まぐまぐは巨大なネット新聞


メールマガジン数: 31,844誌
 のべ読者登録数: 33,691,019


まぐまぐである。つい最近、ようやくまぐまぐから自分のメルマガを発行するところにまでこぎ着けた。
http://www.mag2.com/m/0000190025.html


それはさておき。実はもう7年も前から、この会社(ユナイテッドデジタル)のことは注目していた。そもそも、まぐまぐに目を付けた理由は二つある。


まず一つには、メルマガという新しいメディアの可能性だ。そして、もう一つが、この創立間もないベンチャー企業の経営方針が、極めてユニークだったからである。その経営方針が当時いささか関わりを持っていたある企業グループの経営哲学を受け継いだものと知って、さらに興味を持った。


その企業グループとは、酒のディスカウントチェーンとして今や1200店舗を抱えるまでになったKLCグループである。
http://www.klc.co.jp/


ここでKLCグループとの関わりを話してもややこしくなるだけなので、それは端折るとして、まぐまぐ創業者が実はKLC出身であり、さらにKLCのカリスマ創業者からその強烈な経営哲学を叩き込まれていることが、強く印象に残ったのだ。
http://hotwired.goo.ne.jp/matrix/9902/textonly/003.html


その哲学とは『ノーリスク・オペレーション』である。ローリスクの間違いではない。ノーリスクなのだ。これは松下のコスト3割削減思考法と同じ。つまりリスクについての考え方を、いかにローリスクに押さえるかといった発想法とは、まったく違った次元で考えることを意味する。


ローリスクの「ロー」とノーリスクの「ノー」の間には、非連続的な思考ギャップがある。簡単にいえば「ローリスク」を追求する限り、絶対にリスクゼロ、すなわちノーリスクの境地に達することはできない。しかしノーリスクを前提として考えていけば、限りなくリスクゼロの世界に近づくことはできる。自分の思考にある縛りをかけることができるというわけだ。


ノーリスクなビジネスモデルを求めて、まぐまぐ創業者・大川氏はウェブではなくメールを使ったビジネスを思いつく。キッカケはあるメーリングリストで交わされたひと言「メール新聞」である。恐らく大川氏の頭の中では「メール新聞」=配信コストほぼゼロのメディア、記事はネットで募ればタダ、自分たちが用意するのはコストゼロのメディア、といったイメージ連鎖が起こったのではないか。


まぐまぐ イコール・メルマガ配信システムと考えると、そのビジネスモデルのイメージが湧きにくい。そうではなく、まぐまぐ イコール・ネット上の巨大な新聞紙面と考えれば、そのビジネスモデルは既存のアナロジーで理解できる。投稿者が多岐に渡り増えれば増えるほど玉石混淆ではあるのだけれど、読者層も多様な人たちを集めることができる。


そして片側に読者がいるのだから、当然、そこに広告を出したい企業もあるはずだ。こんなインスピレーションが生まれたのだろう。さらに少し綿密に考えるなら、いろんなジャンルのメルマガあるということは、各ジャンルに関心を持つ読者を集められるということだ。そして特定のジャンルに関心を持っている読者は、そのジャンルの商品を扱うスポンサーにとっては宝の山である。


まぐまぐのその後の発展は今さら言うまでもないだろう。今やメルマガ配信といえば、まぐまぐの独り勝ち的状況となっている。メルマガが流行りそうといわれ始めた頃には、何社かがこのビジネスに参入した。しかし結果的に残ったのはまぐまぐである。まぐまぐが勝ち残った大きな理由としては、やはりノーリスク・オペレーション哲学があったからだろう。未だに本社を京都に置いているのも、その哲学故ではないのだろうか。


そして今や読者数3000万人あまり。日本のどの新聞もまったく相手にならない読者をもつ。しかも一方には、まぐまぐのために(これは、別の視点からの見方ではあるが)せっせと無料で記事を書いてくる作者がやはり3万人以上いる(私もその中の一人だ)。これってビジネススクールケーススタディに十分なると思うのだけれど、どこか取り上げるところはないのだろうか。


ちなみに私が発行しているメルマガのバックナンバーは下記に。おもしろそうと思ったら、どうぞ読者登録を!
http://com-lab.com/NewFiles/mmagbkn.html



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