Googleはマーケティングの達人か


売上高:約3178億円、純利益:約867億円、利益率約27%


Googleの数字である。注意していただきたいのは、この数字が年間決算ではなく、あくまでも今年7〜9月の四半期決算のものだということ。仮にこのペースが一年続くとすれば、年間では売上:1兆2712億円、純利益:3468億円となる。


この7〜9月の四半期ベースでみても前年対比70%の伸びである。年間ベースでみれば、昨年度の売上が約7058億円、純利益約1693億円となっている。これが前年対比92%の成長率だったらしいから、単純に成長率だけをとれば、やや減速傾向といえなくもない。


それでも今年度が仮に年間売上1兆2712億円だとして、前年対比は80%ぐらいの成長率となる。単に成長率だけを比べるなら、Googleを凌駕する企業はたくさんあるだろう。しかし、年間1兆円規模の売上でありながら、これだけの成長率をキープしている企業はおそらく、世界中のどこにもない。


しかも純利益(粗利益でも、営業利益でもなく、税引後の純利益ですよ)が、年間ベースで3468億円も出ている企業の話である。ちなみに純利益で見て製造業世界一なのがトヨタで1兆1700億円ぐらい。もしも年間80%の成長率でGoogleが利益も増やしていくなら、2〜3年後にはトヨタを抜いてしまう。


そのGoogleの売上のほぼ100%が広告収入によるものだ。広告収入の内訳まではわからないのだが、おそらくは日本の感覚でいえば中小以下の企業からの広告出稿が大半を占めていると思われる。つまり、これまでは広告など考えたこともなかった企業からの広告出稿を得ているのだろう。それも世界中から。


ということはGoogleは広告マーケットの中に、これまで存在しなかったエリアを開拓したことになる。たとえていえば年間10万から50万ぐらいなら広告費をひねり出せないこともない企業は、たぶんたくさんあったのだろう。しかし、広告費を出す経営的余裕があることと、その広告費を効率的に使えることとはまったく違った次元の話である。


仮に50万円で新聞広告を打つとすれば、どれぐらいのことができるか。あるいは50万円でチラシを折込む、専門誌に雑誌広告を出す。いずれもできないことはないかもしれない。しかし、仮にチラシを折込んだとして、どれだけの部数になるのか。新聞広告然り、雑誌広告も似たようなものである。それらは不特定多数の人に対して、たった一回限りの広告で終わってしまう。


そんな広告に、意味はない。費用対効果はゼロ。50万円をドブに捨てるようなものだ。


ところが、Googleに広告出稿したらどうなるか。テキスト広告でしかないが、クリックされない限りは課金されない。そしてクリックされたとして、一回あたりの最低金額は7円からである。人気の高いキーワードになれば数千円単位のもあるが、それでもである。あくまでもクリックされたらの課金となるのだ。


クリックされるとはどういうことか。少なくとも自社のホームページまでは来てもらえることを意味する。そこが通販サイトなら、集客ということである。しかも、どんな客が来てくれるのか。関連するキーワードで検索をかけた客である。そのキーワードに少なくとも何らかの関心を持った客ということだ。購買につながる可能性は高い。


これがBtoBの分野なら、アクセスしてきた客が潜在顧客である確率はさらに高まる。ある特定のキーワードでの情報を探しているということは、それに関連するソリューションを求めている可能性が高いからだ。ということに中小企業ユーザーが気づき始めているから、というよりもむしろ、実際に費用対効果が高いことが事実として認識されているから、Googleは恐らくあと何年かは驚異的な成長率を保つだろう。BtoBで中小企業が広告を打つ、なんてことはまったく考えられもしなかった展開である。そこをGoogleが切り拓いたのだ、しかも世界中で。


これはブルーオーシャンといっていいだろう。あるいはGoogleは『まったく新しい顧客を創造し、それを維持している』ともいえる。これこそ実はマーケティングの根本的な定義である。つまりはGoogleマーケティングの達人的企業なのである。


とはいえGoogleは単なる検索=ソフト系の企業ではない。その実態をシンボリックに見せるなら、この写真がGoogleの正体である。
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/parts/image_for_link/38347-11461-7-1.html


このサーバーこそがGoogleである。初期のGoogleは、こうした安価なPCを使って自前で組み上げたサーバー企業であった。そして、今でも基本的な企業像は変わっていない。相変わらず安価なPCを使い、巨大なサーバー群を組んでいる。ただ初期と違うのは、その規模がお化け的にでかくなっていることだ。現時点で巨大な(アメリカ人がいう『巨大』だから、そのスケールはとんでもないものなのだろう)倉庫が2棟。その中にぎっしりとサーバーが詰め込まれている。


このサーバー群が高利益率を稼ぎだす原動力といっていいのかもしれない。そのGoogleが次の本腰をいれるのはケータイである。しつこいけれどもケータイは24/30メディアである。つまり24時間、30cm以内の手元にあるメディアである。もちろんGoogleもその特性を踏まえた上での広告展開を考えているだろう。


ケータイの小さな画面で、PCと比べれば明らかに悪い操作性をカバーしながら、どんな広告を展開してくるのか。この1年ぐらいでケータイの世界も大幅に変わってしまう。そんな予感がする。


昨日のI/O

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『問題発見力と解決力/小林裕亨・永禮弘之』
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ドコモインタビュー・近江薫風会ラフ稿

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・レッシュ式腹筋
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