男が美脚にこだわる背景は


前年同期比 7%増


これは05年10〜12月に勤労者世帯が男性用下着に支出した家計消費。下着にこだわる男性が増えているらしい。伊勢丹メンズ館では、2月の男性用下着の売上高が前年同月比10%ほどのアップになっているとも(日経新聞3月1日)。


そこで注目されているのが、ヒップラインをきれいに見せる補整下着だそうだ。早い話がロングガードルですね。2月中旬にトリンプが発売した「男性用ロングガードル」は、月末までにほぼ完売したという。


これをはくとどうなるか。ヒップアップ効果があって、お尻のラインがきれいに見える。ヒップラインを気にする男性が増えているのは、美脚パンツブームが背景にある。男だって足を長く、美しく見せたいのだ。


トリンプがターゲットとして考えていたのは体形がくずれ始める中高年らしいが、実際の購買層は30代だった。とりあえず外見を気にするのは、いいことだと思う。少なくとも「ずりパン・半ケツ」でよたっている奴らより、個人的にはずっと好感を持てる。


持てるんだけれど、それでええんか? という疑問も消えない。以前のエントリーでも書いたけれど、いくら美脚に『見せ』ても、しょせんは見せているだけだ。何というか、その、実態と外見の隔たりを、すんなりと受け入れることができない。そんなことにこだわるのは、あんたが歳を取っているからやといわれれば「仰せの通り」と引き下がるしかないのだけれど。
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20050805/


補整用下着や美脚パンツで見ためをカッコよくするのと、たとえば金正日も愛用しているといわれるシークレットブーツを履くことの間に、大きな違いがあるとは思えないのだ。じゃあ、女性はどうなんだといわれると返答に困るのも確か。だって女性は見た目が大事なんだからいいじゃん、なんてのは、一種の逆差別だと非難ごーごーとなる可能性大だし。


などと自己批判的に考えてみるに、これはやはり男性の価値観が変わってきていると理解した方がいいのかもしれない。これまでのいわゆる男性らしさ、女性らしさへのアンチテーゼがこうしたトレンドの通奏低音として流れているのだろう。そもそも、なぜ男は男らしく、女は女らしくしなければならないのか、といった問いに、すでにきちんと答える術をもっていないのだから。


もちろん建前論としては『種の保存』といったコンセプトを持ち出すことになるのだろうけれど、そんなことをいってもあまり理解されないだろう。だからこそ少子化が既成事実として進行しているのだと思う。ということは、男性が美脚にこだわったり、そのための補整下着が売れたりするのは、実は時代の先端的な現象として捉えた方がいい。


それならばトリンプの男性用ガードルを買っているのは、30代イノベーター層と考えられる。あるいは、もし男性の女性化が始まっているのだとすれば、これは昨日のエントリーで書いた、国風・平安文化回帰現象として理解すべきなのかもしれない。


いずれにしても、価値観のパラダイムシフトが起こっていることはたぶん間違いない。マーケッターとしては、ここをいかに読むかが問われるところだ。


まだ直感のレベルだけれども、もしかしたら、これまでのイノベーター、アーリーアダプター、フォロワーといったスキームでトレンドの伝播を理解することが、時代の間尺に合わなくなっているような気もする。なぜかといえば情報流通のエリア/スピードが以前とはまったく変わってきているからだ。ということは、これと同じ次元で起こっているもう一つの新しい消費スタイルが、実は『ロングテール』なのではないか。そんなことも思った。




昨日のI/O

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エグゼ社・チラシデザイン



昨日の稽古:

 ・カーツトレーニング2セット
 ・鉄砲