腕時計とケータイの微妙な関係


装着率は46%まで低下。小売り総額は前年対比8%増


腕時計の不思議な統計がある。腕時計をする人は確実に減っているようだ。装着率で見れば97年70%だったのが、05年には46%にまで低下している(セイコーウォッチ調べ・日本経済新聞7月6日)。日本メーカーの腕時計の国内出荷個数は、この10年で3分の1にまで減っているそうだ。


にもかかわらず小売り総額は増えている。この間のエントリーでも取り上げたように、高級腕時計が売れているからだ。
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060701/


そして、もはやこうした高級腕時計に求められているのは本来の価値=時を計ることではないようだ。だって高額の腕時計を身につけているのに「正確な時間を知りたい場合は携帯を見る」そうだから。あれま。こうした変化の原動力となっているのがケータイである。


仮に腕時計のアクセサリー化が進んでいるとしても、正確な時間を知ることに対するニーズがなくなったわけではない。誰だって「いま、何時なのか」は知りたくなるときはある。変化したのは時間を知るツールについての選択肢である。それが腕時計に加えてケータイが加わった。


といわれてみれば自分自身も海外に行くときだけは腕時計を付ける。やはり時間を知る必要に駆られてのことで、国内にいるときとの違いはケータイを持っていないってことだ。ということは私にとっては『ケータイの腕時計化』が起こっているわけで、同じことが他の人にも起こっているのだろう。だから本来の機能である「時を計る」必要性が求められなくなった腕時計はアクセサリー化した。


腕時計がアクセサリーとして認知された背景には、たぶん時計メーカーのPR戦略があったり、その戦略に基づいた広告(特に雑誌とのタイアップ広告、つまり『LEON』なんかがよくやってる、もてるオヤジはゼンマイ時計だかなんだかみたいな記事ですな)も効いているはずだ。


ま、それは本題と少しそれる話なのでおくとして、ポイントはケータイの腕時計化である。最近、ケータイで便利に使っている機能が、実はアラームだったりする。時間をきっちり切りたいミーティングの時などは、終了時刻にアラームが鳴るようにセットしておく。すると、これがなるのをキッカケに「では、そろそろ」と時間を切ることができる。


つまりケータイは電話であり、メールを使えるツールであり、ネットにつながるデバイスであり、カメラであり、時計であり(アラームでもあり)、メモ帳であり、スケジューラーにもなる。決済ツールにもなっている。何を今さらといわれるぐらい当たり前のことではある。あるのだけれど、こんなツールを24時間身につけるようなことは、人類の歴史が始まって以来初めてのことでもある。


しかも、やはりケータイの超・小型パソコン化も進みつつあるようで、ウィルコムが発表した新しいPDAは、ケータイに引き出し型のキーボードをつけたようなスタイルになっている。
http://www.willcom-inc.com/ja/lineup/ws/007sh/index.html


これモニターは2.8型VGA(640×480)だから、いわゆるケータイよりは少し大きい。しかも一応、フルキーボードもついている。もちろんタッチタイプなどはまったく不可能だけれど、ケータイで親指入力するよりはうんとマシそうだ。で、ExcelやWordも使える。


これはパソコンをどんどん小型化していく発想とは反対のベクトルで開発された製品だと思う。つまりケータイをノーパソユーザーにより使いやすく進化させると、どうなるのか。その答えの一つとして提示された商品のように見える。


いま使っているauのケータイはそこそこ早く、しかもネットのサイトを見ることもできるので重宝しているのだが、それでも文字入力やサイトの見え方にストレスを感じざるを得ない。これに比べれば、このウィルコム[es]はなかなかに魅力的だ。しかも外付けキーボードもあるみたいだし。


ケータイの進化はとどまることを知らない。この先、何がケータイになれば便利なのかを考えれば、まだまだケータイの可能性は広がっていくのだろう。それにしてもこのウィルコム[es]、相当に魅力的だ。欲しい。これと似たような機種がauから出ないかしらん。




昨日のI/O

In:
『身体を通して時代を読む/内田樹×甲野善紀
Out:
トレーサビリティ・インタビューメモ

昨日の稽古:

昨日のBGM

昨日に終日、打ち合わせで外出のためBGMはなし。