近未来通信の危ない投資


1100万円の投資に対して毎月100万円の配当


年利にして109%。こんな危ないリターンをうたっていたのが、IP電話事業を手がける「近未来通信」だ。大地真央阪神の中西コーチなどをキャラクターに使って、派手に広告を打っていたからどこかで目にされた方も多いだろう。


この「近未来通信」がいよいよヤバそうである。


何がヤバいかといえば、とりあえず財務状況をほとんど公表していない。P/SもB/Lも実態がほとんどわからない状況である。これまでに何回かの配当は行われたらしいが、それが当初の目論見通りに事業から得られた収益に基づくものではないようだ。


ということはどういうことか。


集めた投資を配当に回しているということだ。いわゆる自転車操業である。つまり実態としての事業からの収益は上がっていないのだろう。読売新聞は『近未来通信、見せぬ経営実態…決算公告1度もなし』と題した記事を掲載し、その経営実態の危うさを説いている。→ http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061114ic01.htm


朝日新聞はさらに突っ込んで、『IP電話の近未来通信、虚偽説明で投資勧誘』と告発している。→ http://www.asahi.com/digital/internet/TKY200611110275.html


ここまでいわれるようになると、いずれ近いうちに大型詐欺事件として司直の手が入るだろう。


しかしである。そんなことは、近未来通信が新聞広告を派手に打ち始めた頃から想像がついたと思うのだけれど。個人的にはずっとあやしいと思っていたものが、とうとう化けの皮がはがれたか、ぐらいにしか思わない。加えて、またもや、こんな危ないビジネスに投資した人たちが900人もいたらしく、これって板倉雄一郎さん的(アクセルホッパー的といってもいいかもしれないな)にいうと相当に「おばか」な人たちってことだ。


朝日新聞によれば

募集の際、投資家には「投資1年後には毎月100万円近い配当金がある」「2、3年で元はとれる」「設備の更新費用はかからない」と説明。

とある。


これだけでおかしい。毎月100万近い配当金って何ですか。もちろん説明会では言葉巧みにいろんなことがいわれたのだろうけれど、いまどき電話ビジネスがそれほどの高収益を上げられるビジネスモデルかどうかは、自分がどれぐらい電話を使っているかを考えればすぐにわかるでしょうに。もう少し突っ込んで、ここ5年ぐらいで自分の電話の使い方がどう変わって来たか、それは今後どうなっていくかを考えれば、もっとはっきりする。


にも関わらず「近未来通信」は広告費をバンバン使っている。ごく一般的には売上の3%ぐらいが妥当とされる広告経費を、一体どれぐらい使っていたのか。新聞に限っても全国紙であれぐらいの露出度となると最低でも十億単位のコストはかかっていたはずだ。加えて雑誌広告もある。


投資家から集めた資金が200億近くあったらしいが、これはまず間違いなく大型の詐欺事件となるだろう。


しかし不思議なのは、この手の投資詐欺事件がしつこく繰り返されることである。投資をすればリターンを得られる。これは資本主義の原理であり、正論である。しかしリターンは機械的に生まれるわけではない。投資が、誰かにとっての何らかの価値を創造するからこそ、その価値に対する対価が支払われてリターンが得られるのだ。


この根本原理を理解していれば「近未来通信」への投資が、どういうメカニズムを通じて、誰に対するどんな価値提供につながるのか、それはどれぐらいの対価を得られるビジネスモデルなのか。そのビジネスの維持コストはどれぐらいなのかと考えていけるはずで、すぐに「それって、ちょっとウソっぽくね」ぐらいは気づくはずなのに。


さらに不思議なのは、そんなことさえ考えない人たちが、なぜ1000万単位の投資をほいほいできるだけの資金を持っているのかってこと。どっちかといえば、このほうがよっぽど「謎」である。一体、この国ではお金がどういう回り方をしているんだろうか。



昨日のI/O

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山本博氏インタビュー(素晴らしい方でした)
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昨日の稽古:

・懸垂
・レッシュ式腹筋