耕運機は誰が買う?
2006年3月末で全国3124件
全国にある市民農園の数、この十年間で三倍近くに増えている。利用者の多くが中高年だという(日経産業新聞3月2日)。おお、こんなところにも団塊マーケットはあったか。
団塊の世代が今年から大量にリタイヤする。その数、ざっと800万人。これだけのボリューム(日本の人口の約6%)が一挙に動くとなると、いろんな変化が引き起こされる。ダメージを受けるマーケットがあれば、絶好のチャンス到来となるマーケットもある。
たとえばスーツマーケットなどは大きな打撃を受けることだろう。あるいは団塊世代が通勤に使っていた鉄道事業者も、エリアによっては定期客が一気に減るかもしれない。都心部、企業が集まっているエリアに多いおじさんたちがたむろしていた喫茶店なんかにも影響はあるに違いない。
一方ではリタイヤした団塊を狙ったサービス、ビジネスが次々と生まれてきてもいる。もっとも注目されているのが、とりあえずは旅行とリフォームといったあたりか。「永年のお勤め御苦労さま、まあ夫婦でのんびり旅行でも」といった切り口は誰でも思いつくし、まだまだ残り長い人生(平均寿命から考えれば少なくともまだ20年ぐらいは生きるのだから)に備えて、住まいをバリアフリーにしておきませんかとかアプローチもある。
あるいは最低20年間ぐらいの生活資金をどうやって維持しますか、大丈夫ですか? 資産運用なら○○証券へ、なんてテレビCMも最近よく見かけるようになった。資産だけじゃなくて終身保険、今からでも、持病をお持ちでも入れます、なんて保険のコマーシャルなどはほとんど全時間帯でひっきりなしに流れているような印象がある。
まともに考えれば、そこが慈善事業でやっているのでない限り、保険会社サイドから見てそんな大きなリスクを取るからには、それだけのリターンを確保する仕組みがどこかに絶対にあるはずだ。しかも広告宣伝費をバンバンかけて、一体、その保険はどれだけ高い利益を保険会社にもたらすんだろう、そこにはどんなカラクリが各されているのだろうと興味のツキないところではあるが、まあ、それはよしとしよう。
本題は、団塊マーケットは実にいろんなところにあるということだ。それにしても耕運機にも団塊マーケットがあるとは思わなかった。ただし従来型のプロ向けの耕運機じゃない。メーカーも考えたもので、団塊用スペシャルバージョンともいうべき耕運機である。たとえば郊外の市民農園まで、いま団塊の方たちが使っている車でも運べるように折りたたみのできるタイプとか、女性でも使えるように軽量化したものだとか。
何しろ相手は、これまで農作業などおそらくはしたことがない方たちなのだ。耕運機のこれまでのヘビーユーザーとは習熟度がまったく違う。ここに新たなマーケットがあったということになる。耕運機のレンタルや、もしかしたら不要時の預かりサービス、あるいは運送代行なんてサービスもあるかもしれぬ。
元気で、好奇心旺盛で、いろんなことをやりたがる人たちが団塊世代に多くいるとしたら、そこにどんなマーケットが生まれるか。彼らは生活に必要なものはいうまでもなく、欲しいもののほとんどもすでに手に入れていると考えていいだろう。だから団塊マーケティングのカギは、彼らに何かを買ってもらうことを考えるのではなく、何をして、どこでどんな時間消費をしてもらうのかにある。もう一つポイントがあるとすれば、コミュニケーションだろう。
加えて、そこで何らかの実益が得られること。ここが絶対のポイントになるんじゃないだろうか。退職金に加えて年金でも優遇されているために、比較的裕福な人が多いとはいえ残存寿命が医学の進歩でどんどん伸びるリスクもある。あと20年ぐらいのスパンで考えれば、ガン治療だって相当に進んでいるはずだし。
と考えれば、やはり団塊世代のキャリア、ノウハウにネットワークなどを活かして、でも一人で起業するようなリスクを取らなくてもよくて、それでいて何かの価値創造ができる(=対価を得られる)ビジネス支援みたいなことが、もっともいいのではないだろうか。
ということは寺子屋フランチャイズみたいなビジネスもあるんじゃないだろうか。今のところはフランチャイズ化するような資本力はまったくないけれど、子どもに読み書きお遊びを教えるノウハウなら、それなりにある。そんなことやってみたいって団塊の方はいらっしゃいませんか?
昨日のI/O
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槇村久子教授インタビューメモ