不満こそ顧客確保の切り札


今日のエントリーはほんの少し宣伝モードです。すみません。


3.4%が59%に


NECパソコンの再購入希望率の変化である。2000年の調査ではほぼどん底にまで落ち込んでいたリピート希望率が、5年で約17倍にまでアップした。一体何が変わったのか。NEC製のパソコンが画期的に変わったわけではない。NECがこの間にやったのは、コールセンターの徹底的な充実である(日本経済新聞8月6日)。


ではコールセンターの役割とは、突き詰めれば何だろうか。


ひと言でいえば『顧客(つまり自社製品を購入してくれたお客様)』の『不』の解消である。パソコンユーザーの誰もが、パソコンをノントラブルで使いこなせるかといえば決してそんなことはない。Windows95登場以来の10年でユーザーリテラシーの大幅なアップは間違いないところだろうが、一方では団塊世代を始めとしてエントリーユーザー層も増えているのだ。パソコンを買ったはいいが・・・的なユーザーだってたくさんいるだろう。


こうしたユーザーがパソコンを使う時には、それこそ『不』が次から次へと出てくるはずだ。それを放っておくと「なによ、もう。このパソコン(=NEC)は! 本当に使いにくいわね」で終わってしまう。ところが、「どんなささいな不具合、不都合に不便、不満でもどうぞお気軽にご連絡ください」とコールセンターへの案内があって、そこで『不』を解消してもらったお客さんはどうなるか。「NECってなかなかいいじゃない」となるわけだ。


はけ口へのアクセスが簡単でなければ、不満を持ったお客様が自らそれを知らせてくれることは滅多にない。不満客の圧倒的多数はサイレントクレーマーである。これは以前のエントリーでも書いた『サイレントクレーマー1対9の法則』が当てはまる。だからコールセンターへのガイドは徹底的にわかりやすくすべきである。ちなみに同じエントリーに書いたもう一つの法則『悪口10倍増の法則』もたぶん、みなさん納得されるんじゃないだろうか。
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060617


経営者にとってサイレントクレームほど、恐ろしいものはないのだ。


せっかく自社製品を選んだ顧客を、固客化できないとなれば、経営的にはこれほど非効率な話もないだろう。なぜなら新規顧客開拓のためのコストと、既存顧客維持のためのコストを比べてみれば、どちらにコストがかかるかは誰でもわかるぐらいはっきりと差が出ているのだから。業種・業態によって微妙に違いは出るだろうが、新規客開拓コストは既存客維持コストの5倍から10倍はかかるのだ。


ということは次のような試算が成り立つ。すなわち仮に予算が100万あったとする。そして新規開拓コストが一人あたり50万だとしてみよう。すると予算全額を使って獲得できる新規客は2人である。一方、この予算を既存客維持のために使えばどうなるか。同じ予算を使って最低でも10人、うまくいけば20人の顧客を維持できることになる。であれば既存客に対してFSPなどのメリットを還元したとしても、十分に採算は合うだろう。


そして、こうした『不』の解消による顧客維持策は、何もBtoCビジネスに限った話ではない。むしろBtoBビジネスの方がフィットする。たとえば新規顧客を一社獲得するためには、一体どれだけのコストが投入されていることか。専門誌に広告を出し、あるいは展示会に出展し、何とか接点を持つことができた顧客候補に対して、地道に営業をかけていく。その過程では膨大なコストがかけられているはずだ。


そうやってようやく開拓できた顧客に対して、顧客維持のためのコストがどれだけ予算化されているだろうか。定期的な営業訪問や接待などは組まれているかもしれない。そうした関係の中で、顧客の要望を掴む努力もなされているのだろう。が、ポイントは顧客の『不』を掴めているかどうかにある。


この顧客の『不』が恐ろしいのは、それが『時限爆弾』と化することだ。しかも営業マンと顧客窓口の関係が一見良好なケースほど、この爆弾は顧客内部で潜行し大型化しやすい。そうなってしまうと、いざ爆発した時には壊滅的なダメージをもたらすものとなってしまう。これを防ぐためには、日頃から顧客の『不』をいかに的確に掴むかが勝負になる。


顧客の『不』は何もネガティブな結果だけをもたらすわけでもない。むしろ顧客の『不』こそは、新製品・新サービス開発から自社の業務改善に至るまであらゆる側面に応用できる『宝の山』でもある。顧客の『不』がどれだけ多くの新製品につながっていることか。より正確に表現するなら、およそこの世に生まれてくる新製品、新サービスのほぼすべては、既存顧客の何らかの不満解決をヒントとしている。


まさに「顧客『不』はアイデアの素」なのである。


特にBtoB企業のための顧客不満足度調査の詳細が下記にあります。関心をお持ちの方はぜひ。
http://com-lab.com/NewFiles/ceresearch.html


また顧客の『不』がアイデアにつながった事例集は下記に。こちらもぜひ。
http://com-lab.com/NewFiles/mmagbkn.html



昨日のI/O

In:
『IDEA HACKS/原尻淳一・小山龍介』
Out:
自社商品販促ツール


昨日の稽古:学園睦会館

・基本稽古
・型稽古(平安初段)
・ミット稽古

昨日のBGM