最小限の防御について


子どもでも突きの強い子がいる。


子どもの組手の相手をするときは、たいていサンドバッグになってあげる。好きなように叩かせたり、蹴らせたりさせてあげる。で、時々かわしたり、前に出て圧力をかけたりといった調子で付き合ってきたのだが、中に一人だけ、やたらといいパンチを出す子がいる。とはいえ小学生のことだから、たいていは何とも感じないのだが、その突きをレバーにまともにもらうと、さすがに少し(ほんの少しですよ)は効く。


こいつはちょっとヤだなと。だからといって、肘で受けたりするのも大人げないし、さてどうしようかと考えて思いついた。子どもの相手も十分に、自分の稽古になるじゃないかと。


どんどん突かせて、ガンガン蹴らせる。これはこれでいい。ただし、相手の突きや蹴りが当たる瞬間に、自分の体を少しだけずらす。たとえば突きがくるなら、角度にしてほんの10度(もしかして5度?)ぐらいでいいから、体をどちらかに開く。面を変えるわけだ。これでダメージはほぼゼロになる。しかも、それぐらいしか体を動かさないということは、動かすのに時間もかからないということである。これは、かなり目からウロコ的発見だった。


もちろん大人相手の組手のときに、この体の面を変える受けが、すぐにできるようになるとは思わない。子どもと大人では、技の早さが違うからだ。が、それでもこの受けは有効だと思う。手でさばく、下がる、あるいは前に出る、サイドへ回る、などなど受けにはさまざまなやり方があるなかで、もしかしたら面を変える受けが、もっとも動きが小さいのではないか。


回し蹴りのように円の軌道で、こちらの体に絡み付いてくるような攻めに対しては、たぶん難しいと思う。が、突きや前蹴りなどの直線的な攻めに対しては面を変える受けが効果的ではないのだろうか。イメージでいえば、体全体を一枚の板と考えて、その面を相手の攻めに応じて少しだけ斜めにするといった感じだろう。


まだ、一回しか意識してやっていないので確かなことはわからない。とはいえたぶんポイントは足さばきにあるように思う。たとえば足をスイッチすれば、それで体の面は一変する。スイッチほど大げさに動かなくとも、左前で構えていたなら、前にある左足をすっと引くとか、後ろにある右足を回すとか。


あるいは体を一枚の板とイメージすることから類推すれば、ナンバ歩きや骨盤に乗る、といった動きとも近いのかもしれない。


ともかく、できるだけ動きを小さくして、それでいて相手の突きを流すみたいな受けがうまくできるようになると、どうなるか。いつでも自分の攻めが届く間合いで、しかも手足を使った受けをしていないので、こちらはすぐにでも攻めに入れるのではないか。しかも相手からみれば自分の攻めを流されている、つまり体勢が少し前のめりになっているはずで、これは絶好の攻めのチャンスとも考えられる。


と頭では考えてみたのだが、さて。大人相手に、そんな受けが通用するものだろうか。いきなり通常の組手稽古でやるのは危険だけれど、子ども相手の稽古のときに、しばらく意識してやってみよう。これがうまくいけば、受けも少しは進歩するはずだ。



昨日のI/O

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ゴールドラット博士の論理思考プロセス』
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昨日の稽古:

 ・カーツジョギング
 ・足上げ腹筋