Curvesの急成長と時間価値の問題


260カ所、5万人


フィットネスクラブ『Curves』の現状である(毎日新聞10月8日)。つい2ヶ月前のエントリーでは

国内最大手で本家『Curves』と組んでいる『カーブスジャパン』が一号店を開いたのが昨年の7月のこと。これが1年で160店にまで増え、すでに会員数が3万3千人。といえばすでに国内でトップ10に入る(正確には7位ぐらいじゃないんだろうか)会員数である。そして年内300店、2010年には2000店を目指すという(日経MJ新聞8月2日)。
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060817

だったのが、今や展開事業所260カ所に達し、会員数も5万人である。


会員数5万人といえば、以前関わっていたフィットネスクラブ(業界ランキングで10位以内に入る)ところとほぼ変わらない。単純に会員数だけを比べてみれば、このクラブが20数年かけて獲得した会員数をCurvesは、わずか1年あまりで得たことになる。


ではCurves(に代表されるコンビニ・フィットネス)と従来型フィットネスクラブでは何が違うのか。Curvesは料金が安いとか、女性専用だとか、あるいはサーキットトレーニングだけとか、さまざまな要素が指摘されているが、根本的なポイントはユーザーバリューにある。要するにユーザーが得られる価値/対価バランスを考えると次のようになるのだ。


Curvesで得られる価値/得るための対価>従来のフィットネスクラブで得られる価値/対価、と考える人が多い(もしくは増えている)ということだ。


では、その価値と対価は何なのか。わかりやすい方から考えてみると、まずは対価である。Curvesは安いという刷り込みがあるけれども、フィットネスクラブの入会金、月会費をじっくりみれば、実はそれほどの差はないことがわかる。


たとえばウチの近くにあるフィットネスクラブでいちばん新しいところ(コ・ス・パ西大寺)と比べてみれば、ここは入会金が10,500円である。月会費はクラスによって違うけれども、デイタイム会員なら6,825円だ。一方Curvesは入会金が15,000円、月会費は6,000円である。Curvesの方が安いいえるほどの差はない。


それなら価値はどうなのか。これは個人差がある。どこを評価するかによってポイントは大きく変わってくる。たとえば施設面でいえば、コスパにはゆったりとしたお風呂やジャグジーもあるし、休憩スペースもある。プログラムだって豊富だ。もちろんプールもスタジオもある。


これに対してCurvesは基本的にサーキットトレーニング用のマシンがあるだけだ。プールはもちろんお風呂もない。味も素っ気もない。出かけていって30分、サーキットトレーニングやって、ハイおしまい、てなもんである。シンプルといえば、極めてシンプルだ。


だから、もしかしたら、このシンプルさがCurvesの価値を明確にしたのではないかと思い至った。Curvesが提供している価値は、健やかな/美しい体を得るためのサポートである。これだけに徹している。余分な要素は一切ない。


一方の従来型フィットネスクラブは、実にさまざまな価値を提供してくれている。だからお年寄りの中には「フィットネスに行く」とはいわず「風呂、入ってくるわ」といって出かける方もいる。実際、スタッフと適当に話をして、ゆっくりと風呂に入って、ラウンジでお仲間とおしゃべりしてるだけ、みたいな会員もいる。もちろん、それでいいのである。


いいのだが、いろんな人にいろんな価値を提供できるということは、焦点がぼやける可能性もある。これに対してCurvesは単純明快だ。この提供価値の明確さの違いは両者の現状の差を形成する一つの大きな要素だと思う。


さらに、もう一つ重要なポイントがある。それは所要時間だ。従来型フィットネスを最低限楽しもうと思えば、やはり少なくとも一時間は欲しい。ある程度体をしっかり動かして、お風呂にも入って、一休みしてとなるとたちまち二時間コースである。


ところがCurvesは30分限定、それ以上いても仕方がないのだ。先にあげた価値/対価バランスを考える時には、対価の中に時間コストが含まれることに注意しなければならない。忙しい現代人にとっては、まさにTime is Moneyである。時間をかけること=お金を使うこと。この原則を外してはならない。


だから所要時間が2時間vs30分となれば、時間コストだけを考えるなら30分は2時間の4分の1に過ぎない。いきおいCurvesの価値/対価バランスがアップすることになる。


これは相対的な観点だが、絶対値で考えてみてもやはりCurvesの方が圧倒的に有利ではないか。なぜなら、一日の中で2時間のゆとり時間を持てる人は誰か。リタイヤした人である。普通の人にとっては、それだけの時間をひねり出すことは相当に難しいはずだ。しかし30分ならなんとか捻出できるだろう。この点でもCurvesが有利なのだ。


もちろん今後は、団塊世代といったお金も時間も持て余す人たちが大量に出てくる。だから従来のフィットネスクラブがビジネスとして駄目になるとはまったく思わない。が、彼らを対象とした価値提供にシフトして行く必要はあるし、そうなると立地から考え直したり、あるいはそのコスト構造を変える(=提供価値を変える=人件費にコストを重点配分する=接客サービスの充実を図る)必要もあるだろう。


方や忙しい、しかし(それ故に)健康管理や体型などに気を遣う女性たちにとっては、圧倒的に価値/対価バランスが高い施設としてCurvesは支持されていくだろう。これはほぼ逆行することのないトレンドだと思う。


そして、ここで置き去りにされているM1層向けのこうした施設がきっと、次のビジネスチャンスになると思う。


昨日のI/O

In:
Out:

昨日の稽古: