読書は空手の役に立つか


マンガもいれると200冊以上


空手、拳法関係でこれまで読んで来た本の数は、ざっとこれぐらい。その一番最初はたぶん、ベースボールマガジン社が出しているポケットサイズの『空手』だったと思う。これを買ったのが現役で阪大の試験に落ちてしまい、宅浪を決めた時だ。


予備校に通わないということは、よほど自己管理をしっかりやらないと夜昼逆転生活になったり、そこからどんどん生活習慣がルーズになっていく恐れがある。だから嫌でも毎朝早起きしなければならない新聞配達のバイトをやることにし、ついでに体も鍛えようと家で空手でもやってみるかと。そんな動機があった。


といっても別に基本稽古を一生懸命にやったというわけでもない。そんなのわからないわけだし、とりあえず空手といえば、カッチョいい蹴りといったイメージがあったから、前蹴りだけを一生懸命やっていた。あとは「なるほど、鉄の拳を作るためには拳立てをやらんといかんのだな」とばかりに試してみて、とんでもない痛さに速攻挫折したり。


そして『空手バカ一代』と出会う。19の時である。


小学生の頃にリアルタイムでテレビを見ていた世代である。田舎の本屋で、これが32巻(だったと思う)揃っているのを見つけた時には、何だかすごく得をした気分になった。新聞配達のバイト代でドカッと買い込んで一気に読んだ。この頃からである。とりあえず空手関係の本を読めば、読んだ後で何か自分が少しだけ強くなったような錯覚をするようになったのは。


このマンガは今にして思えば、相当に荒唐無稽なことが書かれていたのだが、それでもまだ十代の素直だった自分にはものすごい影響力があった。「拳立ての一つもできんでどうする!」なんて鼻息も荒く再チャレンジし、痛みそのものは以前と変わらないのに、気持ちで克服してしまったりした。おかげで最初の間は拳頭がボロボロになっていたが。


あるいはとにかく山の中を走らんといかん、などと思い込み、当時住んでいた滋賀県の家の近くの丘陵の中を走り回ったりした。なんと単純な頭脳回路だこと(と考えてみるに、その回路のシンプルさは今でもほとんど変わっていないような気もするが)。


マンガの次は本である。


大山倍達氏の本を手当たり次第買った。ちょうどそのころ(ほぼ30年前)は『地上最強の空手』という映画が公開されたり、ちょっとした空手ブームとなっていて、大山氏の本はぜんぶで10冊ぐらいあったんじゃないだろうか。それをほとんど買って読んだ。書いてあることはだいたい同じだったけれど、中には大山先生が山ごもりをした時の稽古記録メモがあって、これを真似しなきゃなどと思ったりもした。


大山氏の本を読みきると、次は自然と極真関係者の本にたどり着く。まずは黒崎健時氏である。たしか『必死の心、必死の力』だったか。異常なまでに自分をいじめ抜いて、それに打ち克つ精神力を養おうとする姿に感銘を受けた。はっきりとは覚えていないが、10日間飲まず食わずで過ごすとか、あるいは土の中に穴を掘ってそこから空気取りのパイプだけを地上に出して、穴の中に何日かいるとか。そんなエピソードが強烈で、今でも覚えているぐらいだ。


続いて芦原、山崎、添野氏らの自叙伝のような本を読み、真樹日佐夫氏のほとんどノンフィクションの様な小説を読んだ。これにはかなり具体的なトレーニング方法が書いてあったので、それを真似して一日二時間ぐらいやったり(暇を持て余している学生だからできたんですけれど)。真樹氏は『地上最強の空手』の中で、抜き手で畳を突き通すなんて技を披露していたのが頭にこびりついており、あれを真似するには指立てじゃ、とまたせっせと指立てに励んだりもした。


そのうち、もう少し学術的な空手関係の本はないかと探しているうちにたどり着いたのが松田隆智氏の中国拳法関係の本である。ほぼ同時期に『男組』なるマンガにハマっており、この中でヒーローが使う技が太極拳だったり八極拳だったりしたせいもあって、次は中国拳法に走った。なにしろ謎の拳法なのである。しかも八極拳などは空手が失ってしまった一撃必殺を実践しているのである。


これをやらねばと思っていると、あら不思議、極真関係でも廬山氏の本に出会った。ここでは太気拳なる中国拳法との出会いが書かれているではないか。しかも、その稽古方法たるや、立禅である。ただ立っているだけなのである。これぞもしかして空手関係の本を読み始めた時、どこかで出会った『立ち方三年、握り方三年、歩き方三年』の極意と関係あるのではと思い、せっせと真似することにした。


これまた暇な学生時代のことである。毎朝、近くの公園に出かけていっては、人目につかないところで15分ぐらいボーッと立っていた。立ったあとには、一応「這い」の真似事もしてみたりして。そうやって、人からきちんと学ぶことなく、ひたすら本やマンガを読み、それを教科書として空手の真似事をしていたのが10代後半から大学を卒業するまでのことである。その間にどこかの道場にでも通い、少しでもきちんと学んでいればと後悔するが仕方がない。


社会人になって以降の続きはまたの機会に。

昨日のI/O

In:
Out:
ラジオ沖縄・取材メモ
メルマガ

昨日の稽古:

強くなれ!わが肉体改造論

松田隆智の拳遊記―最強の拳技を求めて、中国武術の世界をゆく

松田隆智の拳遊記―最強の拳技を求めて、中国武術の世界をゆく