フリーターに夢はあるか


18〜29歳男女の半数


フリーター経験者の数である。しかもフリーターでいる期間は長期化の傾向にあり、正社員になろうとしたことがある人が四割、正社員ではなく仕事以外にやりたいことをめざす「夢追求型」が四人に一人だという(日本経済新聞2月20日)。


夢追求型のほかにも正社員になりたくない「モラトリアム型」が44%になるそうだ。そんなんで大丈夫なんだろうか。人ごとを心配している場合ではないのだけれど、それじゃあ、まずいんじゃないかと余計な心配をしてしまう。何がマズいかといえば、格差社会がますます固定化してしまうことがよくないと思う。


内田樹先生によれば、格差社会が進む根本的な理由は、子どもの頃に得られる文化資本に差が付いてしまうことにある。その行き着く先はフランスやイギリスの階層社会となるのだが、要するに幼少期にどんな環境で育つかによって、その人の生涯がほぼ決まってしまう。これが格差社会のもっとも大きな問題だ。


そこから抜け出すことができるチャンスは、よほどタレンティッドな容貌を神から与えられるか、あるいは何らかのスポーツ能力を付与されるかぐらいしか残されていない。つまりそんな人は百人に一人もいないぐらいの確率になる。となると残りの人はどうなるのか。まともな教育を受けることができず、まともに教育を受ける意欲も持てず、従ってまともな仕事にも就くことができず、いわゆる下流で生きていくしかない。そうした人生がおそらくは親から子供へと循環〜拡大再生産〜固定化される。


これが格差社会の最大の問題点だ。


今の日本がフリーターを容認できるのは、まだそれだけの蓄えが社会的にあるからだ。それは団塊の世代をはじめとする人たちが身を粉にして働き、日本社会全体に豊かさを蓄えてきてくれたおかげである。そうした蓄えがあるからこそ、本来ならもっとも生産的であるべき年代に、あまり生産性の高くないことをやっている人(=フリーターですね)を社会として抱えることができている。


ここで少し見方を変えてみよう。


夢追求型のフリーターが、どれぐらいの確率で夢を実現できるのだろうか。あるいはモラトリアム型のフリーターが、いざ正社員になりたいと考えたときに、どれぐらいの確率で正社員になれるだろうか。


もう一歩踏み込んで問いを立てるなら、夢追求型のフリーターが現時点で夢を実現できていない理由はどこにあるのか。これは逆に考えれば、たとえば30歳ぐらいまでに少なくとも夢を実現する方向に向かってしっかりと歩き出せている人たちと、夢追求型フリーターとはどこが違うのかという話になる。前者の多くはおそらく、10代で漠然とではあっても自分が進みたい方向を見つけ、それなりに準備もし、早くから努力を始めている人たちだろう。


これに比べて20代の夢追求型フリーターは、どんな十代を過ごしたのだろうか。もちろん十代で自分の夢を見つけることができないと、一生夢なんか見つかりっこないなどといいたいわけではない。要はスタンスの問題なのだ。それはどれだけ自分と向き合う時間をもってきたかということになる。言い換えれば自分の内面を見つめ、内なる自分と対話するだけのインテリジェンスを持っているかどうかという話だ。


そうした習慣を文化資本の高い環境に育った子供は、誰から教わることなく自然に身につけるようになる。そして、おそらくは文化資本が教育面ではたすもっとも重要な役割が、幼少期でのこの内省スイッチの埋め込みだ。内省できる人は、つねに自分が現在置かれているポジションを客観視しようとし、自分の希望や能力とのギャップを測りながら『よりよき自分』をめざして行動することができる。


内省能力に欠ける人は、漠然とした夢の追求や、既成の枠組みにはめられることに対する嫌悪感だけから、とりあえず現状での自分にとっての「快」状態だけを求めがちになる。もちろん、そうした生き方が悪いとかしてはいけないといっているわけではない。幸か不幸か、経済的にはそんな生き方でも何とかやっていけるだけの社会的な余剰が日本にはまだある。でも、問題はある。


仮に彼らが子どもを持ったときにどうなるか。彼らは、その親の経済的なゆとりに支えられて、モラトリアムにふけったり夢を追求することが許された。ところが、彼らには自分の子どもにそうしたゆとりを与える余力はない。仮に三十前後になって、いままでフリーターをしていた人間(大多数が内省能力にも欠ける)が、まともに働こうとしても雇用チャンスがあるかどうか。


自分が雇う立場になったと仮定して考えてみればわかる。そんなフリーターはよほど何か特殊な才能でも持っていない限りは、雇いたくない。というか雇っても使えない。仮に雇ったとしても使い捨てに近い感覚を持つ。フリーターの人たちは、将来自分に向けられるかもしれないこうした視線をリスクとして考えておくべきだと思う。




昨日のI/O

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昨日の稽古:富雄中学校体育館

・縄跳びコーディネーショントレーニン
・基本稽古
・型稽古(太極一)
・ミット稽古(回し蹴り、ワンツーからの回し蹴り、回し蹴り〜後ろ回し、二段蹴り)
・組み手稽古