何年先までを考えるのか


2025年までに75%


ブッシュ大統領の一般教書演説の話。アメリカはあと20年で中東からの原油輸入を75%減らしたいと。逆にいえば、今のところはそれぐらい中東への依存度が高いということだ。このことに強烈な危機感がある。
http://www.whitehouse.gov/stateoftheunion/2006/


さらにブッシュ氏は、アメリカの現状をaddicted to oil(アブ中ですな)と考えてもいる。いうまでもなく世界での石油消費量ナンバーワンはアメリカ、国民一人当たりでの消費量もダントツでアメリカ。総エネルギー消費量でいえばアメリカに次ぐのが中国だが、一人あたりになおせば中国はアメリカの8分の1にしかならない。


ベラボーに石油を使いまくっている国、それがアメリカなのだ。そんな国だからこそ、石油を自由に手に入れられない状況に対しては、本能的な危機感を持つ。だから、これまでは何とか中東や最近ではカスピ海沿岸諸国にまで手を出して、原油利権を確保しようとしてきた。


そのアメリカが、ついに石油に関して脱・中東依存を宣言したというわけだ。さらに教書を読めば、脱・石油依存を考えていることもわかる。


この裏には、いろんな事情があるのだろう。たとえば新たなエネルギー源のメドがようやく立ってきたこと、中東の石油が意外に早く枯渇する情報を掴んだこと、石油に頼っている限りは今後はロシアにイニシアティブをとられる恐れのあること、中東への介入がどう楽観的に見ても得策ではないこと。などなどいろいろ考えられる。


それはともかく。大統領が一般教書で20年先のビジョンを語り、しかもそれはたんにビジョンに留まらず、そちらの方向で動いていくことを宣言し、その具体策の一端までを述べる。ここがすごいところだと思う。


実はそういった先読みというか、スケールの長い将来戦略を描いているのはアメリカだけではない。中国もその典型で、かの国では80年代前半ぐらいから、コンピューターサイエンスで優れた成績を残す学生を、アメリカの大学院へ積極的に派遣してきた。その狙いは、20年先での知的優位性を確保することだ。つまり将来的にはコンピューターサイエンスが21世紀社会で極めて重要な技術となることはほぼ自明であり、ならばそこを自国の頭脳でしっかりと押さえておこうと考えた。


いま北京の中関村でベンチャー企業を起こしているのは、当時派遣された学生の帰国組である。さらにそうした帰国学生に対しては政府が用地や資金の提供までを積極的に行っている。いずれWindowsに対抗してLinuxベースのオリジナルOS開発までを視野に入れているという。教育こそが国造りの基礎、かの国にはそうした認識がある。


さて、日本はどうなのか。といった問いかけには、もはやあまり意味がないのではないだろうか。むしろ、そうしたことをあまり真剣に考えていないように思えるこの国で、これから先、自分はどういったビジョンを持って生きていくのか、子どもにはどんな人生を、どんな環境で歩ませてやるのかを考えた方がよさそうだ。


中東に対する石油依存度は、うろ覚えだけれど日本の場合90%ぐらいじゃなかったか。この状況に対して20年後にどうするなんて話を、少なくとも小泉首相からは聞いた記憶がない。あるいは自給率40%に落ち込んでいる食料問題を、どうやって解決していくつもりなのか。これに対しても何らかの答弁があったとは思えない。


なんて、ビジョンのない国なのだ、などと嘆いている場合では、もはやないのではないか。ビジョンのない国に住んでいるという前提の上で、自分のビジョンを20年、30年のスパンで考えていくべきなんだと思う。




昨日のI/O

In:
『勝負の極意/浅田次郎
Out:
ポルタウォーキング・コピー下書き
Relation誌・原稿訂正



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