Googleの強敵


Search WikiaとPowerset


もしかしたら検索システムでGoogleを打ち破るかもしれない二社が、たまたま今日、同じ日に二つのメディアで取り上げられていた。


その一つSearch Wikiaは「CNET Japan」で(→ http://japan.cnet.com/interview/media/story/0,2000055959,20344961,00.htm)。もう一方のPowerset日本経済新聞(3月14日朝刊)で。どちらも、自分たちこそが検索のネクストジェネレーション、必ずGoogleをしのぐと意気軒昂である。


今や世界一の広告会社となったGoogleをこの二社が、結果的に抜く日が来るのかどうかは、それこそ神のみぞ知るといったところだろう。ただ、そんなことはあり得ないと簡単に切り捨てられないだけのオリジナリティを両者ともに備えている。これがすごいと思う。同時にそうした企業はやはり日本からは出てこないか、と少し残念でもある(あえていうなら「はてな」はそれに近いところはあるけれども)。


Search Wikiaの強みはオープンソースとそれに付随する透明性だ。このSearch Wikiaの開発を進めているのは『Wikipedia』の創設者Jimmy Wales氏らしい。ということでSearch WikiaはWikipedia同様に、世界中の人たち(といっても検索エンジンなので誰でも彼でもが参加するというわけにはいかないが)がよってたかって作り上げることになる。Linuxと同じくオープンソースである。


しかも徹底した透明性をモットーとする。すなわちオープンソースたる所以であるところのフリーライセンス制を取るばかりか、検索のアルゴリズムやランキングのロジックさえも公開するという。世界中の人が無償で自発的に自分の知恵を書き込むWikipediaが無償で提供されるのと同様に、Search Wikiaも無償ライセンスによって提供されるべきだというのがJimmy Wales氏の考え方だ。


ただし、こちらは事業化される。すなわちGoogleモデルをならって広告で収益を上げることを考えている。


一方のPowersetは、もしかしたら検索方法に一大革命を起こすかもしれない。ということはGoogleをくつがえすだけのパワーを秘めているということだ。今のところ検索といえば、それはすなわちキーワード検索と同義である。たとえば、ソフトバンクが1998年にどんな会社を買収したかを調べようとするなら「ソフトバンク 買収 1998年」といったキーワードを打ち込んでいくことになる。


ちなみに実際にこの検索ワードでググってみると、84,600件ものヒットがある。トップに表示されているのが「ソフトバンク-Wikipedia」の記事。ざっとみたところ、1998年にソフトバンクがどんな会社を買収したかは、この記事からは読取れない。ソフトバンクによる企業買収の話は、上から5件目の記事にあった。


これに対して同じことをPowersetが開発している検索システムで調べるときにはキーワードを三つ入力するのではなく「ソフトバンクが1998年に買収した会社はどこか?」とテキストを入力することになる。日本語のシステムはまだ開発されていないから今のところは無理だとして、日経新聞の記事では同じようなことを英語でテストした場合、きちっとした答が並んだという。


これぞ、理想の、そして究極の検索システムではないか。


なぜなら、本来、人の頭の中に浮かんでいる問いは、こうした文章の形になっているはずだ。ソフトバンクが1998年に買収した会社はどこだったかな? と考えている人の頭の中に浮かんでいるのは、まさにこの文章そのものなのであって、間違っても「ソフトバンク、1998年、買収」といった単語の羅列が頭の中にあるのではない。


人の質問、疑問とはこうしたテキストの形として意識化される。そこに目を付けたからこそ「はてな」は人力検索サービスを思いつき、それで事業化できると確信したんじゃないだろうか。はてなの例はともかくとしてPowersetが開発している検索システムは、人間の生理にフィットしている分、Googleより優れたモデルとなる可能性を秘めている。


もちろん同社のシステム開発が進んできた段階で、Googleが買い付けに出る可能性も考えられる。あるいは起死回生を狙うマイクロソフトが札束でほっぺたをひっぱたく作戦に出ることも十分あり得るだろう。


とりあえずネット社会では、検索システムを握るものが世界を制することになっている。であるならばGoogle追い落としを目指して動き始めた二社の動きは今後、注目の的だ。


それにしてもPowerset社の検索エンジン、すごい。と思いつつ、これってもしかしたらジャストシステムが開発した『コンセプトベース(→ http://www.justsystem.co.jp/km/index.html)』と似ているというか、同じ考え方じゃないかと、ふと思ったりもした。ついでに英語と日本語では言葉の構造に決定的な違いがある以上、このPowerset社の検索システムの日本語バージョンを実用性のあるレベルにまで持っていくのは相当に大変なんじゃないかとも思った。どうなんでしょうね、実際のところは?



昨日のI/O

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レヴィナスと愛の現象学内田樹
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