販促にチラシは効くか


販促費2億円


3月末までの2ヶ月でルネサンスはこれだけの資金を投入し、チラシ折込とホームページ刷新にかけるという(日経MJ新聞2月2日)。こうしたプロモーションコストをかける理由は、昨年9月末時点での会員数が前年同期比2%減だったから。販促費をかけるだけでなく、老朽化した施設の修繕も急ぐそうだ。ちなみに同社の前年度売上高は年間287億。この規模から考えれば2ヶ月2億円(=年間12億円ペース)は販促投資としては、少々思い切ったものと考えられる。


マーケティングの教科書的に考えれば、これは4P(Product、Price、Promotion、Place)のうち、ProductとPromotionのてこ入れを図ることになる。このルネサンスの施策が果たして功を奏するかどうか。


コストをかける理由は、会員数が減っているから。そこで恐らくルネサンスは、会員数が減っている理由を内部要因に求めたのだろう。すなわち施設がぼろくなってきている(=会員の満足度が下がっている)、広告宣伝が行き届いていない(=潜在顧客に対する認知度が下がっている)といったところだろうか。


もちろん、こうした理由も考えられなくはない。実際にルネサンスが会員減に落ち込んでいる原因の一つとはなっているだろう。が、果たしてそれだけだろうか。会員減の理由には当然、環境の変化も考えられる。すなわち内部要因に対する外部要因である。ここを読み間違えている可能性はないのだろうか。


フィットネス業界ではいま、構造的な変化が起こっている。これは完全なパラダイムシフトであり、少し古い例えになるかもしれないが黒船来襲といってもいいぐらいのインパクトがある。要するにアメリカ発祥の『Curves』30分フィットネスが、日本のフィットネスマーケットを根底から覆し始めている。


『Curves』は新しいフィットネスマーケットを開拓した。それは30分ポッキリ、サーキットトレーニングオンリー、風呂なしプールなし女性専用といった提供価値に魅力を認めるマーケットである。


それまではフィットネスクラブに行くといえば、最低でも1時間ぐらいはそこで過ごすことを意味した。どんなメニューをこなすかは個人差があるにせよ、行って着替えてウォーミングアップして、ジムなりスタジオなりで体を動かして、あとプールに入る人は入り、シャワーもしくは風呂に入ってひと休みして帰る。


こうしたプロセスに加えて女性の場合は、外に出る装いを整える時間も必要になる。車で5分のクラブにちゃっと乗り付けてサッと帰れるならいいが、他人と顔を合わす可能性がある場合は、最低限の身支度も整えなければならない。


フィットネスが体にいいことはわかっているし、運動すれば気持ちがよいことも理解できる。大きなお風呂やサウナ、ジャグジーなどがあって快適なことも知ってるけれども、商圏内人口のせいぜい5%ぐらいまでのマーケットサイズにとどまっていた理由は、こうした時間的ハードルの高さにあったはずだ。


だからフィットネス業界では可処分時間の多い団塊世代に期待しているし、こうした世代を引きつけるためにリラクゼーション系の施設充実に力を入れている。この方向性は間違っていないと思う。


ところがである。団塊世代と並んで、もう一つの主要ターゲットであったF1(からF2ぐらいまでを入れてもいいのだろう)の動きはどうか。彼女たちははっきりいって一日1時間もの貴重な時間をフィットネスに振り当てたいとは絶対に考えていないはずだ。なにしろ忙しいのである。やりたいことがいっぱいあるのだ。


F2層まで含めてフィットネスの重要性は重々承知している。その目的はF1がビューティ系にあり、F2がヘルシー系にあるとして、いずれの目的に対しても体を動かすことが目的達成にはもっともよい手段であることも理解している。然るに時間がない。


昼間ならと考え、フィットネスを試す層はある。私の周辺でも家人をはじめその友人たちは入れ替わり立ち替わりほとんど一度はフィットネスクラブ入会者である。しかし、続かない。だからフィットネスクラブはいつまで経っても、毎月あたりの退会者が全体の3〜5%レベルとなる。そこで登場したのが30分フィットネスというわけだ。


この『Curves』タイプのコンビニフィットネスが旧来型フィットネスクラブにとっては深刻な脅威となっていることは各社共に理解している。だから各社が一様にこの30分フィットネスの展開を始めてもいる。ルネサンスも同様だ。


そこで問題となるのは、ルネサンスのSTPを考えたとき、果たしてチラシがターゲットに届くメディアなのかどうか。もう少し深く考えるなら、従来のルネサンスのSTPのままで今後のマーケットに対応していけるのかどうか。これまでどちらかといえばキャラクターを使った中吊りや駅貼りポスター、あるいは雑誌広告などのメディアを使ってきた(これでそれなりに成功してきた)のには、STPを踏まえたそれなりの理由があったはずだ。それがいきなりチラシにシフトして成功するとは思えない。


その結果は同社の07年9月期決算に出るはずだ。


昨日のI/O

In:
『営業の科学/萩原張広』
Out:
メルマガ
某社取材原稿訂正
某ショッピングモール情報誌コピー原稿

昨日の稽古:富雄中学校体育館

・基本稽古
・型稽古(太極一)
・ミット稽古(回し蹴りを早く/強く)
・組み手稽古