うまいトロは上海で


腹上 二貫で十万円


正月のテレビを見ていたら、オリックス清原と浜ちゃん浜田がこんなぜいたくな寿司を食っていた。腹上とは天然マグロの大トロの中でもとびっきりの部分を指すらしい。しかも天然マグロといえば、当然のごとく青森は大間産である。にしてもたった二貫で十万とは。くら寿司やったら1000皿食べられるんでっせ。ちゅうことは一人十皿食べるとして百人分やないか。


それをたった一人で、しかも二貫なんて一瞬や。あっという間に食べてしもてええんかい(怒)。と正月早々腹を立てたり、うらやましがったりといった経験をしたのだが、その大間産極上のトロもそのうち日本では食べられなくなる可能性が出て来た。


マグロのチャイナクロスである。チャイナクロスとは、ある製品で中国の需要または生産の規模が、日本のそれを追い抜く瞬間を指している(→ http://www.nikkei.co.jp/neteye5/goto/20040219n772j000_19.html)。すでに鉄鋼等の素材分野ではいくつものチャイナクロスが起こっており、高付加価値製品では携帯電話は中国に抜かれた。そしておそらくは自動車などの頂上製品でもここ数年のうちに起こることが確実だ。


そのチャイナクロスがマグロでも起こるようだ。前兆はすでにある。ハンドキャリーでの中国への冷凍トロの持ち込みが急増しているらしい(日経産業新聞1月4日)。ハンドキャリーとは飛行機の手荷物扱いでモノを運ぶこと。中国に進出している日本料理店などでは、日本で仕入れた高額食材をよくこのハンドキャリーで中国へ持ち込んでいた。


もちろん手荷物扱いだから一挙に大量にというわけにはいかない。となるとわざわざそうやって持ち込まれるのは、少量でも航空運賃をかけても元が取れるだけの高額商品に限られる。そのハンドキャリーで近ごろ、人気となっているのが日本からの冷凍トロというわけだ。


持ち込まれたトロを誰が食べているかと言えば、裕福な中国人である。中国の富裕層はすでにヘルシーだからといってマグロを食べる段階を卒業し、ぜいたくでおいしいからといってトロを好むレベルにまで来ているようだ。マグロについてはすでに中国のみならず、ヨーロッパでもヘルシー志向に合う食材としての人気が高まっている。


そのあおりを受けて日本の業者が仕入れにいっても思った通りの価格では競り落とせないケースが増えている。しかもクロマグロを代表として漁獲量制限の流れが本格化しそうである。ますますマグロ、さらにはトロを日本人が食べることは難しくなっていくのかもしれない。


が、それがトロなどの高額品、贅沢品だけの話ならば、まだガマンすればすむ問題である。これがごく普通の食材でも同じような現象が起こった時にどう対応していくのか。日本が考えなければならないのは、ここだ。


資源も、食料にも恵まれない日本は、そうしたものを海外から買うしか生き残る道はない。購買力を維持するためには、世界が納得して対価を支払ってくれるような価値を創造し続けるしかない。そうした価値を創りだすのは人である。いうまでもなく価値を創りだせる人を育むのは、教育である。


従って資源問題も食料問題も、日本の場合は教育問題として捉える必要がある。ポイントとなるのは、全体的な底上げがまず大前提としてあり、その上で飛び抜けた人材をいろんな分野で育て上げることだろう。言い換えれば、いかに落ちこぼれを出すことなく、さらにはキラ星的タレンティッドな人間を輩出できるか。


少なくともぬるい「ゆとり授業」などをやっている余裕はないし、となれば教える教師の側にも相当高い技能が要求される。これからの日本が生き残っていくために欠くことのできない人材を創ると考えれば、教師の待遇だって能力に応じてもっともっと上げて良い。


それぐらい徹底した対策をとって、日本は世界に冠たる付加価値製造国となるしか恐らくは生き残る道はない。さもなくば優秀な日本人ほどこれからは、日本を見捨てるような事態が現実化していくのかもしれない。


「どう。 今夜あたり上海へ、うまいトロでもつまみに行かない?」なんて世の中だけにはなってほしくないのだが。


昨日のI/O

In:
クオリア入門/茂木健一郎
Out:
田中まこさんインタビュー原稿
藤山直美さんインタビュー原稿

昨日の稽古:

・レッシュ式腕立て/腹筋
・馬歩站椿