タミフル、どうなる?


150人で一人


つい最近、先週土曜日から息子の具合が悪くなった。何となくだるそうである。風邪かと思ったが、せきが出たり鼻水がでたりといった症状はない。ないのだが日曜になって少しずつ熱が上がり始め、夕方には39度を超えた。これはもしかするとインフルエンザかと思い、翌朝一番で医者に診せると案の定である。


一応、予防接種はしていたのだがB型インフルエンザと診断された。そこでタミフルを処方するといわれ、説明で出たのが冒頭の数字。「うちでこれまでにタミフルを処方した患者さんは150人いますが、おかしな症状が出たのは、そのうちの一人だけです。これがタミフルのリスクということになるでしょう。一方でインフルエンザで高熱が続くと脳症を起こすリスクもあります。タミフルにはインフルエンザ初期の治療薬として確実な効能があるので、飲まれた方がいいと思います」。


ていねいな説明で問題はないと思う。これまでかかりつけの医者であり、信頼もしている。


そこでタミフルを処方してもらい、月曜の朝と夜、火曜の朝まで飲ませた。一応、子どもからは目を離さないよう気も付けた。幸い予防接種も効いていたのか、火曜の午後からは快方に向かい、昨日にはもう起き上がっていた。その間、おかしな症状が出ることもなかった。


やれやれと思っていると昨日の早朝、厚労省は10代の子どもに対するタミフルの服用を禁止したとのニュース。ウチの子はちょうど10歳である。だから、もう二、三日タイミングがずれていれば、タミフルを出してもらえなかった可能性がある。その場合にどうなっていたかはわからない。


中学・高校時代の友人に医者が何人かいるので、その中の小児科医に「タミフルは効くのか、あるいはインフルエンザの予防接種は有効なのか、リスクはないのか」と尋ねてみたことがある。


答はタミフルについては「確かに効く。治るのが一日早くなる。リスクはよくわからない」だった。予防接種については「効くこともある。ただし予防接種をしたからといってインフルエンザにかからないかというと、そんなことはない。かかったときに症状が軽くなる効能はある」といったものだった。


もちろん個人差がある話である。だから「ケースバイケースだけれども」という注釈付きで「基本的には、ぼくは寝ていれば治ると考えている」というのが彼の見立てであった。


ここで患者サイドとしては、医者でも二通りの考え方があることを知る。子どもが診てもらった医者では、タミフル服用を奨められた。私の友人は「飲んでもいいが、積極的にはすすめることはない」というスタンスであった。知人の子どもさん(小学校5年生)でタミフルを飲んで、様子がおかしくなったケースも聞いていた。その子が息子と同じ病院に通っていたのかどうかは知らない。仮にそうだとしたら、彼が150分の1ということになるのだろう。


今朝の朝刊では、タミフルを飲んで異常が出たケースが書かれていた。異常は全国で転落したケースが15例だそうだが、問題は絶対数なのだろうか。これまでにタミフルが処方されたケースが何件あり、そのうちの何件で異常が起こったのか。ポイントはこの相対値ではないのか。ただ異常行動が出た結果、不幸にも死に至るケースがあったのは事実だろう。そこで死亡例が出たとなるとマスコミが大きく取り上げる。だから、服用を禁止する。


この間の厚労省の意思決定のプロセスがよくわからない。


たまたまタミフルに注目が集まっているからマスコミが報道する。すると本来なら確率(あるいは相対的にといったほうが正確か)で考えるべき問題が、絶対数だけで判断されてしまう。もしかしたら確率的にはタミフルよりももっと危険な薬もあるかもしれない。でも、それはとりあえずマスコミが報道していないので、放っておくという作為がなされていないことを祈る。


タミフルの場合は、厚労省の役人が中外製薬に天下っていた問題もマスコミ沙汰となっていた。仮にその役人がタミフルの評価に何らかの手心を加えていたとしたら論外ではある。しかし、もしかしたらタミフルそのものは科学的に異常を引き起こすリスクが低く、インフルエンザには特効薬である可能性もある。だとすれば今後、タミフルを処方してもらえなかったが故に、重篤な状態に陥るインフルエンザ患者が出ることも考えられるだろう。


その場合には、誰が責任を取るのだろうか。最悪のケースでは、その患者が死亡することもあり得るだろう。そうなったら責任を取るとか取らないとかの話ではなくなる。というケースまでも視野にいれた上での厚労省の判断であることを祈る。




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