても、全然へっちゃらである。


サービスの中身は、マイカー観光客の『不』をほぼ完全に解消する。こ
のサービスに価値を感じてもらえるかどうかは対価の設定次第というわ
けだ。これはマイカー族の中でも、どの層をターゲティングするかによ
って変わってくるだろう。


とりあえず同社は通常の貸し切りと同じ料金設定でいく。ここはいろん
なパターン(&付加サービス)があるんだろうな。あるいは、ホテルや
レストランと組むこともありだろう。


それにしても京都のタクシー業界の競争はし烈なようだ。京都相互タク
シーの年間売上高が16億7000万円。営業台数が300台だから、
1台あたりの売上げは、年間550万しかない。単純に一日あたりにす
れば、わずかに1万5000円にしかならない。一日貸し切りの料金は
2万7000円(6時間)に設定されるらしいが、コスト的に合うんだ
ろうか? と余計な心配もしたりして。


個人的に興味があるのは、このサービスがどんなコピーでアピールされ
るのかってこと。今のところ、ホームページを見る限りでは、このサー
ビスの顧客価値は伝わってこない。残念だと思う。
http://www.kyoto-sogo.co.jp/pt/index.html




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