キミが帰ってきた日
やっと帰ってきてくれたね
思い返せば、もう三年も前になる。さよならもろくにいわず、一方的に立ち去ってしまったキミ。それは、それはひどくつらい別れ方をしたものだ。にもかかわらず、キミの想い出を消し去ることはできなかった。それほどまでにキミは決定的に魅力的だった。
確か二年前の今ごろ、たった一日だけだけれども、もしかしたらキミに会えるかと、寒い中をならんだことを思い出す。でも、あのときキミはいなかった。たとえ外面がどれだけ似ていようとも、キミと他の人とは全然違う。根本的な何かが違うんだよね、きっと。
だから、キミのことはもう心の中で封印していたんだ。ごくごく稀にキミのいたお店にいくことはあっても、キミのお仲間(といってもキミとはまったくプロポーションが違うのだけれど)に浮気することはあっても「これは決してキミじゃない。だから本気じゃないから、心の底から求めているのはキミだけなんだ、ほんとだよ」なんて自分に言い訳していた。
そのキミが、今日、いきなり帰ってきてくれた。
この日を、どれだけ待ちわびたことだろうか。その肉感、ボリューム感を、どれほど夢見たことか。キミのたっぷりとしたお肉を噛み締めて、味わって、すすりあげている夢を何度見て、めざめるたびに悲しい想いをしたことだろう。
でも、もう大丈夫。今日からはキミと一緒に生きていける。そのお肉とご飯の黄金比ともいうべき絶妙のプロポーションを思うままに楽しむことができる。それは貧相な『並』ではまったくの論外、ただボリュームがあるだけの『大盛り』でも決して得られなかった愉悦。
少々多めのご飯に対して、これでもかとどっさりお肉をかけるからこそ得られる神々しいまでの美しきバランス。
吉牛の牛丼は『特盛り』にトドメを刺す。そこにはもちろん生卵&しょう油かき混ぜをぶっかけなければならない。とはいっても、『特盛り』出てきすぐにかけちゃダメですから。最初はあくまでも混じりけのない牛丼のつゆと肉とご飯を楽しみ、やれご飯が半分ぐらいに減ってきたなという頃合いを見計らって、タマゴをかけるのである。
あるいは、まだぜいたくすぎてやったことはないのだが、秘かに憧れている『特盛りお大臣』仕様もある。そう、タマゴの二個使いである。この場合は黄身は二個、白身は一個にしないとつゆとご飯とお肉のバランスにいささかの支障をきたすことが予想される。その『お大臣バージョンの特盛り』を好きなだけ試すことも、これからは自由なのだ。
ともかく、これからは『特盛り』の時代である。吉牛・完全復活である。なんともめでたい春の一日、ぽかぽかとした陽気までが『特盛り』復活を祝っているかのような早春の慶日である。
昨日のI/O
In:
『英辞郎』
Out:
茂山千三郎氏インタビュー原稿