空手のための読書・パート2


小説、マンガ、指導書(?)


社会人になってからは、読む傾向が少し変わった。空手家の伝記めいた本をいくら読んでも、基本的には自慢話のオンパレードであまりおもしろくないのである。そこで小説ならどうかと。ところが空手、拳法関係の小説となると、これがまた極めて限られてしまう。きちんと書ける人が少ないのだ。せいぜい昨日紹介した真樹日佐夫氏ぐらいしかいなかったのだが、30歳前後に突然、二人の作家と出会った。


一人が夢枕獏、もう一人が今野敏である。


夢枕獏氏はもともとSF系の作家だったが、本人が格闘技ファンということもあって、その手の小説も書くようになった。その代表作が『餓狼伝』だ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/餓狼伝


極真会館(や大山館長)、アントニオ猪木(と新日本プロレス)などをモデルに、なかに日本の古武術の話などもちりばめた小説であり、とくに格闘シーンの表現が斬新だった。いまにして冷静に振り返れば、やたらと擬音表現が多いことが気になるが、初めて読んだ時には、その冷酷なリアリズム表現も相まって「おぉ〜」と思ったものだ。


ストーリーにしっかりした芯が通っていたので、それなりに引き込まれる話にもなっていた。「これは、きっとあいつのことや」なんて思える配役、たとえば上田馬之助とか、藤原喜明とか、グレイシーとかをモデルにした人物をうまく散りばめていたのも、物語をうまく盛り上げるのに一役買っていたと思う。が、いかんせん話が長過ぎて、残念ながら全部を追いきれていない。もしかしたら、まだ新刊が出ているのかもしれない。


もう一方の今野敏氏は、自身が本物の武術家である。古流空手・常心門三段、空手道今野塾を主宰されている。今野氏の小説で初めてであったのは拳鬼伝シリーズ全三巻。自らをモデルにした古流空手の達人が、八極拳の使い手、総合格闘技系のファイター、剣道家、さらには隠岐に伝わる古武術などと闘う。
http://ja.wikipedia.org/wiki/今野敏


武術家と小説家。この二つの才能を持つ人物は、滅多にいない。しかもどちらもレベルが高く、その上でバランスが取れている人物などは恐らく、この人しかいないだろう。そういう人が武術をテーマにした小説を書くとどうなるか。


単純な表現で申し訳ないが「めちゃくちゃおもしろい」のである。しかも、こちらもほんの少しだけ空手をかじっている。幸いなことに自分の流派は、塾長が理論派だから武術の理をある程度、解いてもらってもいる。だから、今野氏のいわんとしていることがよくわかるのだ。


あまりにおもしろいと思い、ネットで「今野塾」を検索してみると大阪でも稽古をやっているではないか。これはと思い、実は空手を始めた5年前に一度、稽古させてもらいにいったこともある。このときには今野先生直々に型を教わった。教わったけれども、こちらはまったくの初心者時代であり、何が何だかよくわからないうちに終わってしまった。


常心門の稽古は土曜日の昼にある。このときはこちらの稽古に参加して、大慌てで奈良に戻って自分の道場の稽古にも出て、「これはとても二つの稽古を一日にやるのは無理」とあきらめてしまった。


話がそれたが、今野敏氏の最高傑作は『孤拳伝』シリーズだと思う。香港で育った孤児が見よう見まねで身につけた形意拳、それもたった一つの技・崩拳だけを頼りに日本へ渡り、闘いの中で武術家としての成長を遂げていく。ストーリー全体の下敷きとなっているのはおそらく「宮本武蔵」だろう。そこに日本の古武術や極真などの現代的な空手、さらには中国拳法に琉球空手などの話が見事に組み合わされている。


全11巻、何回読み返しても発見がある。もちろん吉川・武蔵の方が、文章の味わいは深いのだが、それに負けないだけのストーリー展開の妙がある。武術的な気づきがある。


今野氏の小説では続いて日本の古武術をテーマにしたものを読んだ。『闘魂パンテオン』と『惣角流浪』。前者は島根県に伝わる古武術をテーマに、その業を極めた人物が前田明をモデルにした格闘家と闘う話、後者は合気道の祖とされる武田惣角の伝記っぽい話である。


特に後者は、丹念に日本古武術を調べて書かれており、武道の資料本としての価値も高い。一読の価値ありだと思う。そして、この今野氏との出会いは、塾長の教えをより深く(ほんとか?)理解する助けとなっており、さらには沖縄空手への興味を引き出すことになった。


ありゃ、まだ終わらなかった。ので、また続く(かもしれない)。



昨日のI/O

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昨日の稽古:

・レッシュ式腹筋、腕立て
・ノーマル腹筋、拳立て

餓狼伝 1 (FUTABA NOVELS)

餓狼伝 1 (FUTABA NOVELS)

惣角流浪 (集英社文庫)

惣角流浪 (集英社文庫)