テレビ脳の背景にあるもの


三人に一人が毎日3時間以上


三歳半の子どもがテレビを見ているそうだ(日経新聞12月7日)。こ
れは相当にマズい状況だと思う。直接的な影響としてテレビ脳になる危
険性があり、その背景となる状況も踏まえて考えれば、将来的にはかな
りヤバい状況へとつながっていく恐れがある。


まずテレビ脳の問題。脳の発達段階でテレビやビデオを見すぎると、し
ゃべれるようになる時期が遅れたり集団活動になじめなくなるという。
これはテレビ脳といわれていて、社団法人日本小児科医会が取った調査
データも出ているようだ。テレビ脳に犯されている子どもはすでにいる
ようで、それが学級崩壊の一因にもつながっているはずだ。
http://dic.yahoo.co.jp/tribute/2004/07/08/2.html


しかしもっと恐ろしいのは、テレビを見続けることによる蓄積効果だと
思う。こればかりはたとえば今後10年ぐらい経ってみないと、どんな
ダメージがでるのかわからない。が、明らかに何らかの影響はあるはず
だ。あるいは、もしかしたら今の30歳以下の若者から中学生ぐらいの
子どもが起こす異常な行動は、このテレビ視聴蓄積効果の影響である可
能性はあるだろう。


ではテレビを見続けると何がマズいのか。これには三つの悪影響が考え
られる。


まずテレビを見ることで、他のことができなくなる。本来なら子どもは、
外で体を動かして遊ぶことでいろんな学びを得ていく。体の動かし方か
ら始まって、他の子どもと一緒に遊ぶことを通じてもっとも基本的なコ
ミュニケーション能力も身につけていく。ところがテレビに時間を取ら
れると、こうした能力形成をする時間が減る。


さらには幼少期からテレビを見るという受動的な情報摂取態度がもたら
す影響がある。情報(あるいは刺激といってもいいかもしれない)は、
自分から求めて得るものではなく、目の前のモニターが与えてくれるも
のと考えるようになる可能性がある。


単純に考えれば、こうした環境になじんだ子どもは本を読むのが苦手に
なるだろう。だって、自分から本を読むなんてとてつもなく面倒くさい
ことに違いないから。


もう一つ、テレビが子どもにつぎ込む情報による影響もある。どんな影
響があるかは、見る番組の内容に左右されるだろう。まさか3歳半の子
どもがニュースを見たり、大人のドラマを見たりはしないだろうけれど
(もし、そんな子どもがいれば、それはそれですごいことかもしれない
けれど)。


たとえば子ども向けのアクション番組やアニメなどを見続けると、それ
はどんな影響を与えるのだろうか。ストーリー的には勧善懲悪的で他愛
もない話が多いのだろうけれど、その描写内容が気になる。特に男の子
向けの番組では、いとも簡単に人を倒すシーンがたくさん出てくる。こ
れは何らかの刷り込みにつながらないだろうか。


しかし、もっともっと深刻な問題がその背景にはある。


何より考えるべきは、毎日3時間以上テレビを見るような子どもの家庭
環境だろう。なぜ、わずか三歳の子どもが、そんな長時間テレビを見て
いるのか。これは、その子どもの親は何をしているのか、その子どもの
家はどんな暮らしぶりをしているのかという問いと表裏一体だ。


日本の社会ではいま、二極化が固定段階に入りつつある。少数の強者と
多数の弱者である。強者(富めるものといってもいいかもしれない)は
強者同士で婚姻関係を結ぶために、弱者も弱者同士でしか結婚できない。
ここで階層が固定される。


子育てにゆったりと時間を(お金も)かけることができない家庭と、子
どもに時間もお金もしっかりとかけられる家庭に社会が別れつつあると
いう話だ。こうした流れは時間をかけて固定化されていく。というか、
すでに固定されつつあり、だから「将来、自分の生活がよくなる」と考
えている若者が全体の15%しかいないという調査結果が出たりする。
この割合が日本の強者と弱者の現状をある程度反映していると考えてい
いのかもしれない。


テレビばかりを見て育った若者は社会的弱者となり、弱者であるがため
に社会に対して危険な存在になる恐れがある。これが先頃のフランス暴
動から学ぶべき教訓だ。そしてそんな事態を招かないためのカギは教育
にしかない。


まずは家庭で子どもとしっかり向き合うこと。時間を取ってきちんと話
をすること。ここがスタートだ。そうすれば、当然テレビを眺めている
時間だって減っていくはずだから。






昨日のI/O

In:
『本が崩れる』
『ひとつ上のアイディア』
Out:
I社社長インタビューメモ
年賀状デザイン

昨日の稽古:

・ジョグウォーク20分
 少しずつやっていこうっと。