なぜフィンランド人は読解力が優れているのか
- 作者: 北川達夫,フィンランドメソッド普及会
- 出版社/メーカー: 経済界
- 発売日: 2005/10/01
- メディア: 単行本
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人口520万人で世界一
2000年からOECD(経済協力開発機構)が3年ごとに国際統一テストを実施している。科目は読解・科学・数学の3教科。この中の読解テストで2回連続ナンバーワンとなったのがフィンランドである。ちなみに読解力について日本は第1回(2000年)で8位、2003年には14位となっている。
フィンランドの2000年と2003年の結果は
読解:1位→1位
科学:3位→1位
数学:4位→2位
日本の2000年と2003年の結果は
読解:8位→14位
科学:2位→2位
数学:1位→6位
フィンランドがすごいでしょう。ちょっとだけ「?」をつけておくと、この統一テストは2000年から始まっているので、それ以前の能力がどうなのかはわからない。
また、なぜかドイツがまったくランクに入っていないのも疑問。ドイツといえば論理トレーニングの三森ゆりかさんが国語教育を学ばれた国である。だからもしかしたらドイツはこのテストに参加していないのかもしれない。
とはいえ、現時点でフィンランドが優れているのは確かな事実である。では、なぜかの国の子どもたちは、読解力が優れているのか。
ものすごく当たり前の答なのだが、読解力高めるような教育を学校でしているからだ。それが、どんなやり方なのか、詳細について興味を持たれた方はぜひ『フィンランド・メソッド入門』をお読みいただければと思う。すこしだけ紹介しておくとポイントは次の5点だ。
1.マインドマップを使って発想練習をしていること
2.先生が「どうして?」攻撃をかけ続けていること
3.言葉を自由に使うような作文練習をしていること
4.「本当にそう?」と考えるクセをつけていること
5.相手の立場になって考えるよう練習していること
まずマインドマップ。これをフィンランドでは「カルタ」と呼んでいる。たとえば大きな紙の真ん中に「コンピューター」とだけ書いてある。そこから枝を伸ばしていく。それでなにをするの? それはどんなもの? それは何? みたいな。こうやって一つテーマが与えられたときの発想の広げ方を学ぶ。
自己紹介だって、このやり方を使える。私は何、どんな人(外見・考え方・話し方・感じ方・好きなこと・嫌いなことetc)、知り合いはといった具合に。
さらには文章の解釈から物語の分析にも、このカルタは使われている。たとえば「桃太郎が鬼退治をした」と真ん中に大きく書いておいて、なぜ・どこで・いつ・どうやって・どうなった、みたいな枝を自由に書いていかせる。知らないうちに5W1Hの考え方が身についていく。発想だけじゃなくて、あとで作文にまでもっていく。
すばらしいと思う。だって、これ、きっと教室でみんながわいわいいいながら楽しんでやれますよ。とにかくじっと問題を考えろってやり方じゃなくて、おもしろがりながら(発想を広げるのって、人間にとっての基本的な快感だと思う)、自然に思考方法が身につくんだから。
さらにすごいなあと思ったのが「どうして?」攻撃の効果だ。これで何と物語を分析できてしまうこと。ほらよくあるでしょう、次のような問題が。「そのときの主人公は、どういう気持ちだったでしょうか?」。
これこそが物語をよく味わえ、なんて教えられがちなんだけど、フィンランドではそんなやり方はしない。この問題を解くカギは、主人公の気持ちの「原因」を探せばいいと教える。そして難解な現代小説はともかく、普通の物語は基本的にきちんとした因果関係にもとづいて組み立てられているから、きっと原因はあると導く。これは、かなり目からウロコであり、三森さんがやっている絵本分析もこれだよなあと思った次第。
これまで自己流解釈でやってきた三森流の論理トレーニングとフィンランド方式、さらには最近自分自身が本を読むときや考えをまとめるときにマインドマップを使っていることなどが、自分の中でこのタイミングで合流したことはとても大きな意味があるように思えますね。
何かやらなくちゃ。
昨日のI/O
In:
『フィンランド・メソッド入門/北川達夫』
『B2Bマーケティング/パチェンティ・ジュリオ・チェザレ』
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