GooglePCが現れる日


年間一人あたり50ドル


Googleが有料サービスを始める。容量10ギガバイトのメールサービスにワープロ表計算ソフト、カレンダー機能などがネット経由で提供される。といってもこれらはすべてすでに無料提供されているサービスばかりだ。Googleといえばこれまで「あらゆるサービスを無料で」がポリシーだったはず。なぜ、ここにきて有料サービスに乗り出したのだろうか。


有料と無料の違いは何か。ユーザーサイドからみれば、とりあえず無料である限りクレームを付けることができない。だって、タダなんだからGmailが少々調子悪くったって(ごく稀にアクセスできない時がある)、データがいきなり飛んでしまったって(そんな話をどこかで聞いたことがある)しょうがない。運が悪かったんだと諦めるしかない。


ところが有料になるということは、対価を払うということである。対価を払うからには、それに見合う価値を付けてもらわなければならない。そんなことはGoogleだって百も承知である。つまるところ、有料サービスに踏み切っても問題ないレベルでシステムを安定運用できるレベルにGoogleが到達したということではないのだろうか。


Googleは途方もない数のコンピュータを使っている。優秀な科学者ばかりを集めたとびっきりの頭脳集団でありながら、ハード面に関してもことコンピュータの使用台数でみれば、もしかしたら世界一の企業かもしれない。しかもそのコンピュータの多くは自分たちで組立てたオリジナル仕様、決してスーパーコンピュータを使っているわけではなく、ごく普通のパソコンレベルのマシンを数だけは途方もない規模で使っていると聞く。そのシステムの信頼性が十分に高まったのだろう。


では、このGoogleの新しいサービスは、ユーザーとなる企業にどんなメリットをもたらすだろうか。


とりあえずデータを共有していろんな作業をチームを組んでできるようになることが一つ。しかもそのデータを利用する社員は、場所の限定から解放されること大きなメリットだ。もちろんこれまでもネットにさえつながれば、社内のサーバーにアクセスして作業することはできたのだろうが、データをGoogleが持ってくれるとなれば、より自由度が増すはずだ。


ここで気になるのはセキュリティの確保だが、そのあたりはGoogleのことだからしっかりカバーしてくれているものとして話を進める。


となると、このサービスでもっとも恩恵を受けるのは、これまで予算がなくてセキュリティの高い自社サーバーシステムを組むことができなかった中小企業ではないか。このクラスの企業にとっては、グループウェアの導入でさえもコストを考えて躊躇していたはずだ。それが一人年間5000円程度で使えるとなれば、こうした中小企業が一挙に導入へとなだれ込む可能性がある。


しかもGoogleがデータとアプリケーションを持ってくれるのだから、社員のパソコンはそれこそネットにつながりさえすれば良い。Vistaがびゅんびゅん走るようなハイスペックマシンを、高いコストをかけて導入する必要はまったくない。というかVistaなんか全然いらない。


そもそもOSを問わないこともいうまでもない。となると、企業PCに求められる条件がまったく変わってくるはずで、これは大幅なコストダウンにつながる可能性も出てくる。コストダウンという意味では、中小企業に限らず大企業でも巨額のメリットを享受できる可能性がある。


ただし不透明な部分も残る。利用企業のトップシークレットとまではいかないまでも、企業活動に関わる重要なデータをGoogleに預けてしまうことに情報管理上問題はないのだろうか。万が一にでも、そうしたデータをGoogleが悪用する恐れはないのか。Googleにデータを委ねるということは、そうしたリスクを抱えることになりはしないか。


仮にこうした懸念がすべて払拭されるなら、Googleはまたネット上に新たなフロンティアを開拓することになるだろう。個人的にも使ってみたいと強く思う。


ついでにもう一つ、オマケも期待したい。当面はあり得ない話だとは思うけれど、このサービスに特化したマシンをGoogleが出してくれないものか。そのマシンに積まれているOSは当然、GoogleOSとなるはずだ。FEPさえきちんとしていれば、あとは何にもいらない。さらに妄想を膨らませるなら、そのOSはMacOSベースになっていて、ここでAppleは永年の恨みをついに晴らすことになったりして。


昨日のI/O

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茂山千三郎氏インタビュー
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