報酬ゼロがやる気を引き出す?


報酬なし:238.6ドル/報酬1%:153.6ドル/報酬10%:219.3ドル


報酬がやる気にどう影響するか。イスラエルで行われた実験の結果である(日経アソシエ誌12月5日号)。

イスラエルの心理学者ユーリ・グニージー博士は、180人の高校生に頼んで、できるだけ多くの家庭を訪問させ、ガン患者や障害児のための寄付を募らせてみたのである。
ただし、180人の高校生はあらかじめ60人ずつの3グループに分けられていた。第1グループはいくら募金を集めようと「全然報酬がもらえない」と告げられ、第2グループは「集めたお金の1%を自分のものとしてよい」と伝えられ、第3グループは「集めたお金の10%を自分のものとしてよい」と伝えられた。


その結果が冒頭の通りとなった。


もちろん、この実験はイスラエルでの、しかも対象が高校生に限られた話である。恐らくは敬虔なユダヤ教徒が多く、それ故にボランティ精神も持った高校生もいただろう。この結果を以て日本で同じことがいえるとは限らない。


が、一考の価値はあると思う。


要は人のモチベーションを高めるためには、ニンジンをぶら下げたほうが効くのかかどうか。ぶら下げるとしたら、どんなニンジンがいいのかといった話だ。


とりあえずニンジンは必要だと思う。この場合のニンジンには二種類ある。人から与えられるもの、自分が自分に与えるものである。


人から与えられるものにはお金に代表されるといったリアルなモノから、ほめ言葉や自分を認めてくれる言葉などがある。自分が自分に与えるものは、基本的には心理的な満足感、達成感になるのだろう。


とりあえず問題となっているのは、前者のニンジンである。この実験が示唆しているのは、中途半端(1%)なニンジンはモチベーションをあまり高めないということだ。じゃあ10%ならどうなのか、それは中途半端ではないのかといった議論もあるが、そこはとりあえず置いておく。


実験では報酬ゼログループがもっとも良い成績を出した。ということは彼らのモチベーションは、自分が自分に与えるニンジンだったということだ。これはマズロー自己実現に通じる話。人間の最高の欲求は、落ち着くところ自己実現になるという。だから報酬などなくともガン患者や障害児のための寄付集めに、高校生たちは自己実現の機会を見出したのだと思う。


では、仮に報酬が集めたお金の50%だったらどうだったのだろうか。


あくまでも推測でしかないが、少なくとも報酬10%グループをはるかに超える寄付金を集めたのではないだろうか。おそらくは報酬ゼログループをも超えただろう。


日経アソシエの記事には、報酬を出すなら思いきった額にした方が効果的だとある。

相手が10万円の謝礼なりボーナスなりを期待しているのなら、100万円ぐらいをパッと与えるのだ


人を使うコツは、こうした思いきりにあるのだと思う。このときの100万円が相手の気持ちに与えるインパクトは、10万円の10倍どころではないはずだ。


あるいは働く環境や設備にお金をボコッとかけてみる手もあると思う。たとえば社員全員にアーロンチェアを奢ってみるとかね。これなんかも実は一人あたり投資額は15万にもならないのに、やる気はガーンと上がるんじゃないだろうか。しかも社員にお金を上げた場合は、それでおしまいだけれど、イスなら設備としてずっと残るのだから。


という視点で、いろんな会社のオフィスを見れば、どこにどんなお金をかけているかで、社員に対するモチベーションアップ法が読めるんじゃないだろうか。



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