YouTubeは死神、それとも救世主?


YouTubeが進化している


回線が強化されたのか、つながり具合がとてもよくなった。加えて細かい部分の使い勝手が良くなっている。Googleに買収され、資金が入ったこと、プラスGoogleの技術者たちがよってたかって改良を加えていることが原因だろう。


私が見ているのはほとんどが音楽系のコンテンツで、中には削除されているものもあるが、コンテンツそのものはどんどん増えている。個人的な印象としては、いくら法で規制をかけても、あるいはテレビ局が削除依頼を出したとしても「違法」コンテンツをすべて取り除くことは、もはや不可能なんじゃないだろうかといったところ。それぐらいにYouTubeはユーザーからの支持を集めている。


そうなるとYouTubeはテレビ局の目の敵でしかない、のだろうか、本当に。


すでにいくつかのテレビ局が(主にアメリカでの話だけれど)、YouTubeとの提携、活用を具体化させている。広告代理店はともかく、テレビ局にとっては今後の提携相手としてYouTubeを考えることはできないのだろうか。


と考えていたら、梅田望夫さんが『Foresight』12月号でビシッと本質をついた指摘をされてた。要約するとYouTubeGoogleは、テレビコンテンツにロングテールをもたらすということだ。Amazonが本の世界でロングテールを引き起こし、従来の本屋では見つけることのできなかった本が売れるようになった。これと同じことがテレビの世界でも起こる可能性があると。


つまりテレビ局には厖大なコンテンツがある。昔のドラマ、スポーツ番組、エンタメショー・・・。これらを、何かの折りに見たいと思う人はたくさんいるはずだ。「そうそう、あんな番組あったよな」とか「○○年のワールドシリーズ終戦、ほんとすごかった。あの逆転サヨナラホームラン、もう一回みたいなあ」なんてニーズは必ずある。


そういうコンテンツをみるために、マイクロペイメント(たとえば一回100円ぐらい)なら払ってもいいよって人も、やはりたくさんあるだろう。そこでYouTubeGoogleの登場となるわけだ。


片方に莫大な量のテレビコンテンツを抱えておいて、検索によってユーザーニーズとのマッチングを図る。もちろん広告も出すし、少額課金も考えられる。課金制はGoogleのモデルにマッチしないから、やらないかもしれないけれど。


これでテレビ局にとっては、死蔵しているだけで何の価値も生んでいなかった過去のコンテンツを再利用できることになる。

テレビ局は「塵を低コストで集めるためのインフラ」を持たないから、ロングテール映像はほとんど死蔵することになるが、グーグルはそれを活かすインフラを持つ。だから著作権者さえ納得すれば、ロングテール側の死蔵映像からも高収益事業を作ることができますよ、さて生まれるはずの利益をどう分配しましょうか、グーグルの提案はそういう性格のものになる
梅田望夫シリコンバレーからの手紙123、『Foresight』12月号、50p)


その場合、YouTubeにアップされる映像は、iTVを介して大画面で見るに耐える画質になるだろう。もちろん、それだけのデータをコンパクトに送信する技術も開発されているだろう(というか、それぐらいのことはすでにGoogleが開発済み、の可能性の方が高い)。


ということでYouTubeGoogleはテレビ局の目の敵などではなく、今後テレビ局が生き残っていくための『救世主』なのではないだろうか。広告代理店にとっては、死神でしかないのかもしれないけれど。




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山本博氏コラム原稿


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