美尻オヤジとは


1ヶ月で7000枚


美尻パンツが売れている(日経ビジネス5月1日号)。なんじゃ、それ? と思いませんか。


美尻パンツとは何か。お尻を持ち上げてきれいに見せる『下着』である。価格は2000〜4000円台と高めで、40〜50代の男性が自分で買っていくのだという。


男性用の補整下着が売れているらしいことは、以前にも書いた通りだけれど、ついにきやがったか「美尻パンツ」という感じだ。日経ビジネス誌にはその写真があるんだけれど、キモいですよ、これ、相当に。


たとえばトリンプが6月に発売するらしい美尻ガードルは、黒の総メッシュ。マネキンに履かせている写真が、かなりヤバい。あるいはお尻のふくらんだところだけがポコッと穴が空いているタイプもある。まあ、涼しくていいのかもしれないが、ちょっとどうよといわざるを得ない。


前回のエントリーでは、美脚パンツについて、メーカーとしてはターゲットに中高年を設定していたが実際に買っているのは30代だったという新聞記事をネタにして、まあ、いいんではないの、と書いた。
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060306


男性が美脚にこだわったり、そのための補整下着が売れたりするのは、実は時代の先端的な現象として捉えた方がいい。だとか、男性の女性化が始まっているのではないかといったという理解である。しかし、今回の美尻パンツはどうもちょっとニュアンスが違うようだ。


本当に40代、50代のオヤジが買っているのだとすれば、それは美意識からではなく、単にスケベ心から。そんなふうに思えてならない。もちろん美しいと、イヤらしいの間には、埋めることのできない谷間が拡がっている。そしてなんとなくではあるが、この美尻パンツからはイヤらしさを感じたがゆえに直感的に「これはいかん」と思ったのだろう。


これが「ちょい悪オヤジ」系のトレンドだとすると、相当に悪趣味だとも思う。この美尻系のパンツは、どれもかなり締め付けがきついらしい。そうじゃないと、たるんだお腹とかお尻をぎゅっと締まりよく見せることなどできないからだろうが、それって反動とかもあるでしょうに。


お腹とかにぎゅ〜っと食い込んだゴムの跡とかが残ってたら、これはかなり恥ずかしくないか。あるいは、そもそもそんなに締め付けていたら、苦しくはないのか。などといらぬ心配をするわけだが。そんなものをはいてまで外面だけよく見せようという性根が、やっぱりいちばん気に入らんのだな、きっと。


だからといって別に体型が崩れている人みんなに、走れとかダイエットしろとか暴論を吐くつもりはない。でも、そもそも、なんでお腹が出たり、お尻がたれたりしたのかは、ちょっと考えた方がいいと思う。体の変化はかならずその内側で起こっていることが表に出てきているわけで、要するに何らかの信号である。もちろん自然な老化はあるのだけれど、普通に暮らしているのなら、病気でもしない限りそれほど醜い体型の変化は起こらないものだ。動物がそうでしょう。


だから、もしお腹がポコんと膨らんできたり、お尻がぶよっと下がってきたりしたら「こりゃいけん。美尻パンツはいて、カッコよく見せないと」と思うんじゃなくて「あれ、どっか体の具合が悪いかな」と医者にでもいった方がいいのだ。


それにしてもマーケティング的には、この日経の記事は痛いだろうな。タイトルからして『オヤジが漁る「美尻パンツ」』ですよ。しかも黒メッシュのかなりグロい写真を大きくあしらったレイアウトになっている。これってもしかして、この記事を書いた谷川博記者の思いが相当にこもっている記事なのかもしれない。


昨日のI/O

In:
『態度が悪くてすみません/内田樹
Out:
フリーペーパー・レストランガイドコピー


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