士業ビジネスのハウツー


年間約2万4千人


医師国家試験を受ける学生は、毎年これぐらいいる。合格するのはだいたい8割から9割といったところか。だから、ごく大雑把な数字ではあるけれど、毎年2万人ぐらいの医師が誕生していることになる。


ところで医師といえば高額所得者である。実際に仕事の内容を考えれば、彼らの所得は高くて当たり前だと思う。中学・高校時代の同級生には医師になったのが全部で20人ぐらいいる(らしい)。たまに同窓会などで顔を合わし、その話を聞けば見事に激務だ。しかも責任は限りなく重い。人の命を扱う仕事の尊さを、今更ながら思い知る。


と考えれば看護婦さんの給料は安過ぎる。彼女たちも医師に負けず劣らずハードワークである。というか医師よりも労働条件は過酷ではないのか。それなのに医師と比べれば、その待遇は相当に落ちる。これではなり手が減っていくのも当然で、これは国が何とか対応すべき課題だろう。


さて。その医師が厳しい状況におかれている。競争が厳しくなってきている。親の病院を継ぐ場合はまだしも、一から新規開業していては、元をとれないのではないかといった話も出始めている。では、医師もひとつのビジネスとして割り切って考えた場合、どうすれば成功するのだろうか。これはいわゆる士業全般に通じる話でもあると思うのだけれど、実は彼らが成功するのは実に簡単ではないかと考えるのだ。


なぜか。
これまで士業だったから。


つまりこれまでは、客は患者や相談者(弁護士や税理士の場合ですね)といったポジションであり、片方が「先生」である。価値と対価の関係でいえば、対価を支払って価値を得る側が、いわゆる客のはずなのだが、士業の場合は客がまともな客扱いを受けていない。これは根本的におかしい。客側からすれば言葉にできない『不』が溜まりに溜まっているはずで、ここを変えればいい。


とはいえ別に客だから偉そうにしていいという話ではない。客は対価を支払うことにより価値を得るわけだが、医師の側でも対価に見合うだけの価値を提供しているのだから、お互いの立場は基本的にはフィフティフィフティである。まずこの原則に立ち戻ったお医者さんは、それだけで患者さんから圧倒的な好評を得るだろう。


さらに医師をサービス業と考えられる人が出てくるとどうなるか。つまり自分たちが提供している価値の本質を考えるお医者さんなら、どんな行動をするかという話だ。それは決して待合室を豪華にしたりといった上辺の(しかもムダにカネのかかる)話ではない。


患者は基本的にどこかが悪くて苦しんでいるのだ。だから、まずは待たせない工夫があって然るべきだろう。ということは予約〜診察の進み具合を確認できるシステムがあれば、患者にとっては大いなる福音となる。そしてこんなシステムはいまどき、電話で簡単にできる。私の通っている内科でも2年前ぐらいから導入されている。おかげで待合室で長い間待たされることはない。


待たされなければ、特に内科では気になる院内感染のリスクもぐんと減る。これである。あるいは処方箋をあらかじめ薬局にファックスしてくれるサービスもある。もちろん、どの薬局を選ぶかを患者に確認してからのことになるが、これまた薬局で待たされることがない。


と考えてくれば、これまで病院ではいかに「待たされる」時間が長かったことか。待たせない、イライラさせないのはサービス業のイロハのイではないか。これがきちんとできるだけでも、病院間の競争の中ではかなりのアドバンテージになるだろう。


次は接客である。窓口で受付をするのは、別に看護婦さんである必要はないのだから、とにかく愛想のいい人を雇う。といった具合でサービス業をモデルに考えればアイデアは出てくるのだけれど、医院モデルには一つだけ致命的な制約条件がある。


それは患者さんを診るのは、あくまでもお医者さんに限られるということ。ここで手抜きをすれば、元も子もない。が、一人あたりの問診に時間をかけすぎれば、生産効率(という表現が当たっているかどうかは疑問だが)が落ちる。これはなかなかに解消しづらいジレンマだ。ということでこれからは、一人の医師が開業するのではなく、気の合う医師同士が弁護士事務所のようにパートナーを組んでやっていく。そんな形態がありなのではないだろうか。

昨日のI/O

In:
孫子
『算数・数学が得意になる本/芳沢光雄』
Out:

昨日の稽古:

・立禅

昨日のBGM

Another Green World/ENO
Bundles/Soft machine
Vanessa Paradis/Vanessa Paradis

Another Green World

Another Green World