iPodは映画関連ビジネスに革命を起こすか


30分&1000円


映画一本をダウンロードするのに必要な時間とコストである。AppleAmazonが映画のネット配信サービスを始めた。これはもしかしたら、映画産業に対してとんでもない影響を与えることになるかもしれない。


タイミングよくHiroshi Yamaguchiさんが『小画面革命』と題したエントリーを書かれている。
http://www.h-yamaguchi.net/2006/09/post_8489.html


これを読むと、ユーザーサイド、メーカーサイドの双方に大きな変化が起こる可能性のあることがわかる。さらにメーカーサイドにはHiroshi Yamaguchiさんが指摘するほかにも、もう一つ大きな影響がある。


まずユーザーサイド。これは上記ブログに書かれているように、動画を持ち歩いて見るライフスタイルが生まれることが画期的なのだ。たとえるならウォークマンが、音楽を部屋から家の外に持ち出したのと同じようなライフスタイル革命が起こるのかもしれない。もちろん、これまでにも携帯用小型テレビで見たり、あるいは今ならワンセグ携帯でテレビ放送をみることはできる。


しかし放送された動画を見るのと、録画した映画を観るのとではコンテンツに対する関わり方が違うような気がする。表面的にはどちらも同じような時間消費になるのだが、その本質的な意味がちがうといえばいいだろうか。あるいは映画との関わり方が変わってくるといえばいいのだろうか。小型ポータブルラジオでラジオ放送を聴くことと、ウォークマンに自分の好きな音楽を持ち歩いて聴くことの違いである。受動と能動なんて言葉が浮かぶ。


うまく説明できないのだけれど、ウォークマンを例に持ち出すなら、ウォークマンが音楽との関わり方を決定的に変えてしまったようにiPodが映画との付き合い方を革命的に変化させる可能性があるということだろう。音楽は基本的に部屋の中、ステレオの前で聴くものだった。それが歩きながら、でも聴けるものとなることで、音楽と人との距離が一気に縮まった。音楽はいつでも、どこでも、好きなときに好きな場所で好きなことをしながら聴くことができるものとなった。


映画は聴くだけではなく見なければならないから、好きなことをしながらというわけにはいかない。歩きながら見る、というのもまあないだろ。だが、じっとしている空き時間に(たとえば通勤・通学がその代表だと思うけれども)映画を観る、なんていうライフスタイルは、これまでになかったものだ。映画は小刻みに見るものとなるかもしれないわけで、こうしたライフスタイルが定着することになれば、その影響は大きいだろう。見るコンテンツについても映画に限らないわけだし。


メーカーサイドに対しては、二つの影響が考えられる。マーケティング的にいえばプロダクトとプレースに関わる影響である。


まず第一にはプロダクト。これもHiroshi Yamaguchiさんが指摘していることだが、小画面で映画を観ることが一般的になったとき、映画の創り方がかわるのではないか。

小画面で見る人が増えてくれば、小画面でもきちんと見える作り方をするようになるはずだ。引いたショットは少なくなるかもしれない。セリフやナレーションが増えるかもしれない。ステレオヘッドフォンで聞くのがデフォルトだから、音楽や音響には凝るだろう。どうなるかわからないが、とにかくいろいろ変わるのではないか。

Hiroshi Yamaguchiさんは、こう指摘している。となると映画の創り方が根本的に変わる可能性がある。劇場バージョンと小画面バージョンの二種類を同時に作ることだって考えられるだろう。


もちろん、そうなればコスト問題が絡んでくるわけで、その場合はネット配信映画のプライスにも影響は及んでくる。


もう一つメーカーサイドにとって大きな、もしかしたら致命的な影響を与える可能性とは、映画の流通形態が変わってしまうことである。つまり映画をDVDを再生してみるのではなく、ハードディスクにダウンロードしてみるようになる。そのとき、何が起こるのか。


もろに影響を受けるのは、レンタルビデオショップと家電メーカーだろう。


まずレンタルショップは、サクッとスルーされることになる。今のところはネット配信なら5Mbpsぐらいのブロードバンド回線で一本映画を落とすのに30分ぐらいかかるが、こんなのはどんどん速くなっていくに決まっている。2〜3年先には一本5分もかからないようになるだろう。そうなればなんでわざわざレンタルショップまで行かなければならないのか。その理由がなくなる。


そして映画をDVDで見なくなれば、当然DVDプレイヤーも不要になる。いまDVDは次世代規格をめぐって、以前ビデオであったようなVHSvsベータのような対立が起こっているけれども、これがまったく不毛な争いに終わる可能性もある。


というぐらいにAppleの映画ネット配信、さらには映画を見ることができるニューiPodがもたらす影響は大きい(のかもしれない)。


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『格闘技「奥義」の科学/吉福康郎』
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