スプリングスティーンの歌詞の意味は


Born in the U.S.A


この曲を20年間ずっと、脳天気なアメリカ礼賛の曲だと思っていた。だって少しばかりはヒアリングに自信があるのだけれど、この人の歌詞だけはほとんど聞き取れなかったから。わずかにわかったのはリフの「Born in the U.S.A」と「To go and kill the yellow man」のところだけ。


だから、なぜだかわからないが「yellow manって日本人のことかい。つうことは第二次大戦か。えらいふるいこといってんだな、こいつ。なるほど古き良き強きアメリカはすばらしいっていいたいわけだな」なんて、思いっきり唐変木な聞きまちがいをしていた。


そんなわけで、リフはキャッチーで耳障りがいいけれど、未だにこんな曲がはやるなんてアメリカはとんでもねえ国だなと24歳の頃の私は思ったわけだ。ちょうどアメリカでは愛国心が盛んに燃え盛っていた頃だと記憶する。


ところが、これがまったく違っていた。とんでもない誤解だった。なんで、それがわかったか。村上春樹の『意味がなければスイングはない』を読んだからだ。この中で、ブルース・スプリングスティーンが、いかに<アメリカで>さえ誤解されているかが書かれている。


ホントかよと思ってCDを借りてきた。そしてMacWidget「Sing that iTune!(便利になったもんですね、iTuneでかけている曲の歌詞を勝手にダウンロードしてくれるんだから)」で歌詞を調べてみた。その結果が『二度びっくり』である。


歌詞に驚いた。この曲、アメリカはいい国だなんてひと言もいってない。その内容はまったく逆だ。アメリカのdeadmen's townに生まれたおかげで、ずっとひどい目にあいながら大きくなって、おまけに何の関係もない外国に送られて、イエローマンを殺さなきゃならない羽目になったと。ほとんどアメリカ恨み節である。


村上春樹が書いているように、ここで歌われているのはアメリカのワーキング・クラスの救いようのない状況である。だから、二度びっくりというのは、そういう曲を脳天気なまでにヒットさせたアメリカ人の感性にたまげたということである。


確かにリフの「Born in the U.S.A」のところだけを聞いていれば、俺たちは素晴らしい国に生まれたんだぜって錯覚させるようなメロディーであり、そんなアレンジになってもいる。歌詞は、村上春樹も書いているように、スプリングスティーンのしゃがれ声と、あのシャウトする歌い方じゃ、アメリカ人でも聞き取れなかったのかもしれない。


でも、いくらなんでも、そんなことはないだろう。極端な話「Born in the U.S.A」のリフ一発で売れた曲だなんてこともあり得ないわけだし。しかも、この曲が出た84年は、ベトナム戦争が終わってからもう10年ぐらいが経っているのだ。そう考えれば、アメリカもなかなか奥が深いのかもしれない。


アメリカ人が書く歌詞なんて、しょせん大したことない。ロックでも歌詞に聴くべき意味があるのはイギリス人が書いた曲だけ。ロックを歌詞を含めてしっかりと聴くようになった10代後半以降、ずっとそんなふうに思ってきたのだけれど。それがいかに偏見であったかが、よくわかった。


昨日のI/O

In:
経営学入門』
意味がなければスイングはない村上春樹
Out:
M社・社長インタビューメモ
O社・プロモーション企画書原稿
I社・ブランディング企画書原稿
CSリサーチ企画



昨日の稽古:

・ジョギング
・砂袋
・基本稽古