日本語で大丈夫か


最低1000万人


この会員数がネットでの無料サービスから収益をあげるための基準にな
っているらしい(日経MJ11月30日)。


つまり、こういうことだ。ネット上のサービスは今後、そのほとんどが
無料化していく。その典型がGoogleだと。では、そうした無料サービス
は、どこからどんな対価を得ているのか。言い換えれば、誰に対してど
んな価値を提供しているのか。


情報を発信したい企業、人に対して人がたくさん集まる場、つまりメデ
ィアを提供しているのである。これを一応「広告」と呼ぶ。ただし、こ
の広告の実態はどちらかといえば看板的な要素が強いと思う。要は自社
のサイトへ来てもらうためのキッカケのようなものだ。


メディアを提供する側からすれば、自社のサイトへのアクセスユーザー
が多ければ多いほどいい。そこで出てきたのが、1000万人スタンダ
ード説である。人を集めるために、次から次へと新しいサービスを提供
している。


しかし1000万人となると、かなり高いハードルだ。日本のPCでのネ
ット人口がどれぐらいなのか。財団法人インターネット協会の調査によ
れば、2005年2月時点で約7000万人。1000万人ということ
は、その7分の1を引っ張ってこなければならない。
http://www.iajapan.org/iwp/


世帯浸透率は82.8%。そろそろ限界値に近づいている。これに対し
て中国のネットユーザーは今年の6月に1億人を超えたようだ。
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?
y=2005&d=0726&f=column_0726_001.shtml
その伸び率は前年対比30%ぐらいだという。この伸び率がいつまで続
くのかはわからないが、仮にあと3年ぐらい続いたとしたら、そのとき
には2億を超える。しかも伸びシロはまだまだいくらでもある。


ちなみに2003年末のデータではアメリカのネット人口は1億657
5万人。中国のネットユーザーがアメリカを追い越す日がくるのも、そ
う遠い将来ではないだろう。何がいいたいのかといえば、ネット人口の
ボリュームゾーンが中国語圏の人と英語圏の人になるということだ。


そのとき、何が起こるのか。ネット上のデファクト言語として中国語が
大きく台頭してくるのではないだろうか。先の統計に含まれるのは中国
本土のユーザーだけだ。海外に在住する中国人の数を合わせるなら、ネ
ット上の中国語人口は少なく見積もっても3億にはなるだろう。巨大勢
力である。


もちろん英語ユーザーも同数か、それ以上にいる。


だとすると少なくともネット上での日本語は、圧倒的に不利になってい
く。たとえばGoogleをみればわかるように、英語では先端的なサービス
実験がいくつも行われている。ところが、それらが日本語化されるのは、
だいぶ後になってからだ。
http://labs.google.com/


中国語版Googleがどうなっているのか知らないけれど、もしかしたら今
後は、英語で開発された新しいツールはまず中国語にローカライズされ
て、日本語化はその後、なんてことにもなりかねない。長年のテーマと
なっている漢字の表示問題にしても、中国がイニシアティブを取る可能
性もある。まさか日本語で使っている漢字までが簡体字になるなんてこ
とは考えられないけれどね。


だから、どうなんだって話なんだけれど、実のところどうなるんだろう。
Googleマップのように広告の発信者・受信者が極めて限定される局所的
なネットの使い方が広まっていくのなら、言葉の壁などまったく気にす
る必要はない。仮にGoogleが世界的なデファクトになるとしても、各種
サービスの日本語化が若干遅れるだけの話だ。


しかし、技術(特にネット系)の最先端で勝負する企業にとっては、日
本語がないがしろにされるってことは、かなりつらい状況になるのでは
ないか。少なくとも英語を理解できる技術者でないと、これから先、生
き残っていくことは難しくなるだろう。


ましてや日本発のネット系技術がデファクトを取る、なんてことも到底
考えられない。ネットがこれから先の世界的なインフラとなっていくこ
とを前提とするなら、日本がネット系技術で明らかな後進国になること
は問題だと思う。




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