天然温泉は退会率を下げるか


延べ床面積5千〜1万平方メートル


ゼクスが来年末にオープンを予定しているスポーツクラブ(あえてフィットネスクラブとはいっていないようだ)である(日経MJ新聞12月5日)。フィットネス業界ではこれまで、3千平方クラスでも大型とされてきた。それを思えばゼクスの「スポーツクラブ」は異例の大きさだ。


最近の業界動向でみれば30分コンビニ・フィットネスの「Curves」タイプが恐らくは100平米以下、プールなしで勝負する「ワウディー」が1300〜2000平米、一般的なフィットネスが2000平米ぐらいからで3000を超えると大型店となる。


仮に1万平米のスポーツクラブができれば、これは明らかに次元の異なる空間となるだろう。まだどんな施設になるのかも具体的にはわかっていないが、確実にいえるのは従来のフィットネスクラブとはまったく概念の違ったスペースになること。これぐらいの量的変化は質の変化につながるはずだ。


その広大なスペースにゼクスは何を作るのか。ジム、スタジオ、プールの基本三点セットに加えて、天然温泉の温浴施設を作るという。これがゼクス・コンセプトを読むヒントだろう。ターゲットはずばり高齢者(表向きには絶対にこの表現は使わないだろうが)ではないのか。


そもそもゼクスは不動産コンサルティングが本業である。そしてシニア向け(高齢者の代替表現の一つですね)住宅の運営や、それに付随するサービスを展開している。つまりシニアの生の声を掴んでいる可能性が高い。シニアがいまのフィットネスクラブをどう思っているのか。何が不満なのか。そうしたバックデータに基づいての大規模スポーツクラブ展開なのだろう。


さらにゼクスは全国でゴルフ場やリゾートホテルの運営も手がけている。ということはサービスのツボを押さえている可能性も高い。そして既存のフィットネスクラブが軒並み弱いのが、このサービスなのだ。


なぜフィットネスがサービスに弱いのか。その理由は極めて単純。フィットネスクラブのスタッフには、どんな人がなっているかを考えればすぐにわかる。彼らは基本的には体を動かすのが好きな人たちである。クラブは体育系の大学や専門学校を出た人たちの職場である。彼らは体を動かすことが好きだし、運動をする人に対しては好感を持つけれども、一般的なホスピタリティが高いとは決していえない。


だからこそ、どのフィットネスクラブもサービスの質を高めようと努力をしている。しかしそもそものスタートがフィットネスなのだから、ベーシックなノウハウに欠けている。もちろん体育系のスタッフには素直な人も多いから少し教育すれば効果が高いことも、よくわかる(っていうか、以前関わっていたクラブで実証済みですね)。


しかし、本格的なサービス業をルーツに持つ企業が、フィットネス業界に参入して来たことは稀だった。そこに恐らくは満を持してのゼクスの参入である。しかもその社長にはコナミスポーツ執行役員をヘッドハントしてきている。


ということはサービス業のベースの上に、フィットネスクラブ運営のノウハウを乗っけようという作戦だろう。土台はサービス業、その上でフィットネス的展開をするわけだ。そしてターゲットを高齢者に絞り込み、ゆったり空間&設備を提供する。


まだ一号店のオープンが来年末だから、まだまだ先のことではあるが、このゼクススポーツの既存会員退会率がどれぐらいのレベルになるのかが、非常に注目である。


それにしてもフィットネス業界はもしかして、いま日本でもっともホットな業界の一つになっているんじゃないだろうか。いろんな動きがあって、とてもおもしろい。


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