ヒデキマツイの筋トレとは


47分で650回!


ヤンキース松井秀喜の腹筋運動である。最初は足上げ腹筋を30分、この間一度も足は床に降ろさない。そのあと、さらに5種類の腹筋をやる(日経新聞3月28日)。


しかも、これで「単なるアップ」だという。それから2時間15分かけて、次は上半身を鍛えあげていく。ただし器具は何も使わない。負荷はすべて自分の体重だけを利用する。松井がいいガタイをしているのはわかっていたけれども、てっきりバーベルなどをガンガンやっているんだろうと思っていたから、とても意外だ。


ずばり、そうした筋トレの目的は何か。


この質問に対して「脳と体の誤差を少なくする」ことと松井は答えている。まるで武芸者のような切り返しではないか。

「筋力そのものより、筋肉の神経が大切です。いくら筋力があっても、神経が通っていなければ思い通り動かせない。ボディービルの筋肉が、野球に役立つかといったら役立たない」


なぜ、筋肉の神経が大切なのか。脳と体の誤差を少なくするとはどういうことか。


すべては体重移動のためである。打撃の要は体重移動にあり。この考えに松井が至ったヒントは、宮本武蔵五輪の書』から得たという。


「もっとも上手の人のすることは、ゆるゆると見えながら、間の抜けないものである。何ごとも熟練した者のすることは、いそがしげに見えないものである」(武蔵と五輪書 津本陽


こうしたことはすべて空手にも当てはまりそうだ。うちの道場でも黒帯の先輩の動きを見ていると、決してせわしなく動き回ったりはしていない。実際に組手などで対峙してみるとよくわかる。極端なたとえでいえば、こちらが10動く間に、せいぜい2か3ぐらいしか動いていないのではないだろうか。


しかし、その動きには無駄がない。だからいざ動いたときには、的確に急所をついてくる。そして2か3ぐらいの動きではあるが、決して居着いていない。見た目はゆったりと構えているようでも、ほんの少しずつ常に動いている。そしてひとたび動いたときには、傍目にはそれほど全力を込めているようには見えないのに、効かせる攻撃になっている。


いつも動いているということは、体重移動が行われているということだろう。静止した状態からたとえば突きを繰り出すのと、動きの中から突きを出すのでは、必要とされる初動エネルギーに大きな差が出る。もちろん初動エネルギーが少なければ少ないほど、動きはスムーズになる。


だから上級者は振りかぶってガツ〜ンと突いたりはしないものだ。そんな大げさなことをしなくとも、最短距離をスッと走ってきた拳が実に効く。勝手な想像に過ぎないのだけれど、瞬間的に拳に体重が乗っているんじゃないだろうか。カギは体重移動にある。


加えてピンポイントで急所を捉えてもいるようだ。そして力みがないから、拳が走っている。スピードがある。力積はたしか運動量と等しかったはずだから、質量×速度で計算されるわけで、なるほど上級者の突きが効くのもむべなるかなである。


せせこましく、忙しげに動いているようでは、まだまだ修業が足りないのである。だからといって、それなりの修業をしてもいないのに、形だけ「ゆるゆる」と動いたりしていては、やはりボコボコにされるのは目に見えている。難しいのである。


そして、この難しさを克服しない限りはうまくなれない。と、わかったようなことを書いているけれど、現実問題としては脳と体の誤差がありまくりなのだ。ここを何とか、少しずつでも埋めていきたい。ただ救いは、空手の場合でもおそらく自分の体重を使った筋トレが役に立つということだろう。これなら膝にそれほど負担をかけずにやっていけそうである。


腹筋だけを30分も40分もやることは一生かかってもできないだろうけれど、それでも少しずつ限界を伸ばしていけるようにがんばっていきたいものだ。


昨日のI/O

In:
Out:
メルマガ

昨日の稽古:西部生涯スポーツセンター・軽運動室

 ・ミット稽古(肘を滑らすような早い突き・突きの連打・蹴りなど)
 ・ミットを使った受け
 ・受け返し
 ・5分間組手×3セット