マクド値上げの成否は→大成功!


前年対比7.2%増、売上は過去最高の4415億


マクドナルドの06年度決算である(日経MJ新聞1月12日)。マクドについては約7ヶ月前のエントリーで、値上げはうまくいかないのではないかと予測した(→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060507/1147008270)。この予測はまったくのハズレとなってしまった。


もちろん値上げ戦略がうまくいかないと判断したのには、それなりの理由があった。値上げによって客が余分に支払うことになる対価と、その対価から得られる価値アップ分のバランスが釣り合わないのではないかと考えたのだ。


つまり「安い・速い・味はそこそこ(人により「まあうまい」から「食える」までさまざまな評価に分かれる)」だったマクドが、値上げによって「まあ安い〜普通・速い(若干の?付き)・味はそこそこ(以前よりやや+)」となったぐらいで、新たに客を呼ぶ力を持てるのだろうかと。


値上げ商品のターゲットを女性客とすることに対しても、まずいんじゃないかと思った。なぜなら女性客は価格に対してものすごくセンシティブである。安さが選択理由となっているはずのマクドで、(今より)高い価格をつけてはたして支持されるのだろうかと考えた。


その結果

今回の値上げ、どんな結果と出るか。はっきりするのは最短で3ヶ月後、遅くとも半年後には数字で傾向が読めると思う。個人的な予想は「×」だけれど、さて、どうなるだろうか。
http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060507/1147008270

と書いたのだが、これが見事に外れた。


そこで検証である。なぜ、マクドナルドは復活したのか。日経MJ新聞の記事から原田CEOの戦略的コメントをピックアップしてみる。

客単価に客数をかけたのが売上高だが、客単価には限界がある。当社が千円に引き上げるような施策を実施したら、ブランドそのものがおかしくなる。成長戦略は客数を増やすことでしか描けない


まさしく。反論の余地なしだ。

客数は一ヶ月間に地域人口のどれくらいの人が来てくれるかを示す『顧客獲得率』と来店頻度のかけ算。


なるほど。こう分解するのかと、目からウロコである。

来店頻度を引き上げるため、ランチのほか朝食やスナックタイムの強化、二十四時間営業の拡大などを進めているが、これにも限界がある。そう考えると、顧客獲得率を上げるのが一番大事。次ぎに来店頻度、客単価は三番目となる
日経MJ新聞1月12日)


ということで顧客獲得率を高めるための戦術が、百円メニューということらしい。なるほどね。その戦術は最近の「百円あったらマックへ行こう」というCMにもつながっていることがわかる。要は百円メニューは撒き餌、あるいはフックということなのだ。これがある程度は功を奏したということなのだろう。


興味深いのは、これぐらい誰もが知っているブランドと化しているマックでも、まだやはり新規顧客の開拓が成長のためには最重要課題となっていること。だからといってむやみやたらとターゲット拡大には打って出ないのがマクド的戦略なのだろう。


とりあえずマーケティング的にはいまどこもが注目している団塊世代を狙った策には出ていない。にローソンは、この世代を狙った店作りを展開し始めている。セブンイレブンもこの年代のための宅配サービスなどを開始している。マクドもいずれはやるのかもしれないが、今のところその兆しはない。


とはいえマクドが開拓しきれていない顧客層なるものが、それほど多く残されているとも思えない。エリアで考えてみても、残された出店余地はほとんどないだろう。メーカーのように日本市場が飽和しているなら海外へ、なんてお気軽な戦略を取ることもできない。一方では少子化が進み、マーケットが縮んで行くことは既定事実。


いずれぶち当たる成長の限界マクドはどうブレイクスルーして行くのか。成長余地の限られた企業が取るべき戦略のあり方として、マクド次の一手は注目である。



昨日のI/O

In:
日経産業新聞
Out:
フレーズ社取材原稿・ラフ原稿


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