中国が北朝鮮を見限る日


中国が北朝鮮への態度を硬化させている。


国境沿いに鉄条網を設置したり、定期便の運行を止めたり、さらには石油の輸出を減らし送金も止める。真偽はともかくとして、国境地帯で虎を放し飼いにするなんてニュースも出ている。
http://www.searchnavi.com/~hp/chosenzoku/news3/060926-9.htm


これまで中国と北朝鮮は、ほぼ一心同体と見られてきた。共に朝鮮戦争を戦った戦友として、その契りは限りなく固いと信じられてもきた。でも、それって本当だろうか。


たとえば朝鮮半島の人々とベトナムの人々を比べてみれば、どうか。


歴史を振り返れば、どちらも大中華から侵略を受けてきた人々である。中国王朝の盛衰に合わせて、中華王朝の領域に組み込まれた時期があれば、属国扱いされた時期もある。いずれにしても、その歴史には中国の支配を受けた時期がある。民族意識の根底には、反中国が流れているかもしれない。


朝鮮半島ベトナム地域も第二次世界大戦後、南北に分断された。北が共産主義、南が資本主義の国となり、同じ民族同士が互いに争った。不幸な歴史である。中国が支援したのは、いずれの場合も北。その結果、どうなったか。


ベトナムでは北ベトナムが勝った。しかし後にベトナムと中国は同じ共産主義国家同士であるにもかかわらず、戦争状態に陥った。その背景となった状況については詳しく知らない。だから、ここではそういう状態になったことをだけを確認しておく。


一方、朝鮮半島は分断されたままである。ただし、中国は北朝鮮のみならず南の資本主義国家・韓国とも関係を深めている。その裏にあるロジックは経済合理性に尽きる。中国が成長を続けるためには、韓国資本が必要であり、また韓国企業の技術も必要なのだ。統計を調べたわけではないが、おそらくは中韓の貿易額と中朝の貿易額を比べれば、圧倒的に中韓の方が多いはずだ。


現時点で中国が北朝鮮と軍事同盟を組み、朝鮮半島で再び戦争を仕掛け、韓国を制圧するオプションはない。中国にとっての理想のシナリオは、ゆっくりと時間をかけて北朝鮮の独裁体制が崩壊し、その後を親中国的な韓国が修めてくれることだったはずだ。


しかしいま、事態はそんな悠長なことを言っていられるレベルをはるかに超えてしまった。北朝鮮は、極めてユニークな考え方をする国である。そのルールはたぶん金正日体制の維持、これだけなんじゃないか。


そして中国に対しても一歩も引かない。死命線を握る経済/資源支援を中国から受けているにも関わらず、平気で開き直る。万一支援を止めたりすれば、難民が中国へ殺到するのを押さえることはできない、ぐらいの恫喝はかけているだろう。


今回の核実験を行ったと推定される場所にしても、朝鮮半島の南北国境よりも明らかに中朝国境の方が近いエリアである。北朝鮮サイドとすればそこにたいした意味はないのかもしれないが、中国が深読みする可能性はある。


朝鮮半島の今後については、いろんなシナリオが考えられる。中国が考えるのは当たり前のことだけれども、どのオプションが自国にとって最も望ましいか。もちろん目先の結果だけを求めるのではなく、20年、30年先を読んだ上でのオプション選択となる。


中国がめざすのは、名実共に世界の超大国の仲間入りをすることであり、そのためにはまず東アジア圏でのダントツのポジション確保が必要となる。であれば、いつまでも北朝鮮をかばい続けた方が得策なのかどうか。ましてや核を持ち、テロリストにそれを売り渡しかねない国として北朝鮮は見られている。東アジア圏の国々からの支持を得るためには、北朝鮮をどう扱うべきか。すでに判断を下しつつあるのではないだろうか。


中国は北朝鮮を見限る可能性が高いと思う。


その場合、問題は二つだろう。一つは北朝鮮が暴発した時のリスクを、いかに最小限に抑えるか。仮に北朝鮮が世界中からそっぽを向かれるような事態になったとき(たとえば核実験を継続的に繰り返したりした場合がそうだ)には、人民解放軍は史上始めて米軍と協力して北朝鮮を押さえにかかる可能性がある。


もう一つは、同じく極東地域で覇権を争うロシアの出方をどう封じ込めるか。中国は超大国でありながら、一つ致命的な欠点を抱えている。それはエネルギー資源に恵まれないことだ。必死になって油田開発を進めてはいるものの有望な油田を見つけるには未だ至っていない。だからこそ東シナ海の海底ガス田で日本と衝突したりしているわけだが、そのこと自体がエネルギー問題を最重視している裏付けでもある。


かたやロシアはエネルギー大国である。シベリア地帯はメタンハイドレードの超有望地帯でもある(メタンハイドレードは環境ダメージが著しく大きい問題も抱えているが)。いずれロシアからのエネルギー確保も視野に入れているとすれば、この国とぶつかることだけは避けたいはずだ。そこで北朝鮮に対してことを起こす場合には、ロシアとの協調が非常に重要なポイントとなってくる。


ということを考えながら、このところのロシア、アメリカ、中国のそれぞれ外交責任者がお互いを頻繁に行き来している状況をみれば、近いうちに北朝鮮に対する何らかの共同介入を起こす準備が始まっているのではないだろうか。


だからここ最近の中国の動きは、あえて北朝鮮の暴発を誘うような文脈の中で行われているのでないだろうか。北朝鮮が開き直るのなら、中国は超大国として徹底的な恫喝をかける。昨日の中朝会談では、中国からの最終通告がなされたのだと推測する。


だからこそ金正日総書記の昨日の記念写真からは、中国の唐家セン国務委員、外務省の戴秉国に挟まられて身を縮めているような印象を受けた。そしてライス長官が北京へ赴き、おそらくは訪朝の成果を唐家セン国務委員、胡錦涛国家主席から聞くのだろう。結果的に北朝鮮は二度目の核実験を行うことはできず、現体制を維持しながら緩慢な死へと向かう。


そんな筋書きができているんじゃないだろうか。




昨日のI/O

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昨日の稽古:西部生涯スポーツセンター 2F軽運動室

・組み手立ちでの基本稽古
・顔面ありを想定した稽古
・前蹴り、後ろ蹴りで相手を止める稽古