一つの産業の終わるとき


3月20日はLPレコードの日


といっても「LPレコードって何ですか?」という人もいるだろう。仮にLPレコードは知っていたとしても、頭についている「LP」が何のことだかまでわかる人はと尋ねれば、知っている人はさらに減るに違いない。


おもしろいから少し突っ込むと、ではLP盤に対峙するのは何盤だ? とか。さらにはEP盤とは、何のことですか? あるいはそもそも蓄音機を発明したのは誰でしょうか、なんてクイズも作ることができる。


はたまたコアなレコードジャケットマニアなら『エイリアン』のデザインで知られるデザイナー、H・R・ギーガーがジャケットの担当をしたプログレッシブロックグループ(死語かも)の名前はとか、そのアルバムタイトルは、なんて問題も作れる。


とりあえず3月20日はLPレコードの日である。そのいわれはといえば、1951年(今から56年前)の今日、日本コロムビアからLPレコードが「長時間レコード」の名前で発売された日、ということらしい。長時間レコード=Long Playというわけです。


といったトリヴィアな知識を紹介したいわけではない。


以前のエントリー『音楽はどこで買う?』(→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20070227)で、音楽配信が増えていることを書いた。ポイントは、国内有料音楽配信がとうとうCDシングルの販売額を上回ったこと、さらには音楽をデータ配信で買う方が、CDアルバムをパッケージメディアで買うより一曲あたりの単価が安くなることもあり、流れは音楽を買うメディアがパッケージからネットへとシフトしつつあること、だった。


これはメディアに着目したエントリーだったのだけれど、もしかしたら音楽との関わり方にラディカルな変化が起こっている可能性がある。なぜ、そんなことを思うかというと、音楽との関わり方とメディアはたぶん相互作用の関係にあると考えるからだ。


物心ついた頃から音楽が好きだったおかげで、これまでのところは音楽メディアの移り変わりにほぼリアルタイムで付き合って来れた。最初はテレビである。これが小学校の4年生のときの、たぶん『モンキーズ(ショー?)』だった。って、38年前のことです。たぶん、その頃に家にステレオが入った。オヤジが買ってきたのが『さらばラバウルよ〜日本軍歌全集』だったり『鶴田浩二ベスト〜傷だらけの人生』だったりした。


やがてお小遣いを貯めて初めて買ったシングルが『Hey JudeThe Beatles』だったと記憶する。長じてお小遣い増額に伴いLPアルバムを買えるようになり、やがて大学の終わり頃にウォークマンとレンタルレコード屋さんが登場する。これは革命的な出来事であった。


音楽を手に入れる手段が劇的に低コスト化し、音楽を聴くTPOがドラスティックに変わった。当時はバイクに乗っていて、深夜のハイウェイを『AvalonRoxy Music』『Smiles/Miles Davis』を聞きながら走ると心象風景が一変して、それがうれしいというか、新鮮というか。


とりあえず音楽の聴き方が、ここで大きく変わった。ただしメディアは旧態依然のものである。レコードがやがてCDに変わっても、基本的な構図は同じだったはずだ。


ところがiPodiTunesがメディアをも替えた。そして、もしかしたら音楽の聴き方、向かい合い方も以前とは変わって来ているような気がする。音楽はデータで買うものとなり、それを聞くメディアもiPodやケータイになった。


特にケータイで特徴的なのが着メロ、着うたである。これって、音楽とはもちろん自分が聞いて楽しむものではあるのだけれど、加えて「自分はこんな音楽を聞いている、好きです」とまわりの人にアピールすることで、自分を理解してもらうツールの一つになったのではないか。


こうした傾向はもうかなり前からあった。カーオーディオを改造して、やたらとでかい音をまわりにまき散らしながら走っている車がそれである。どんな音楽を好んで聞いているかは、確かにその人のパーソナリティを表現(構成)する要素の一つである。だから、自分は「こんな音楽が好きな人なんですよ」といいたい欲求は潜在的にあって、それが携帯の着メロで一気に花開いた、んじゃないだろうか。


人に聞かせる、あるいは聞いてもらいたいから、人とは違う奇抜なメロディを着メロにする。そんな意識は確かにあるように思う。じゃなきゃ、バイブレータだけで充分だもん。というか、恥ずかしいもん。


こうした現象は、音楽との向かい合い方が変わりつつある象徴的な出来事ではないだろうか。そして音楽流通&音楽への向かい方が変わることで、音楽(流通)業界はたぶん、この先の数年で大きく変わると思う。その変わり方はおそらくコンテンツ流通では音楽よりビッグビジネスとなるはずの映画・ドラマ配信のあり方を示唆するはずだ。この流れを読むことが大切だと思う。


まったくの余談ですけれど、昨日、松下電器PDPモジュール開発チームのリーダーに話を伺った。聞いてみるとPDPの進化はものすごく、まだまだ進化中である。さらに間近で初めてみた103インチのPDPモニターはすっげぇ〜かった。これって動画をみるのはもちろん、ここにたとえばアート作品を映しておけばどうなんだと、ふと思った。


たとえば今日は『フェルメールの日』、明日は『スーラの日』みたいに。日替わりで世界の名画を大画面モニターに配信するサービス、なんてのもありかもかと。



昨日のI/O

In:
松下電器PDPモジュール開発チームリーダー・インタビュー
HBR『「弁証法」思考 超ロジカル・シンキング』
※フランスの哲学者の論文がおもしろかったです。
Out:
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昨日の稽古:富雄中学校体育館

・縄跳びを使ったコーディネーショントレーニン
・基本稽古
・型稽古(太極一、足技太極一)
・ミット稽古
・組み手稽古