中抜きではなく日抜きへの動き


300vs2400


アメリカでの話だが、「今後」日本語のクラスを新たに設けたいと考える高校は、中国語の8分の1しかないようだ(フォーサイト誌2月号)。1月8日のエントリーでアメリカで中国語の学習ブームが起こっていると書いたが、『フォーサイト』誌によれば事態はもっと深刻だ。
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060108/1136685289


以下、同誌の記事によればアメリカでは

  • 公立学校の中国語授業拡大と中国との文化交流を促進させるために、5年間で13億ドルを計上する法案が連邦議会に提出された
  • カリフォルニア大学バークレー校の東アジア言語・文化学部では昨年、受講者数が最も多い言語が日本語から中国語に変わった
  • ハーバード大学での日本語受講者数は269人、中国語は580人。日本語を学ぶ学生が古典志向なのに対して、中国語クラスの学生は実学志向
  • 外交分野で働く連邦職員の語学訓練に関して、日本語の訓練生はこの5年間で横ばいなのに対して、中国語は倍増している


とりあえず現時点では、まだ日本語の方が優勢らしい。公立高校の語学クラスでみれば、日本語を教えている学校が約650校、中国語はその半数ぐらいとある(同誌より)。


しかし、問題はトレンドである。要するに、この先どうなっていくかを考えなければならない。全米でもトップクラスの大学で、アジア系の語学については日本語より中国語を選ぶ学生が増えていく。アメリカ連邦職員も中国語を学ぶ人が増えていく。


前回のエントリーでも書いたように、経済的にも、政治的にも、これからの国際社会では米中の結びつきが強まって行く証と考えるべきだろう。そして、それは当然、相対的には日本のプレゼンスが弱まっていくことを意味する。


ところで中国語を学ぶためには、当たり前のことだけれど、中国語の先生が必要になる。そのために中国政府は、アメリカで先生を育てようとしている。中国語教師を育成するための専門機関が、近々アメリカで中国政府の協力によって作られるようだ。


さらに『フォーサイト』誌によれば、中国政府は積極的に中国語教育を世界中でやろうとしている。同政府は今年から5年間で主に2万人以上の中国語教師を海外に派遣する予定で、主な派遣先は東アジアなのだが、日本は対象外だという。これは相当に戦略的な動きと考えなければならない。何しろ中国政府は30年先を読んで動いているのだから。


教えてくれないのなら、中国語なんかわからんでもええわい。そう開き直っていていいのかどうか。ことはアメリカを好きだとか、中国を嫌いだとかというレベルの問題では、もちろんない。資源に乏しい(しつこく書いているけれど)食料も燃料も輸入に頼らなければならない日本の将来戦略に関わる問題だと思う。


複眼的な思考を、それも未来を対象として考えるなら、まず前提として理解しておく必要があるのは、今後、アメリカと中国は人的、文化的交流が進むだろうということだ。すでに中国ではエリート=英語を話せる人という認識がある。大学院進学先として優秀な学生ほどアメリカを選ぶ傾向も強い。もちろん中国政府も後押ししている。


このように中国からアメリカへはしっかりしたパイプがある上に、さらにアメリカサイドでもトップクラスの大学で中国語を学ぶ学生が増えていく。これはアメリカから中国へのパイプが太くなっていくことを意味する。


経済面での結びつきをみれば、すでにアメリカにとって中国はなくてはならないサプライヤーとなっている。とはいえ今はまだ政治、軍事などの面でアメリカにとっては、日本の方が重要なパートナーだ。が、今後のアメリカ政府を担っていく人材が今と同じように考えてくれる保証はどこにもない。


あまり考えたくない将来図だが、食料、石油、水などの資源問題がこれから死活問題となったときには、米中が手を結ぶことだってありうるだろう。日米中の関係でいえば、今はどちらかといえば『中』抜きだけれど、『日』抜きになる恐れがあるということだ。そのとき、日本はどうなるのか。


少なくとも子どもを持つ親なら、日本政府はどう考えているのだ、などと悠長なことを言っているべきではないと思う。世界関係がそんな状況になる(もちろんEUやロシア、さらにはBRICsなどの動きもある)可能性を、まずしっかりと考えておいた方がいい。そして、その上で、わが子にどんな力を付けさせてあげるべきか。ここを本人の資質を見ながら、ていねいに考える必要があると思う。



昨日のI/O

In:
フォーサイト』2月号
Out:
S社・社長インタビュー原稿
E社フラワーショップ・チラシ表面デザイン



昨日の稽古:

・立禅