YouTubeがテレビCMを破壊するとき


動画投稿サイトではなく、動画検索サイト


YouTubeをこう捉え直した時に見えてくるものがある。つまり世の中のテキスト情報をすべて網羅するのがGoogleだとすれば、世の中の動画情報をすべて網羅しようとしているのがYouTubeではないのか。


Googleは独自の評価システムでサイトを判断し、それを検索結果に反映させることで検索システムとして決定的な評価を得た。と同時にロボット検索で日夜、世界中のサイトをくまなく検索し、バッヤードに持つデータ量の膨大さで、検索精度を常に担保し続けている。


要するにどれだけたくさんデータを集め、それをどれだけ正確に分類するか。その裏付けとなっているのが、超一級の頭脳を集めて実現したコンピューターサイエンスでもある。


ではYouTubeはどうなのか。

YouTubeシリコンバレーベンチャーで、セコイアがバックについている。従業員35人。行ったことはないが、ピザ屋の二階にオフィスがあるらしい。
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060628/p1


基本的に博士号を持った人物を優先的に採用するGoogleのようなリクルートはしていないらしい。なぜならGoogleはコンピューターサイエンスを駆使したモデルだけれど、YouTubeは特に革新的な技術は見当たらない。動画をどんどん投稿してもらい、投稿された動画に適当なタグを付けてもらって分類する。あとは検索キーワードに応じた動画を表示して行く。基本的にはこれだけだ。


だからYouTubeの技術的な問題は、データ量の多い動画をいかにスムーズに処理するか。基本的にこの一点に絞られるのだろう。コストも含めて、この課題をクリアしてしまえば、あとはどれだけたくさんの動画を網羅できるか。ここで二番手が追い付けないだけの量を確保してしまえば、圧倒的に優位なポジションに立つことができる。


そのためにはとりあえず著作権問題を無視はしないけれども(だから指摘されたら問題ビデオは削除するけれども)、入り口で余計なハードルを設定しないことにした。自分が投稿したビデオがすぐにサイトアップされる。この簡便さが動画投稿ユーザーを引き寄せる。何しろ問題は、どれだけたくさんの動画を集められるかにかかっているのだ。著作権がどうのこうの言ってられないのである。


ここがGoogleと根本的に異なるところである。Googleが検索対象とするのは、ネット上に『すでにある』データ、しかもそのほとんどがテキストデータである。ところがYouTubeの対象となるのは、まだネット上にはそれほどたくさんあるわけではない動画データである。


ということは動画データについて検索サイトを作ろうとするなら、最初に数を集めたものの勝ちなのだ。その意味では、YouTubeについて閲覧者の数がよく話題になるけれども、YouTubeのビジネスを占う上では閲覧者は二次的な問題であり、何より重要なのはどれだけの数の動画が集まってきているか。これこそが決定的なポイントである。


それが昨日のエントリーでも書いたように、一日に6万5千本だという。しかもまだまだ増え続けている。圧勝である。これに対応できるようシステムを増強するのが大変だとは思うが、このモデルはAmazonと同じと考えていいのだろう。つまり、当初はシステム投資が膨大な額に上るために赤字が続くとしても、いつかは必ず利益が出るモデルだということだ。


では、YouTubeが動画検索のデファクトになった時にどんなビジネスモデルが考えられるのか。そのビジネスモデルは、どんなマーケットを対象としているのか。


ズバリCMだと思う。狙っているマーケットは、既存のテレビCMマーケットを丸々狙っているのだと思う。テレビCMが衰退傾向にあることはもはやほぼ自明の理。最近『テレビCM崩壊』という本が話題になっているが、TiVoの調査をしているときからすでに、テレビCMがいずれダメになるだろうことは予測がついた。その理由は費用対効果がはっきりしないものに、いつまでもスポンサーがコストをかけるはずがないからだ。


テレビCMがダメなのは、不特定多数を相手にしているからである。しかもその不特定多数がテレビをリアルタイムで見なくなる=CMはたいていすっ飛ばしてみるようになれば、CMなんて意味がなくなる。そこに満を持して登場するのがYouTubeじゃないんだろうか。


しつこいけれどYouTubeは動画検索サイトである。ということはユーザーは自分が関心を持っているキーワードに引っ掛かってくる動画を見たいからYouTubeにやってくる。検索結果の上位に表示されれば、見てもらえる率はかなり高い。この場合、Googleのように別枠で広告を表示する必要もないだろう。


だって、創り方によるけれども、そのビデオを見終わるまでは、ユーザーにはそれが広告なのかどうかはわからないのだから。そして仮にそれが広告だとしても、ユーザーの関心を持っているキーワードからずれていない映像作品であれば、ユーザーはそれを見るために費やした時間をもったいないとは思わないだろう。


これがYouTubeの目指しているビジネスモデルではないのだろうか。
そして、このモデルはテレビCMを決定的に破壊し尽くすモデルになるのではないだろうか。


昨日のI/O

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