中一プロブレムの乗り切り方


中一プロブレムなるものがあるそうだ。


中学校に入学したての子どもたちが陥りがちな症状をいう(日経新聞4月17日)。小学校と中学校の間にあるギャップによって受けるショック、そこから引き起こされるストレスのようなものらしい。


ところで小学6年と中一の間にはどんなギャップがあるのか。
人間関係と勉強の二つで大きなギャップがあるのだ。


小学校時代は最上級生だったのに(だから、たいていの子にちょっとした自信みたいなものがあったのに)、中学に入ると当然のことだけれどいちばん下の1年生。もし運動系のクラブなどに入れば、完全に下っ端のパシリ扱いされることになる。


しかも小学校では先輩、後輩という縦の関係はほとんどないが、中学、特にクラブでは厳しい上下関係がある。クラブの先輩は絶対的な存在であり、逆らうことなど許されない。実際に体力面でも中学の3年間でぐ〜んと成長する子どもは多いから、一年坊にとって三年の先輩はさぞいかつい存在に見えることだろう。


こうした人間関係の急激な変化に加えて、勉強面でも小学校時代とはやり方がまったく変わる。小学校ではたいていの科目を一人の先生が担当して教えてくれるけれど、中学では教科ごとに先生が違う。


勉強そのものも難しくなる。たとえば算数は数学と呼ばれるようになり、急にとっつきにくくなる。考えてみればこれはとても不思議なことで、国語は小学校でも中学校でも同じ「国語」で呼び名が変わることはない。理科、社会もそうでしょう。なのに、なぜか算数だけがいきなり「学」なんていかめしい文字がついて、やたら難しげになる。まあ確かに数学の内容は、小学校時代の算数から一気に抽象的・論理的な思考の世界に入って行くから、呼び名も変わって当然なのかもしれない。


こうしたギャップにうまく適応できない子どもが出る。適応できない子どもたちが、そのストレスをいろんな形で表出させる。これを称して『中一プロブレム』というらしい。


さて、ここをどう乗り切るか。


問題は、人間関係と勉強の2つの領域にある。だけれども、ギャップに悩む本質的な理由は、自信喪失である。小学校では最上級生だったのに
中学校では最下級性になってしまった。しかも勉強もわからない。


ということは逆に考えれば、実はこの問題は、案外簡単に解決できるのだ。要は自信を取り戻せればいいのである。自信を取り戻す方法は二つある。クラブか、勉強だ。


運動が得意で自信があるなら、クラブで自信を取り戻すことができる。たとえば小学校からリトルリーグなどで野球をやっていた子なら、野球部に入って自分の力を認められるだけでオッケーである。いきなりレギュラーにはなれなくとも、同じ中一の中では自分がかなり上だと思えれば、それでいいのだ。とりあえず自信が生まれるでしょう。水泳をやっていた子なら水泳部で、サッカーならサッカー部で、同じように自信を復活させればいい。


では、小学校で特にクラブ活動をやっていなかった子は、どうすればいいか。これまた答えは簡単である。勉強でがんばればいいのだ。そんなのムリ、というなかれ。なにも全教科でトップになれ、なんてことはいっていないのだから。たった一教科でいい。クラスで1番をめざすのだ。


そしておあつらえ向きというか、なんというか。ほんの少しだけがんばれば、たいていの場合、誰でも自信を持てる教科が中学にはあるのだ。英語である。


小学校時代に算数ができなかった人でも、あるいは国語が苦手だった子でも(本当は国語が苦手だと少しだけ問題あるんだけれど)、まして社会、理科の成績がよくなかった人でも、英語を得意科目にできる可能性はある。やり方を間違わず、プラス私は英語を得意になるんだという気持ちを強く持てれば、あとは毎日続ける根気だけだ。


英語は、たいていの子が中学から始める科目である。みんな、同じところからスタートするわけだ(小学校のときから英会話教室なんかに通っている子も増えているらしいけれど、そんなの実はほとんど関係ない)。小学校時代に勉強ができたとか、できなかったとかも全然関係ない。英語なら誰でも、中一の4月から始めて最初の中間(もしくは期末)テストで一番になれる可能性がある。


そのための勉強法もはっきりとしている。必要なのは、教科書の副教材として市販されているCD(教科書の本文をネイティブが読んだものが録音されている、だいたい3000円ぐらいだ)と日本語の訳文が載っている教科書ガイド(これが1000円ちょいぐらい)だけ。せいぜい5000円ぐらいの投資ですむ。これらを使って、次のように勉強する。


(1)まず、教科書本文をみながら、CDを4,5回聞く。このときは意味は考えなくていい。
(2)つぎに教科書を見ないで、CDを4,5回聞く。このときもまだ意味は気にしない。ポイントは英語に対する耳慣らしである。
(3)CDをとめて、英文本文と教科書ガイドの日本語訳を交互に見て、英文の意味を確認する。
(4)教科書を見ながらCDを4,5回聞く。このとき、聞きながら意味をしっかり覚える。
(5)教科書を見ないで、CDを聞き、意味を思い浮かべる。
(6)教科書を見ながらCDをかけ、その発音と同じ速度、同じ発音で英語本文を発音してみる。できるだけおっきな声で読む。
(7)そして最後。これが大切なのだが、教科書を見ないでCDをかけながら、一文ずつを書く練習をする。単語のつづりを間違わず、コンマやピリオドまで気を配って書く。


文章で書くと長ったらしいけれど、これを毎日やる。これ、リンガフォン式の外国語学習法らしいが、自分が中学時代に教わったやり方でもある。ポイントは英語を聞きながら、聞いている英文を書けるようになること。英語を日本語に訳すのでもなく、日本語を英語に訳すのでもない。英語を聞いて、その通りに英語を書くのだ。30何年か前の自分は、こんなことして何の意味があるのか、よくわからなかった。


でも、今はわかる。ちょっと専門的な話をすると、これは頭の中に英語の回路を作る練習なのだ。英語を聞いて、英語を思い浮かべる練習である。この回路ができてくると、やがて英語を英語のままで理解できるようになる。そうなればしめたもの、英語を完全に得意科目にできる。高校でも大学でも、あるいは社会人になっても通じる英語頭ができてくる。


ま、だまされたと思って、その日に習ったところだけ(たとえばLesson1のpart1とかのことね)でいいから、欠かさずやってみよう。これならたぶん20分もあれば、できるでしょう。CDをかけて英語での書き取りを間違わずにできるレベルまでいけば、英語の試験なんてまず間違いなく100点に近い点を取れるはずだ。


これで中一プロブレムはクリアである。



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