「みんなの滋賀新聞」はなぜ休刊するのか


発行日数、わずか140日あまり。


今年4月29日に創刊された「みんなの滋賀新聞」が、9月17日付け
で休刊されることになった。本籍地・滋賀の人間なのに、実はこの地域
紙の存在を知らなかった。


さらに知らなかったことをあげると、滋賀県はこれまで全国で唯一、地
元の日刊紙がなかったらしい。ということは、46都道府県にはそれぞ
れ日刊紙があるということか。ほんとかね、和歌山とか三重にもあるん
だろうか。


つまりマーケティング的には、地元・日刊紙という穴があったことにな
る。もくろみとしては、十分に採算が取れるとふんでのスタートだった
はずだ。


ちなみに滋賀県の世帯総数は約49万世帯である。そのうちの10%か
ら読んでもらえれば、それで5万部。月間購読料が1995円だから、
仮に5万の読者を確保できれば、それで売上は約1億円。


加えて広告収入もある。同新聞のサイトを見れば基本な広告料金は段1
0万のようだ。まあ実態は、おそらく段5万ぐらいまでディスカウント
しないと売れないだろうが、それでも16ページの紙面のうち、2ペー
ジは広告で埋めるとして、その売上は150万/日。ということは月額
にして4500万。


単純試算では売上が月1億5000万となる。一方、社員が53人おり、
そのうちの30人ぐらいは経験者だったらしい。となると仮に30万ぐ
らいの給料だったとしても、人件費としては60万ぐらいを見る必要が
あるから、人件費総額はざっと3000万ぐらいか。


他に大きいのは紙代に印刷費と配布コスト。現状が7000部で毎月数
千万の赤字だったらしい。仮に7000部なら購読収入は1400万ぐ
らい。広告収入をあわせて推定売上は6000万。これで数千万の赤字
ということは、人件費が3000万だったとして、その他のコストが1
億ぐらいだったことになる。


紙代、印刷費、配送コストはたぶん発行部数にリンクするから、もし目
標通りに5万部発行できていたとしても、採算はとんとんぐらいだった
のかもしれない。


だとすると、ここに問題があったのではないだろうか。つまり創刊時に
発行部数の目標を5万部に設定したことに。「経費削減を目指すときは
3%を目標にしちゃダメだ。3割削減を目指しなさい」とかつて松下幸
之助さんはいった。


その意味は3%削減を考えると、どうしても現状の延長線上でしかモノ
を考えられない。そこからは革新的なアイデアは出てこない。ところが
3割カットとなると、根底から考え方を変える必要がある。物事をまっ
たく違う視点から見ることができる。


これである。


つまり「みんなの滋賀新聞」は、採算ラインから考えて5万部発行を目
指した。だからといってクォリティが低いというつもりはないが、仮に
最初から30万部発行を目指していれば、また違った次元のクォリティ
になったのではないだろうか。


もちろん全国紙がシェアをキープするために、さまざまな対抗策を打っ
てくることは前提条件として考えて、それでも全国紙にない情報提供を
する。通信社からの記事配信等もとからアテにしない。そんなのいらな
い。


それでもシェア60%確保。そのためには、と、ここからスタートして
いれば違った結果になったのではないだろうか。





昨日の稽古: