絶対基準のすごさ


合格率1.44%


受験者1300人あまりに対して、合格者わずかに19名。今年五月に行われた剣道の八段審査の結果である。ちなみに司法試験の合格率が3%ぐらいだから、もしかしたら日本でもっとも合格することが難しい審査が、この剣道八段審査といえるのかもしれない(日本経済新聞9月5日)。


この審査のすごいところは、誰かと誰かを競わせてよくできたかのはどの人、といった形で判断する相対審査ではないこと。つまりはじめに基準ありきで、それを超えているかどうかの一点のみで判断する絶対審査となっている。ということは、剣道には八段合格者はかくあるべしという基準が明確に定まっていることになる。当然、八段に至るまでの各段位審査でも基準ははっきりとしているのだろう。これはなかなかすごいことですよ。


ネットで少し検索してみると、審査は実技、形、筆記試験と続くようだ。実技では相手との対戦もある。ただしそこでもポイントは勝ち負けではなく、技のレベルが要求水準を満たしているかどうかが厳しくチェックされている。さらにはたとえば「間合いとは何か、述べよ」といった筆記試験があって、これに20分ぐらいの時間をかけて答えなければならないらしい。


しかも審査を受けるためには、たとえば二段を受けるためには初段取得後二年とか、稽古期間が決められてもいる。ちなみに八段を受けるためには七段を取得後10年の稽古期間が必要だという。剣道恐るべし!


そう考えてみると剣道、柔道、空手道に合気道といろいろな武術があるが、おそらくは空手道だけが全国的に統一された段位基準をもたない武道なのではないか。柔道は講道館合気道はどうなっているの詳しく知らないけれど植芝先生が定めた規定があるものと推察する。ところが空手だけはバラバラだ。このあたりが空手が他の武道からいわれもなく低く見られたりする所以なのだろうが、逆にいえばそれだけ空手は新しいというか成長過程にあるというかゲリラ的というか、そういったところが魅力だとも思う。


他の武道のことを知らない人間がとやかくいうのは憚られるが、ルールが技を規定する原則は、どの武道にも当てはまるのではないだろうか。でもないのかな、もしかしたら。などと考えると実は合気道や剣道には興味津々だったりする。とはいえ空手一つ満足に稽古できない身で、あれもこれもと手を出すのはどうかと自分を戒めている。


ちなみに空研塾の審査では茶帯、黒帯(初段)について、とてもクリアな基準が定められている。それによれば茶帯は十人組み手である。この人数はたしか極真空手なら初段審査だったはずだ。では、なぜそんなに厳しい審査をするのかといえば、連続十人と組み手することにより脳を酸欠状態に追い込み、その状態でなおかつ技をきちんと出して反応できるかどうかを見るためだ。


つまり一々、脳で判断して技を出すレベルでは茶帯とはいえないのである。そうではなく体に技が刻み込まれていること、だから意識朦朧状態でも正しく技を出せることが求められる。これは相当に厳しい。だから値打ちがある。


さらに黒帯審査では数こそ五人と減るものの、今度はその五人との組み手がすべて異なるルールで行われる。掴みありだったり、顔面がありだったり、最終的には何でもありだったり。こうした審査体系が作られた背景には、やはりルールが戦い方を規定する側面が否めないこと、だからこそ武道家としての黒帯にはルールの枠にはまらない強さを求められるといった塾長の考え方が強く反映されているのだろう。


何とか茶帯、取りたいものである。


昨日のI/O

In:
『流浪空手/芦原英幸
Out:
加藤晃規先生インタビューメモ

昨日の稽古:

・レッシュ式腹筋、腕立て
・スロートレーニング式スクワット