高血圧とどう闘うか


191〜137/125〜91


左が緊張期、右が弛緩期。私の血圧の話である。高いときで上が191、下も125ぐらいある。かつて巷の女性たちの間では『三高神話』がもてはやされた。すなわち結婚相手に求めるものは高学歴、高収入、高身長であると。ひるがえって物心ついた頃から、基本的に何でも「おおき〜いことは、いい〜ことだ〜」で育ってきた世代である。当然、大きいことの中には高いことも含まれていると信じて生きてきた。


すなわち小学校時代のテストの点数に始まり、バレンタインでもらうチョコの数(これは中学校に入って以来途絶えたが)、大学受験時代は偏差値と続き、就職に望んでは給料の高さや知名度の高さを求めた(残念ながら、この辺りから個人的には様子がおかしくなる)。


以降、社会人となってからは給料や役職の高さが目標となり、自営業となるに従って一本あたりのギャラの高さとなったぐらいで、やはり大きいこと、高いことは『善きこと』のバロメーターだったのである。


しかるに30を過ぎた頃から、どうも様子がおかしくなってきた。


とりあえず32のときである。「あなた、このままでいくと早死にしますよ」などと医者に脅かされた。『高けりゃいいってもんじゃない』第一号は、肝臓の状態を表す数値γーGTPである。アルコール摂取量が多くなると、この数値も比例的に増えていく。で一応の目安が100らしい。これが第一危険水域だ。俗称「ワンハンドレッドクラブ」などともいう。


まだうぶだったこともあり、即刻断酒した。意志薄弱なるがゆえにわずか一ヶ月の断酒に終わったが、これで一挙に正常値に復活である。「なんや、あの医者、脅かしやがって。γーGTPなんて、すぐ下がるやないか」とばかり知恵がついてしまい、お酒とはその後も付かず離れず、というよりは、ややべったり目の付き合いを続けている。


次は忘れもしない息子の小学校での献血に望んだときのことである。


たまには献血でもして世の中のお役に立とうと思い立ち、小学校の体育館に赴き、まずはと血圧を測っていただいた。すると、どうも様子がおかしい。「血圧測定器が壊れているようなので、別ので測り直しますね」などといわれ、測ること三回。何度やっても看護婦さんが首をかしげている。「どうしたんだですか」とたずねると「おかしいんですよ、血圧が異常に高いんです」と。


このときはそれほど深く追求せず、献血もできずじまいに終わった。ちょうど、そのころ空手の打撲に耐えられる体に鍛え直そうと一念発起し、近くのフィットネスクラブに通っていた。そこでもトレーニングをするまえに自分で血圧を測るのである。だいたい200〜120とかの数字になる。この機械も壊れてやがんなあなどと思い、あまり気にしていなかった。


ところがある日、我が師(この人も、勝手にこちらが師と思っているだけだが)・中島らも先生の『牢屋でダイエット』を読んでいると、らも先生がクスリが見つかって収監されたときに、血圧が200を超えて危なかった、などという下りがあった。「!」である「?」である。


オレって、もしかしてヤバいのか。


と思い、血圧計を買って記録を付けることにした。すると安定的に冒頭のような数字になる。さすがにちょっと心配になって医者に相談すると「あんた、頭痛くなったりすることないですか。この数値だと重篤患者の領域ですよ。これでさらに血圧が上がるようなことしたら、いつ血管破裂してもおかしくない。そうなったら、よくて半身不随、下手したら死にますよ」などと、また脅かされてしまった。


『高けりゃいいってもんじゃない』第二号である。え〜ん、である。


実は空手をやっていて、それもフルコンタクト系で、さらには筋力を付けるためにカーツトレーニングもやっていて、足の根元を思いっきり締め上げて坂道ダッシュとかしてるんですけど、と打ち明けると、お医者様はひと言
「えらい。まさに命懸けで強くなろうとしておられる。しかし強くなる前に、確実に死にますね」。


無酸素状態は血圧を上げる。極度の緊張は血圧を上げる。おまけにカーツは血圧を上げる。カーツしてダッシュは血圧を上げる×血圧を上げる×血圧を上げる・・・。やっちゃいけないことのオンパレードだそうだ。ということでドクターストップである。教えるぐらいならまだしも、気合いをいれての稽古ダメ、組手もちろんアウト、筋トレも薦められない、カーツ論外。


とりあえず薬を飲んで血圧の様子を見るべし。下がるまではおとなしくしなさいということになってしまった。だから、できることは散歩、軽い筋トレ、ストレッチぐらいか。あとは立禅とか、もしかしたら太極拳みたいなことだったら大丈夫なのかもしれない。


ショックである。ショックではあるが仕方がない。これも天の声と受け止めて、血圧を上げずに体(というか心の方がめいんになりそうだけれど)を鍛えることにしばらく集中しよう。



昨日のI/O

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NTTドコモキッズケータイ関連インタビュー
『身体を通して時代を読む/内田樹×甲野善紀
Out:
トレーサビリティ・インタビューメモ
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