ブートキャンプに隠された狙いは何か
ズバリ、iPodによる世界制覇じゃないのか。
要するに
iPod Everywhere
iPod Everybody
iPod Everytime
『どこでも、だれでも、いつでもiPod』を実現するための布石。
→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060214
もちろん、これが実現した時にはiPodは携帯コンピュータとして大々的に扱われるようになる。
→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20051209
そのためには当面、Windowsと仲良くやっていくしかない。これがジョブズの判断だったのではないだろうか。このところのWindows陣営のMac対応はちょっと微妙なところにきている。Mac用エクスプローラーのサポート停止に始まり、最近ではWindowsメディアプレイヤーでも今後はMac用のバージョンアップをやらないという。まさかOfficeまで打ち切りとなることはないだろうが、マックユーザーにとってはちょっと不便な状況になりつつある。ここを挽回したかったのではないだろうか。
Mac関係のブログでは「MacがMacでなくなる」なんて悲観的な書き込みがあるそうだが(日経産業新聞4月7日)、多くのMacユーザーにとってはWindows系のソフトも使えるようになるのは便利以外の何ものでもないだろう。というか、これまでにもいろいろと使いたいソフトはあったにもかかわらず、Macバージョンがないということでどれだけ悔しい、あるいは不便な思いをしてきたことか。マックユーザーであるが故の不利が解消されるのなら、諸手を上げて賛成する。
しかもこれによりMacが売れるようになれば、ユーザーにはさらなる恩恵が生まれる可能性がある。仮にいまアメリカで4%ぐらいのMacのシェアがもっと増えればどうなるのか。量産効果がでるのではないか。つまりIntel搭載Macの価格が下がりはしないか。あるいは売上増による研究開発費増(と単純にはつながらないとは思うけれど)により、製品ラインナップが増えたり、あるいはMacOSがより進化することも期待できる。
これでアップルが「普通の会社」になってしまうのではという声も出ているそうだが(日経産業新聞4月7日)、そんなことには決してならないだろう。いみじくもビル・ゲイツもいっているように、いずれ「パソコンは事実上、消滅する」。おそらく問題はハードではないのだ。であるなら、別にPower MacでWindowsが動いたっていいじゃないか。これがジョブズの考え方なのだろう。
ハードはいろいろあっていい。が、一義的には人々にもっとも近いところにあるデバイスがまず支配権を握る。それは日本では携帯電話なのかもしれないし、欧米ではPDAなのかもしれない。そこに何とか割って入ろうとしているのが、たぶんiPodなのだろう。
いずれにしても価値の源泉となるのは、究極のところソフトである。そしてソフトの価値とは、つまるところQ.O.Lを高めることにある。ネットワークを通じて、コンピュータが与えてくれる機能を使って、人の暮らしがどれだけ良くなっていくのか。ネットワークもコンピュータもこの先、たぶん水や空気と同じような存在となっていくはずだ。そのときにどんなビジネスモデルを回していくのか。ジョブズは、そしておそらくビル・ゲイツもここを考えているはずだ。
コンピューターエブリウェアを前提として、Googleが狙っているのは、ロングテール広告ビジネスである。アップルが狙っているのは、何だろう? あるいはマイクロソフトは? 今回のブートキャンプ搭載には、そうした相当先の状況までを踏まえた戦略的な判断があると思う。そして、その戦略を読むことは、たとえば10年先(もしかしたら5年先かもしれない)の自分たちの暮らしぶりを予想することになる。一体、どうなるのだろうか。
昨日のI/O
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田坂広志氏インタビュー原稿・下書き