文高低理問題


92年度:約67万人→05年度:約38万人


大学での工学部志願者が、この十年ちょっとでほぼ半減してしまった(日本経済新聞1月29日)。センター試験受験生の意向にも明らかな文系指向が見られるらしい。これは困ったことである。なぜなら日本の未来は付加価値創造力にかかっている。資源がなく、円の価値も下がらざるを得ないのは明らかで、その上人口さえも確定的に減っていく国が、まず食料とエネルギーを確保するためには、海外から買い付けるだけのマネーを持たなければならない。


では、そのマネーをどうやって稼ぐのか。マンパワーと労働コストの安さに任せたマスプロダクションの世界では、どうあがいてもBRICsはじめ新興諸国に太刀打ちできない。となれば取れる選択肢は二つ(あるいは三つ)しかない。


一つには高付加価値の製品作りに徹すること。一昔前のテレビに象徴されるようにメイド・イン・ジャパン=イノベーティブ&ハイクォリティをキープし続けることである。


もう一つは技術開発に徹すること。つまりテレビならそのコア技術を開発し、特許を取りライセンス料をいただくというわけだ。いずれにしてもベーシックな能力として求められるのは理系的思考力である。


高付加価値製品あるいは先端技術開発のほかにもう一つ、日本が稼げる可能性があるとすれば金融部門だろう。これなら何も資源はいらない。脳みそ一つで世界と勝負することができる。しかし、これまた最先端の金融工学を武器としての勝負となる。すなわち理系頭が必要だ。


然るにである。大学での理系志望者が減っている。これは日本の将来にとって極めてまずい状況だと思う。


大学で理系を志す高校生がこれほどまでに減っているのはどうしてだろうか。少なくとも私が高校生の時には、文系理系の比率はほぼ半々だった。私が高校生の頃には、だいたい高二ぐらいになると文系、理系がはっきりとわかれた。早い話が文系頭では数三についていけなくなるのだ。


もとより30年前の話だから今は少し様子が違うのかもしれないが、たとえば微分積分を取ってみても高一でやる微積は簡単で楽しいぐらいだったのが、高二で数三に突入すると難しさのレベルが明らかに非連続的になるのだ。そこで落ちこぼれるというか、何というか。


物理、化学も同様である。物理などはそもそも嫌いだったのが、物理二ともなると拷問である。というか死に体である。というか正直、零点である。ところがクラスの半分ぐらいは、そんな数三、物理二などを平然とこなしていらっしゃるのだ。「おぉ〜、なんとこいつらは賢い奴らだことよ」と、その頃の理系コンプレックスは未だになくならない。だからいい年こいてクリシンだ、ロジコミなどと言ってるのは、おそらく高校生の頃の理系コンプレックスのなせる業である。


ということは、もしかすると今の高校には、昔の自分と同じようなタイプが増えているということなのだろうか。要するに高校レベルですでに、理系的な思考能力のなさを痛感する生徒が増えているということなのか。もしそうならば、その原因はどこにあるのか。


考えられるのは小学校時代の算数教育がいちばんあやしい。いわゆるゆとり教育のもたらした弊害である。仮に彼らの理数科嫌い/苦手意識がもし、学校教育によって、それも小学校レベルでの教育によってもたらされたのだとしたら、これはやはり大問題だ。


そういえば、大学生でも数学をもう一度高校レベルから復習させないと、とても大学の授業にはついてこれないなどというレポートもあったような気がする。そんなんで大丈夫なんだろうか。


これが中国やインドへ行くと、同じ年代の子どもたちでもまったく状況が違ってくる。インドなどでは19ケタ×19ケタの九九(とは正確にはいわないのだろうけれど)を覚えるらしい。インド人はそもそも数学に強いことで定評があるが、その強みをさらに伸ばす国家戦略を取っているというわけだ。


中国だって科学系の学生を積極的にサポートしている。そして海外にどんどん出て行かせて、しばらく学ばせてから、今度は本国へ好条件で呼び戻している。インド、中国のいずれも国策として科学系教育に力を入れている。その典型がコンピューターサイエンスなのだろうが、ことは何もその分野だけに限った話ではない。


そして学生サイドでも理系に強くなることが、自分が豊かになるためのもっとも手っ取り早い手段として認識されている。だから、優秀な生徒ほどがんばって勉強する。彼らが伸びるのは当たり前の話だ。今のところはまだ日本の技術開発・研究力は世界でもトップクラスにあるようだが、これが十年後ぐらいのスパンで考えた時にどうなるのか。


ここはいちばん、やはり子どもに、じっくりと算数のおもしろさ、楽しさを教えてあげる教育が絶対に必要だと思う。




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