新しい『SIGHT』の過激さ

SIGHT (サイト) 2006年 07月号 [雑誌]

SIGHT (サイト) 2006年 07月号 [雑誌]


雑誌『SIGHT』が全面リニューアルとなった。


まず版型が変わった。文芸春秋と同じサイズである。以前のいわゆる雑誌サイズから比べると、ずいぶんとコンパクトになっている。正確に面積で比べると
旧:210×275(ミリ)×184(ページ)=10,626,000(平方ミリ)
新:148×217(ミリ)×240(ページ)=7,70840(平方ミリ)


総面積で見れば30%ぐらい減っているわけだ。その理由ははっきりしていて、新しい『SIGHT』にはカラー写真がほとんどない。以前のそれがヴィジュアル総合誌をうたっていたのに比べれば、その差は歴然としている。


さらに驚くべきことがある。


なんと、新しい『SIGHT』には広告がない。「ない」と言い切ってしまうと誇大表現になってしまうか。正確には表二・表三・表四が全ページ広告となっているが、それ以外の本文中に広告はゼロである。


なんという潔さか。


定価は据え置きで780円のまま。印刷屋的な計算をすれば、旧バージョンはカラーページが多く、また用紙もカラー写真が映えるようにとコート系の紙を使っている。当然、印刷コストは高くついていただろう。これに対して新版は、最初の数ページを除いてオールモノクロである。用紙は文芸春秋などよりは、白くて文字を読みやすいモノを使っているから、ここは少しコストアップになっているとはいえ、トータルコストは下がっているはずだ。経費削減で何とか採算が合うのか。


にしても広告を取らない、広告に頼らないというビジネスモデルは、まるで『rockin'on』の創刊時と同じスタイルではないか。あの頃は広告を取りたくても、スポンサーがいなかった。しかし、今やそんなことはあり得ない。渋谷陽一氏が発刊する雑誌である。取ろうと思えば、いくらでも取れたはずだ。しかし、広告は取らなかった。


そのスタンスと、今回のリニューアルの方向性はおそらく密接につながっているはずだ。今後『SIGHT』は「より時事・社会問題に焦点を当て」ていくとある。巻頭言で渋谷氏は「切り口はシンプルである。常に知的で批評的でありたい」と述べている。書かれてはいないが、そのスタンスは相当にラジカルなものとなるはずだ。だから、これは渋谷氏の挑戦なんだと思う。


これだけ知的で批評的なテキストの詰まった雑誌が、売れないはずがないと。本来の雑誌販売収入だけで、十分に回るはず、あるいは回してみせるといった意志があるのではないか。もっと深読みすれば、この雑誌がどれぐらい売れるかで、日本の知的現状の何かを測ろうとしているのかもしれない。


同じく巻頭言で、ニール・ヤングの次のような言葉を引いている。
「人々がこのアルバムを聴いて、何を考えるかはそれぞれの人次第である。そして私も言いたいことを自由に言える。私たちはこの点を見失っているように見える」。アルバムを雑誌に変えれば、そのまま渋谷氏の思いと重なるはずだ。


リニューアル第一号の特集テーマは「小泉靖国参拝で日本は何を失ったか」である。少なくとも内政については改革の立役者であり、いざなぎ景気を超えるといわれる景気回復を成し遂げた小泉首相の、負の側面にあえてフォーカスを当てている。


しかも本文を読めば、日本側の思惑だけではなく、中国側の思惑にまで目配りをした記事がある。中身を詳しく書くことは控えるが、たとえば「中国側にも小泉首相靖国参拝を望む勢力がいる」などと複眼的な思考のテキストがある。


読んでおもしろい雑誌。ちょっと背中がゾクゾクするような刺激的なテキスト。これは「買い」だと思う。この雑誌を読んで「ああ、そうか」とただ納得するのではなく「なるほど、そんな見方もあるのだな」と自分の頭を修正し、そして自分で考える足がかりを得るために。





昨日のI/O
In:
『SIGHT vol.28』
Out:
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学習支援ソフトマーケティング計画書



昨日の稽古:
 カーツジョグ
 レッシュ式腹筋・腕立て(肩甲骨)伏せ