教員と親の意識を変える


学校改革は喫緊の課題


だとすれば、どう改革していけばいいのか。参考事例はいくつかある。
たとえばワタミ社長・渡邊美樹氏が始めたやり方だ。渡邊氏は経営難に
陥った学校に対して30億円もの個人保証をした上で、理事長として再
建に乗り出した(日経ビジネス2005年12月12日号)。


まず手を付けたのが、教職員の意識改革だ。具体的には労働組合を解散
し、2年で全教員の3分の1を入れ替えた。ここから先は推測に過ぎな
いが、これで教員のモチベーションに一気に火が点いたのではないだろ
うか。


渡邊氏が『和民』と原則的に同じマネジメントの手法を持ち込んだとす
れば、がんばった先生は物心両面で高い評価を得るはずだ。やる気があ
って能力の高い先生ほど、生き生きとして授業や生徒指導に取り組むだ
ろう。


そして、ここがポイントなのだが、取り組むべき方向性が教員の独りよ
がりにならない仕組みがきちんと作り込まれてもいる。教員に対しての
360度評価で、校長や理事はもちろん生徒の親や同僚までが教員の評
価に参加する。そして、この評価によっては賞与で最大4ヶ月分もの差
をつける。年功序列の考え方もまったくない。


こうしたやり方について、公立学校の先生方はどう思うだろうか。少し
視点を振って、この渡邊式のやり方を公立学校に導入するためには、ど
うすればいいのだろうか。そもそも、こんなやり方を公立学校に取り入
れることははなから無理なのだろうか。


これは私立学校のケースだが、公立学校でもドラステイックな革新を断
行して、実績を出しているところがある。京都の堀川高校である。京都
で堀川といえば、蜷川改革の前は公立の名門校だった。地元京大を始め
国公立大学へ進む卒業生も多数いた。


ところが高校改革のあおりを受けて、堀川高校は衰退の一途をたどる。
2000年には現役の国公立大学合格者はわずか6人にまで落ち込む。
それが3年後には135人にまで急増し「堀川の奇跡」と呼ばれるよう
になった。


何が変わったのか。


意外にも、一般的には評判の悪い「総合学習」に力を入れたことが大き
いようだ。高校生向けのゼミをいくつか設定し、3〜15人ぐらいまで
の生徒のグループを作って研究させる。このゼミ全体を教師20人ぐら
いでフォローしていく。


教員がきっちりとチームを組んで指導に当たっていくことが、これまで
とは違ったやり方なのだろう。それが教員のモチベーションアップに繋
がり、指導の質を高めていったのではないだろうか。


さらに親のボランティア協力も強く求めた。一人ひとりの親に対して、
子どものために何ができるかを問う。年に1回だけなら、ボランティア
できるはずだと迫る。こうしたやり方が親の意識を変えたのだと思う。


だとすれば、こんなアイデアも考えられる。あまり現実的ではないかも
しれないけれど、仮に生徒が365人いる学校があったとしよう。そこ
で生徒の親に対して、年に1日だけ、自分の子どもとまわりの子どもに
対するボランティアを要請してはどうか。


うまく日程調整をできれば、毎日誰かの親が学校にボランティアとして
協力できるはずだ。すると何が起こるだろうか。


教員の意識が変わるだろう。何しろ毎日少なくとも一人の保護者が学校
に来てボランティアをしてくれるのである。教員も最低限「もっと、し
っかりやらなきゃならない」ぐらいには思うだろう。


と同時に親の意識も変わるはずだ。子どもの教育が決して学校任せだけ
では十分でない現実を目の当たりにして、家庭での子どもとのコミュニ
ケーションがもっと改善されるだろう。


子どもだって、きっと何かを感じてくれるだろう。たとえば、いろんな
親、地域の大人に自分たちが守られているんだという安心感が生まれる
かもしれない。何となくではあるけれども、自分がたくさんの大人たち
に支えられていることに気がつくかもしれない。


最初の一歩の踏み出し方は、他にもあるはずだ。大切なのは、とにかく
初めの一歩を一刻も早く踏み出すことなんじゃないだろうか。




昨日のI/O

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